激変する「沖縄」安保環境で問われる日本の覚悟

 

「世界思想」4月号の特集「激変する『沖縄』安保環境で問われる日本の覚悟」からPart2「日米合同訓練で『敵国』を中国と明示 豪を加え台湾有事の際の役割分担も検討か」をお届けします。

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地元紙も中国の脅威を掲載

 左翼的と批判される「沖縄タイムス」においてすら、中国の軍事的脅威は伝えられる。2月に実施された日米合同の最高レベル演習(キーンエッジ)において、従来、仮想とされていた敵国が、「中国と明示」されたと5日付け同紙が伝えた。

 また中国名が明示されただけでなく、地図も実物を使用、オーストラリア軍の初参加も行われたことから、日米豪が台湾有事にどのような役割分担を行うのかの具体的な検討が始まっているものと思われる。

 同記事の解説では、ご丁寧に、台湾有事が6年以内にあるとの米インド太平洋軍前司令官の発言(2021年3月)、「米中は25年に戦うことになる」(米軍幹部)、「習近平国家主席は27年までに台湾進攻を指示した」(米中央情報局CIA長官)、それに今回の中国名の明示を並べ、自衛隊と米軍制服組幹部らの軍事的合理性に押されて、中国との緊張をさらに高めるべきではない旨の解釈も述べられている。

 緊張を高めているのは米中、一体どっちなのか。また、ブリンケン米国務長官ら行政官も台湾有事を指摘している(22年10月)ことには目を向けないのかと言いたくなるような〝解説〟である。

日米の介入抑止に備える中国の戦い方

 昨今、2027年までに習近平国家主席は台湾侵攻を実行出来ないのではないかとの指摘もある。不動産不況による中国経済の停滞が深刻だからだという理由だ。もし、台湾侵攻を実行出来ないとすれば、願ったり叶ったりである。それが最も望ましい。そうなって欲しい。

 しかしロシアのプーチン大統領に見られる通り、全体主義的な国家の指導者は、我々と同じような合理的判断を行わない。窮状の打開策として習近平主席が台湾侵攻に打って出た時を想定するべきである。台湾侵攻が失敗しなくとも、成功しなければ、習氏の統治の根拠は揺らぐ。

 中国にとって成功のカギは日米豪の介入を最小限、あるいは阻止しつつ台湾侵攻を行うことである。そのためには、短期戦に持ち込むこととなる。その手を中国は着々と打っている。読売新聞オンラインによると中国は、台湾周辺の四方に軍艦4隻を常時展開させているという(1月29日付)。沖縄県の与那国島周辺に1隻、与那国島とフィリピンの間に1隻、台湾の南西と北の海域にそれぞれ1隻ずつである。

 このほか、尖閣諸島周辺には常時3隻の軍艦が展開しており、その戦艦は海上自衛艦と2020年頃から常時、対峙する形になっているともいう驚くべき情報もある(同1月28日付)。これまでは海上保安庁VS中国海警局艦艇との構図だとばかり思っていたが、すでに軍艦VS軍艦の対峙も始まっていたことになる。事態は悪い方向に進んでいると理解するべきであろう。

日本の防衛力南西シフトの状況

 こうした事態に対し、岸田政権も中国をけん制するため、安全保障関連3文書(国家防衛戦略、防衛力整備計画2022年12月策定)を決定した。その目玉は、敵国に対する反撃能力の保有である。現在日本が保有するミサイルの射程を伸ばし中国に反撃できるようにする、新たな長射程のミサイル(1500キロ以上)を開発、島嶼防衛用高速滑空弾等(推定射程500キロ型と3000キロ型等)の開発、アメリカからトマホーク巡航ミサイル(射程1600キロ)を輸入し配備する等である。

 これらはすでに、昨年駐屯地を新設した石垣島に敵の艦艇を攻撃する「12式地対艦誘導弾」(射程200キロ)などのミサイル部隊を配備。沖縄本島の勝連分屯地(沖縄県うるま市)にも配備。また奄美大島、宮古島にもミサイル部隊を置いた。今年には沿岸監視部隊が所在する与那国島への配備も行われるという。トマホークに関しては当初の導入計画を前倒し、最大400発を来年度から一括購入し展開することで米国と契約を交わしたという(1月18日)。

 防衛力の強化は計画を早めつつ展開されていることは歓迎されるべきであろう。長射程のミサイル配備は中国を刺激するとの指摘があるが、中国が先に配備したので日本は防衛上やむなく配備するに過ぎず、先の指摘はまっとうな批判ではない。問題は、配備が進む沖縄において、ミサイルの運営に支障が出るのではないかと懸念される事態が水面下で進んでいることである。

◆2024年月号の世界思想 特集・激変する「沖縄」安保環境で問われる日本の覚悟
Part 1 台湾統一の意思と体制固めた習政権
Part 2 日米合同訓練で「敵国」を中国と明示 豪を加え台湾有事の際の役割分担も検討か
Part 3 オール沖縄の新たな争点作り 自衛隊増強反対運動

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