宗教性の復興と世界平和〜UPFが目指す超宗教平和運動〜

 

「世界思想」5月号の特集「宗教性の復興と世界平和〜UPFが目指す超宗教平和運動〜」から総論部分をお届けします。

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 UPF・平和大使協議会は、「OneFamily Under God(神の下の一家族世界)」のビジョンを掲げ、他者への奉仕と協力、国家・宗教・人種・民族間の和解と調和を促進する活動を通じ、平和文化の創造に貢献することを目的としている。

 基本理念では、精神的・道徳的存在である人間の尊厳を守り、健全な愛に満ちた家庭の営みを尊重することを謳う。世界平和実現のためには宗教間の対話と和解の促進が特に重要であると見ている。

 これは、特定の宗教に偏ることなく、宗派の壁を越えて、各伝統で培ってきた叡智を出し合い、現代の問題の解決と平和な世界創造のために協力していく運動であるゆえに「超宗教平和運動」と呼べるだろう。
 一方、国内では宗教に対する偏見や軽視する傾向が広がり世俗化傾向が強まっているのは否めない。そこでまず宗教の意味や目的を再確認してみたい。

宗教とはなにかその意味と目的

 「あなた、何か宗教やっているの」「いまあの宗教に凝っているのよ」。このような日常会話に何か違和感を覚える。そこでの「宗教」は非日常的な行動であり、ある特殊な団体との関わりを指しているようだ。

 米国宗教学会会長であったニニアン・スマート博士は、宗教はあたかも組紐のようなもので、七つの次元の特徴が絡み合っているとみなければならないと言う。それは、①行事と儀礼の次元②経験的・感情的な次元③物語的ないし神話的な次元④教義的・哲学的な次元⑤倫理的・法的な次元⑥社会的・制度的な次元⑦有形的な次元――である。宗教は、単に個人的な営みに留まらず、共同体の営みとしても捉えるものだということを示唆している。

 イスラエルの知恵のことばに、「幻(ビジョン)がなければ民は堕落する。教えを守る者は幸いである」(箴言29:18)とある。人は何のために生きるのかを示す確固たる人生観がなければ、人は不幸になる、為政者が明確な国家観を持たなければ国民が不幸になる、ビジョンとはそういうものだと教えている。ビジョンは人類を幸福に導く宗教とほぼ同義と言えないだろうか。

 「宗教は、人生に究極的な意味づけをする、秩序だった意味の体系(コスモス)であり、人間がいかに生きるべきかを示す解釈的ビジョンである」(田丸徳善・星川啓慈・山科有希子共著 『神々の和解』春秋社2000年)

 宗教はビジョンだとして、世界の宗教人口分布図を眺めてみると、同じビジョンを共有するグローバルな信仰共同体が拡がっていることが分かる。キリスト教、イスラム教、ヒンズー教、仏教といった世界四大宗教の広がりであり、宗教を土台とした文明の版図である。

 UPF創設者の韓鶴子総裁は、宗教について自叙伝の中でこう語っている。
 「宗教の『宗』の字は、『おおもと』、『中心』を意味します。すなわち宗教の教えとは、あらゆる教育と真理の中で、一番の教えだということです」

 「孔子、釈迦、イエス、ムハンマドをはじめとする多くの開祖たちの教えは、時代を超えて人間の良心を守り、文明を導く原動力となります。したがってすべての宗教は、罪悪世界を清算して神様と人間が願う理想世界をつくる、人生のパートナーなのです」(韓鶴子著 『自叙伝人類の涙をぬぐう平和の母』)

 宗教の意味を整理してみると、東洋的には「根本的な教え」を指している。西洋的にはreligion(英語)、すなわち「再び結ぶ」という意味から、神と人間の愛の絆を回復する営みだと言える。総合すると、人間存在にとっての根本的な問題に対する本質的な教えであり、その説くところの理想の境地にまで歩み行く人生の営みであるといえる。

 

