日本の国家的な宗教迫害の現状を国際社会に訴え

 

「世界思想」8月号特集【UPF主催 国連人権理事会 サイドイベント】
日本の人権状況:宗教共同体の根絶と解散―日本の統一教会の事例からマッシモ・イントロヴィニエ氏の論文をお届けします。

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UPF 主催 国連人権理事会 サイドイベント
日本の人権状況:宗教共同体の根絶と解散―日本の統一教会の事例

 UPF は6 月16 日、スイス· ジュネーブで開催された国連人権理事会第59 回会期に合わせ、サイドイベントを行った。「日本の人権状況:60 万人の信徒を持つ宗教共同体の根絶と解散―日本の統一教会の事例」をテーマに、日本の当事者や欧州の専門家が現状やその背景について話し合った。
 発表者らは、日本政府による解散命令によって旧統一教会(世界平和統一家庭連合、家庭連合)という1 つの信仰共同体が「根絶」されようとしている問題の背景について分析するとともに、これが「日本における少数派の信教・良心の自由、平和的な集会および結社の自由、表現の自由、教育の自由に関して深刻な懸念を伴うものである」との懸念を共有した。

◯マッシモ・イントロヴィニェ氏(社会宗教学者、イタリア「新宗教研究センター」理事長)
「日本の宗教事情と、家庭連合(旧統一教会)への解散決定がもたらす影響について」
◯小出裕久氏(医師)
「強制的な改宗、拉致・監禁、および棄教の強要についての証言」
◯近藤徳茂 氏(世界平和統一家庭連合 法務副局長)
「日本における強制改宗の規模と、解散命令に至った司法判断の欠陥について」
◯パトリシア・デュバル氏(仏弁護士・国際人権法)
「望ましくない宗教団体を解散させるための『公共の福祉』や『社会通念』といった概念の利用、
および親の信仰に反して学校で行われる子供への『再教育』問題について」
(司会:ハイナー・W・ハンシン氏UPF 国連事務所長)

なぜ、いつ、誰によって、どのように宗教の抹殺は仕組まれ、遂行されたのか

新宗教研究センター(CESNUR)理事⻑・イタリア宗教社会学者  マッシモ・イントロヴィニエ氏

日本で起こった「宗教ジェノサイド」

 2025年3月25日、東京地方裁判所は世界平和統一家庭連合(家庭連合=旧統一教会)の解散を命じた。この決定には抗告がなされているが、教会に対する敵意に満ちた風潮は圧倒的である。「解散されても税制上の優遇措置が失われるだけだ」という嘘が広められているが、それは誤りだ。教会が解散されれば、すべての資産(銀行口座や礼拝施設を含む)は清算人に引き渡されることになる。学者たちはこの事態を表すために新たな言葉を作り出した─「宗教ジェノサイド(religiocide)」、すなわち宗教の抹殺である。

 2025年6月16日、ジュネーブの国連人権理事会のサイドイベントにおいて、この犯罪行為が分析された。筆者は登壇者の一人として、なぜ、いつ、誰が、どのように、この犯罪行為が実行されたのかという問いに答えようと試みた。

宗教組織への強い反感

 なぜ: この事態を招いた前提条件として、高度に世俗化した日本社会に根付く、宗教組織への強い反感がある。また、日本には自国の問題の原因を外国の宗教に転嫁する「スケープゴート(scapegoat)」の伝統がある。過去の世紀にはキリスト教がその対象だった。軍国主義時代の日本では、平和主義を掲げるエホバの証人が非難され、彼らは今もその標的から外れてはいない。そして現在の標的が統一教会である。教会本部が韓国にあることもあり、嫌韓感情(反韓的な人種差別)も問題の一因となっている。

 いつ: 反対派は1980年代から統一教会の解散を求めてきた。彼らの試みが成功したことはなかったが、2022年に起きた安倍晋三元首相暗殺事件が、彼らにとっての「絶好のチャンス」となったのである。犯人自身は統一教会の信者ではないが、母親が信者であった。彼は安倍氏が「教団と近しい関係にあると思った」ため、殺害したと供述しており、その背景として02年に母親が過度の献金で破産したことを挙げている。なぜ20年もの年月を経て犯行に及んだのかについての説明はなかった。また、統一教会の信者たちが彼の家族に多額の献金を返還していた事実にも触れられていない。

反統一教会・反カルト背景に共産主義の存在

 誰が: 1987年に始まった反カルト運動には、統一教会や他の保守的宗教の解散を狙う政治的な動機が明確に存在していたことが、証拠から明らかになっている。その多くは社会主義者や共産主義者であり、統一教会が反共主義や親米的立場を取る宗教であることから、これを排除しようとした。また彼らは、保守的で「進歩的」な思想に反すると見なされるすべての信仰を、破壊しようとした。

 どのように: 今回の解散命令の根拠とされているのは、統一教会が「霊感商法」によって人々に被害を与えたという一点である。「霊感商法」という言葉は、反カルト団体が作り出した造語であり、開運をもたらす小型の仏塔や印鑑などを高額で販売した行為という意味でつけられた。その後、この表現は献金にも適用されるようになった。こうした販売行為は過去に確かに存在したが、それらは教会の公式活動ではなく、信者個人のビジネスとして行われていたものである。統一教会は2009年、こうした販売行為を禁止し、信者に関与しないよう厳しく指導しており、安倍氏暗殺の頃には報告件数もほぼゼロにまで減少していた。

裁判所が「推測」に基づいた判断

 実際に、これは統一教会や研究者の主張ではなく、裁判所の解散命令の文中にも多く明記されている。しかし裁判所は、近年はごく少数の報告しかないと認めつつ、報告されていない事例があるかもしれない、将来再発するおそれがあるといった「憶測」に基づいて判断しているのが実情である。宗教団体全体を解体するという重大な決定が、こうした憶測に基づいてなされてはいけない。日本で今起きていることは、今世紀の民主主義国家において最も深刻な宗教自由の危機である。

◆2025年8月号の世界思想 特集・UPF主催 国連人権理事会 サイドイベント
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