「令和初の参院選 日本の政治課題を再点検する」 対共産不信、相互推薦・支援は徹底せず

世界思想 8月号 (平和大使協議会発行) を刊行しました。今号の特集は「令和初の参院選 日本の政治課題を再点検する」です。

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 参院選に向けての野党共闘で、32の一人区すべてで統一候補が実現した。

 

 立憲民主、国民民主、共産党など野党5党派は5月29日、党首会談を行い、その後国会内で野党共闘を支援する「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」から、安保法制などの廃止をはじめとする13項目の政策の要望を受けて、各党首らが署名した。

 

一人区全てで野党統一候補

 

 共産党・志位和夫委員長は、「この2つの合意は、市民と野党の共闘で参院選挙をたたかう上での本当に重要なスタート台になり、画期的な合意になったと喜んでいます」と強調。「2つの合意」とは統一候補擁立に関する合意と「共通政策」についての合意のことである。 

 しかし実際は、野党党首らが「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」の代表らと国会内で会い、「憲法9条『改定』反対」など極めて左派色の強い13項目にわたる政策要望書にサインした、ということにすぎない。サインの意味について国民民主党の幹部は、「要望書を受け取ったことを示すためにサインしただけだ。共通公約ではない」と真っ向から否定している(「産経」5月30日)。

 

 立憲民主党と国民民主党の最大支持団体の「連合」は、一貫して共産党候補の支援には消極的どころか後ろ向きだ。

 

 共産党はこれまで、共闘は「本気」であるべきだと主張し続けていた。本気度の基準は「相互支援・相互推薦」にある。しかし志位氏は5月12日、第6回中央委員会総会後の記者会見で、参院選の野党候補一本化について、「相互に推薦・支援する形が一番良いが、それを一本化の条件にしているわけではない」と述べている。翌日、小池晃書記局長も記者会見で、相互推薦にこだわらないとして「要は勝つことだから。その為に前に進もうという決意の表れ」と語っている。

 

戦術を後退させた共産党

   

 共産党にとって大きな後退である。

 「相互推薦・相互支援」はこの一年半、一貫して主張してきた方針だったのだ。2017年月、共産党は中央委員会総会で月の総選挙を総括した。比例票は減り、議席数も大きく減らした。この結果を踏まえ、次期参院選(今夏)では、共産党が一方的に候補者を降ろすことはしない。片務的な選挙協力はしないと確認したのだ。志位氏は、幹部会報告として以下のように述べている。

 

<参議院選挙では、次の2つの大目標に挑戦します。第一に、市民と野党の共闘を本格的に発展させ、年参院選でも選挙協力を行い、自民・公明とその補完勢力を少数に追い込むことをめざします。

 全国の32の1人区のすべてで、市民と野党の共闘の実現と、その勝利をめざします。共闘を成功させるために、①豊かで魅力ある共通公約をつくる②本格的な相互推薦・相互支援の共闘を実現する③政権問題で前向きの合意をつくる――などの諸点で、野党間、野党と市民連合間でしっかりした協議を行い、本格的な共闘の実現をめざします。

 これまでの2度の国政選挙年――16年参院選、17年総選挙では、わが党は、共闘体制構築のために、一部をのぞいて、候補者を一方的に降ろすという対応を行い、それは適切なものでした。同時に、本来、選挙協力は相互的なものであり、そうしてこそ力を発揮することができるし、持続・発展することができます。次の参院選では、過去2回のような一方的な対応は行いません。あくまでの共闘をめざします>

共産党委員長の志位和夫氏。

 しかし共産党は方針を転換した。

 先の統一地方選挙、衆院補欠選挙(大阪12区)の結果が惨敗となり、自己主張ができなくなったのだ。特に大阪12区である。

 現職の共産党衆議院議員(比例当選)が辞職して無所属で立候補(宮本岳志前衆議院議員)したのだ。得票率8・9%で、有効投票総数の10分の一以下となり、供託金没収となったのである。無所属候補とすることによって他の野党からの支援・推薦を期待したが効果はなかった。獲得票は1万4027票、これまで大阪12区での共産党が獲得した票数と比較して、過去最低だった。
 2017年の票数2万2858(得票率14.4%)、14年の票数1万8257(10.6%)、12年の票数1万7006(8.8%)、09年の票数1万9053(8.5%)、05年の票数2万3593票(10.7%)、いずれも今回を上回っている。

 

共産党候補を推薦しない

5党1会派で成り立っている野党共闘。(立憲民主党、国民民主党、共産党、自由党、社民党、「社会保障を立て直す国民会議」)

 野党共闘は野合なのだ。

 岡田克也民進党代表(当時)は2016年3月29日に出演したBS番組で、参院選の野党統一候補について「共産党候補を推薦したことは一例もない」と語り、民進党候補を共産党などが支援するか、無所属候補を野党共同で押す形に限るとの考えを示した。さらに翌30日深夜のラジオ番組で「共産党は綱領で基本的には天皇制を認めていない。連立政権を作ることはあり得ない。国の在り方に対する考え方が違う」と強調していた。

 志位氏は、「理念・政策が同じなら同じ政党になる。理念・政策が違っても、お互いに相手へのリスペクトの精神をもち、国民が求める緊急の一致点で力を合わせるのが政党間の共闘」だという(「エコノミックニュース2017年9月8日」)。理念・政策といっても安保法制に対する対応という次元ではない。

 共産党と立憲民主党や国民民主党とは「国の在り方」に対する根本理念・政策が違うのだ。

 

 一人区の中で3選挙区、鳥取・島根、徳島・高知、福井で共産党の候補者で一本化した。しかし共産党で立候補するのは福井選挙区のみ。ほかの2選挙区は無所属で立候補する。しかも福井では他の野党は共産党候補を推薦しないという。

 

 共産党不信は払しょくできない

 


 

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