宗教の役割とは

 世界には多様な宗教があり、各々独自の歴史と伝統を持っているが、信頼と尊敬に基づく対話がなされるとき、宗教間に共感が起こり、共通目的に向かう同志だとの認識に至る。

 世界平和宗教連合の創設大会時に完成をみた『世界経典〜諸聖典の選集』では、宗教の目的について次のようにまとめている。

 宗教は善なる品性と徳性を育てることが主要な目的だとする東洋的な宗教がある。一方、人間の不幸の根本原因は人類始祖の堕落によるもので、それにより創造主と人間との愛の絆が切れてしまい罪の状態に陥ったため、この関係性を回復することを目的とする西洋的な摂理宗教がある。

 いずれにしても、宗教は、不幸な状態にある人々を救援し、善なる人間として成長する道筋を示してくれるものである。単に心に平安をもたらすことだけでなく、愛と調和のある共同体を育むものである。なぜなら、心満たされ、善き人格を備えた人々は、他者にも幸福に分けたいと働きかけるものだからだ。「私」から始まる平和は、家族共同体の平和と幸福から次第に発展し拡大していく。そして究極的には世界平和の実現に向かうと言える。

 UPFを創設し世界平和実現のために生涯を捧げてきた文鮮明総裁は、神様の目的は世界平和であり、宗教の目的は1つの理想世界を実現することだと明言している。

 「歴史を振り返るとき、儒教、仏教、キリスト教、イスラム教などは、各々一定の時代と一定の地域において社会的不安と混乱を一掃し、平和と安全の基礎の上に輝かしい文化を花咲かせてきました」(世界基督教統一神霊協会世界宣教本部編 『文鮮明先生の平和思想』光言社 2002年 291頁)
 「すべての宗教の究極的目的は、幸福なる理想的な世の中を成し遂げることです」
文総裁は、世界宗教の各地域における平和に対する貢献を高く評価したうえで、さらに大きな範疇の平和を指向している。その意味で、「One Family Under God」を標榜するUPFを創設されたともいえる。

世界平和宗教連合の創設大会でメッセージを語る文鮮明総裁(1991年8月27日=韓国・ソウル)

宗教対話から宗教連合運動、そして超宗教運動へ

 「One Family Under God」のミッションを達成するために、宗教の対話と和合、協力が不可欠として、宗教間対話と宗教連合運動を推進してきたUFP・平和大使運動は、超宗教平和運動であるといえる。

 国連NGOであるUPFが、このようなミッションを掲げ、実践活動を展開する背景には、創設者の人と思想との深い関わりがある。

 創設者の文鮮明総裁の自叙伝にはこのような体験が記されている。

 「数年にわたる祈禱と真理探究の総決算とも言うべく、それまでどうしても解けなかった疑問について答えを得たのです。それは一瞬の出来事でした。あたかも火の塊が私の体を通り抜けたかのようでした。『神様と私たちは父と子の関係である。それゆえ、神様は人類の苦痛をご覧になって、あのように悲しんでいらっしゃるのだ』という悟りを得た瞬間、宇宙のあらゆる秘密が解かれました」(文鮮明著『平和を愛する世界人として』88頁)

 満15歳の時に、イエスとの神秘的な出会いがあり、それ以来人類救済の道を探求してきた文総裁がこの時に体験したのが「神と人とは親子」という実感であり、父子の因縁が宇宙の根本だ、という悟りだった。この原体験を機に、愛の絆が切れてさまよう人類を見詰める親である神の悲しみを解決し、「神の国と神の義」を追求していく人生を歩むことになった文総裁であった。

 文総裁は、ここからまず、キリスト教一致運動に尽力し、そのうえで宗教間対話を推進し、宗派に固執せず共通の真理と目的を軸に、超宗教平和運動へと発展させてきた経緯がある。

◆2024年5月号の世界思想 特集・宗教性の復興と世界平和〜UPFが目指す超宗教平和運動〜
Part 1 平和国連のモデル形成のために
Part 2 国連システムに宗教者の声代弁する機構を
Part 3 人々の抱える問題解決のために手を取り合う宗教者 IAPDの創設と日本の活動

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