コロナ禍で広がる「マルクス幻想」~資本主義は悪なのか~

世界思想12月号を刊行しました。今号の特集は「コロナ禍で広がる『マルクス幻想』」です。
ここでは特集記事の一部 【資本主義は悪なのか】 についてご紹介します。

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 マスメディアの見立てでは、「経済格差の克服」の観点からもマルクス主義経済に再び注目が集まっている、という(NHK『100分de名著』など)。その「旗振り役」である斎藤幸平・大阪市立大准教授は、「成長」を目指す経済活動を「諸悪の根源」と決めつけ、その解決策をマルクスの『資本論』再解釈に求めているのだ。

「成長」と「分配」

 

 岸田首相率いる自民党の政策パンフレットは「新しい資本主義」を掲げ、「分厚い中間層を再構築する」としている。キーワードは「成長」と「分配」。大胆な危機管理・成長投資を行い、分配で所得を増やし、消費マインドを改善させて経済成長を軌道に乗せる、という考え方だ。

 

 特に野党は「成長よりまずは分配せよ」と叫ぶ。しかし、金持ちから税金を取り、低所得者に分配するというのは、「脱成長経済」つまり、「みんなで一緒に貧しくなろう」という発想につながる。

 それがなぜ誤りなのか。「成長」という発想こそが、新たな価値を生み出し、豊かな経済をもたらすからだ。

 マルクスの誤りは、労働を「量」としか捉えず、「質」を問わなくなった結果、競争に耐えられなくなったことだ。

「分配」によって格差を解消する前提こそが「成長」なのである。

 

資本主義と倫理

 資本主義の「成長」の部分に着目したのがドイツの社会学者マックス・ウェーバーだ。彼は宗教的倫理観と結び付いて近代資本主義が発展したと指摘した。敬虔な人々が持つ「神から与えられた『天職』」というストイックな態度が近代の西欧社会の原動力となったという説であり、マルクスの唯物史観の反証としてよく知られている。

 つまり、ハゲタカファンドなどのイメージが強い「強欲資本主義」が資本主義の本質ではないのだ。

 気鋭の哲学者、マルクス・ガブリエル独ボン大学教授は「倫理資本主義」を提唱する。「倫理」のベクトルを資本主義システムに取り入れることで、経済活動の在り方が変わるという。これは日本資本主義の父、渋沢栄一の「論語と算盤」にも通じる考え方だ。

 古典派経済学の祖、アダム・スミスは、自由な市場取引を「神の見えざる手」と呼んだが、これも、よく誤解されるような自由放任主義ではない。単なる金儲け主義を嫌悪し、モラル(良心)が働く社会システムを構想しつつ、トータルな意味で「神の見えざる手」と表現したのである。

 『海賊と呼ばれた男』(百田尚樹・著)のモデル出光佐三(出光興産創業者)は「社員は家族」として労組を認めず、とことん社員の面倒を見た型破りの経営者だ。彼はマルクス経済学を研究し「もし、マルクスが日本に生まれていたら、マルクス主義は全く違うものになったはずだ」と述べた。日本経済の発展の基には、日本社会が育んだ家族文化の強みがあった

 

 経済活動の土台には、それぞれの社会の文化、伝統がある。それらを根こそぎ破壊するマルクス主義が機能しないのは当然である。

 

 スミス、ウェーバーの時代から、渋沢、出光を含め、資本主義は倫理・道徳と手を携えて発展してきた

 

 「資本主義=悪」ではないのだ

 

 

(「世界思想」12月号より )

◆2021年12月号の世界思想 特集【コロナ禍で広がる「マルクス幻想」】
Part1 国家は悪なのか
Part2 資本主義は悪なのか
Part3 家族は悪なのか
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