「れいわ現象」の正体と野党勢力に浸透する「チュチェ思想」

世界思想2月号を刊行しました。今号の特集は「ネオ・ソーシャリズムの台頭とその本質」
ここでは特集記事の一部「れいわ現象」の正体と野党勢力に浸透する「チュチェ思想」についてご紹介します。

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 日本の政治を混乱させている左翼勢日本の政治を混乱させている左翼勢力は、「桜を見る会」追及に逸る日本共産党ばかりではない。2019年の参院選では、山本太郎代表率いる「れいわ新選組」が、228万票を集めて2議席を獲得した。

 

 朝日新聞記者の牧内昇平氏は『「れいわ現象」の正体』(ポプラ新書)を著し、同党が支持された社会的背景を、政策ではなく「情念」で読み解き、「現代社会を覆う『生きづらさ』」が「れいわ現象」の背景にあると指摘した。

 ちなみに同党への支持は、動画サイト「YouTube」に投稿された山本代表の演説動画が話題となり、SNSを通じて拡大した。

 

街頭演説する「れいわ新選組」の山本太郎代表

 

 ある動画では年間2万人の自殺者がいる日本の社会に対して、「生きててくれよ!死にたくなるような世の中やめたいんですよ!…生きててよかったって思える社会を政治を通して作ってみよう!」と投げかけている。時折涙で声を詰まらせながら訴える姿は、職業柄(俳優)とはいえインパクト満点だ。山本代表の熱量と言葉に、既存の野党にないものを感じた有権者は魅了された。その演説に非凡なものを感じたからこそ、小沢一郎氏も山本氏を「自由党」共同代表に据えたのだろう。

 

 自殺問題は政策化が難しく、効果も測りづらいため、政治イシューとして扱いにくい。だが、「何とかしたい」という熱量は聞き手に伝わる。「ポピュリスト」たる山本氏は、まさに、そうした「生きづらさ」を抱える人々の情緒に、直接、訴えかけたのだ。 

 

 「れいわ新選組」の選挙公約は、反原発、反TPP、反沖縄米軍基地(辺野古移転反対)といった山本代表の従来からの政治スタンスに加え、消費税廃止、最低賃金1500円、奨学金チャラ、障害者への「合理的配慮」反対などが並んだ。安倍政権には反対だが、デフレ脱却のインフレ目標はアベノミクスと同じである。ただし、大企業敵視のスタンスは共産党と同様で、最低賃金引き上げで中小企業が潰れることには無理解だ。
 

 「特定枠」としてALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の船靖彦氏と重度障害者の木村英子氏を立てた「戦略」も的中。インターネット上で資金を募る「クラウド・ファンディング」で政治参加を促す手法で数億円を集めた。

 また山本氏は「新党ひとり」なる団体を設立したが、「ひとり」で選挙など戦えない。実際に選挙や沖縄・辺野古移設反対運動で共闘したのは、極左過激派グループ「中核派」だった。さらに、選挙参謀を務めているのは「市民選挙の神様」こと斎藤まさし(本名=酒井剛)氏だ。ジャーナリストの安積明子氏によると、前回選挙に続き、19年参院選でも斎藤氏が動いた。

 

「れいわ新選組」街頭集会。演説方法や桃太郎カラーも選挙参謀の戦略。

 

 

 斎藤氏は新宿の街頭演説にも現れ、「桃太郎」のカラーと寄付集めのアイディアを指南。山本氏の比例区転出もアドバイスしたとされる(「選挙ドットコム」)。斎藤氏は80年代に「MPD・平和と民主運動」で国政をめざした後「市民の党」を創設。民主党政権時代には、菅直人元首相からの献金2億円が追及され、よど号ハイジャック犯・田宮高麿の子を選挙に担ぎ出すなど北朝鮮との強いつながりを持つと注目された人物だ。2015年の静岡市長選では公職選挙法違反で検挙され、最高裁で有罪が確定。 

 そんな「選挙のプロ」の指南を受けた山本太郎氏は、参院選中、共産党候補の応援にも足繁く通った。「れ新組」が共産党に秋波を送る態度は、立民・国民両党には苦々しくも羨ましく映っているだろう。山本代表は一見すると「人命を尊ぶ」人権重視派に見える。ところが、原発をめぐる言動には血も涙もない。風評被害で自殺する農家も出るなか、福島・宮城の農産物への疑念を煽り、瓦礫の移動にすら反対した。その本質は非情なポピュリストなのだ。

 

古くて新しい左翼問題

 

 その他の野党勢力では立憲民主党が、参院比例で維新の後塵を拝し、800万票を割り込んだ。国民民主党は存在感が薄れる一方で、その足取りはおぼつかない。改憲論議に舵を切ろうとしたかと思えば、小沢一郎氏の自由党と合併。立民との再合流や共産党との選挙協力など、まさに「朝令暮改」の迷走ぶりだ。

 自由党と合流した国民民主と立憲民主とが合流すれば、小沢氏が幹事長を務めた旧民主党の再現となり、まさに「元の木阿弥」である。

 

 旧民主党の支持母体は、1989年結成の「連合」だった。その連合の中で、特に日教組など旧総評系労組を中心に勢力を伸ばしたのが、北朝鮮の政治思想「チュチェ思想」である。

日本におけるチュチェ思想の浸透ぶりについては、最近、元共産党員のジャーナリスト篠原常一郎氏が講演等で盛んに警鐘を鳴らしている。

月刊Hanadaでの篠原常一郎氏によるスクープ記事「文在寅に朝鮮労働党員疑惑」。

世日クラブでの篠原常一郎さんの講演「チュチェ思想浸透に警鐘」はこちら

 

 共産主義の亜種であり、個人崇拝を正当化する北朝鮮の思想がなぜ日本で広まるのだろうか。

 その起点は「部落解放同盟」だ。

 

 彼らはNGO「反差別国際運動」(IMADR)を組織して、国連を舞台に反差別活動を展開。日本における「アイヌ」「琉球・沖縄」「在日コリアン」への「差別」を告発している。

 その役員には部落解放同盟幹部が名を連ねており、名誉代表理事は、国連大学副学長も務めた武者小路公秀・大阪経法大教授だ。同教授は主体思想国際研究所理事も務めるチュチェ思想の大立者で、「ポストコロニアリズム」を援用しつつ、西欧の植民地支配文化を日本にも認め、その清算を目指すものとしてチュチェ思想の意義を説く。

 石岡亨さん・松木薫さんの拉致実行犯である田宮高麿の妻・森順子らよど号犯の妻たちはいずれもチュチェ思想シンパ。沖縄、アイヌなど先住民論争も、日本への不信感を煽り、国際社会で日本の国益を毀損している。

 

 野党勢力の背後にうごめくチュチェ思想との対決は、日本社会における古くて新しい左翼問題なのである。

 

 

 

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