憲法 24 条が 14 条「違反」?科学的知見排除の独断判決だ【札幌地裁 同性婚判決】

 

民法などの規定が同性婚を認めていないのは憲法違反だとして同性3カップルが札幌地裁に提訴していた。国に対する損害賠償を求めた判決が3月17日、言い渡された。判決は、現行規定が「法の下の平等」を定めた憲法14条に違反するとの初判断を示したが、国への賠償請求は棄却。原告側は「形式」敗訴、「実質」勝訴となった。同様の訴訟は東京、名古屋、大阪、福岡でも進行中だ。きわめて戦略的な文化革命「運動」といわなければならない。

 

 原告は、憲法24条では婚姻は「両性」の間で成立すると規定されているが同性婚を否定していないと主張。さらに幸福追求権を定める13条、「法の下の平等」を定める14条にも違反するとして、国に対して1人当たり100万円(計600万円)の損害賠償を請求していたのである。

 

 札幌地裁の判決は、このうち「法の下の平等」を定めた14条に違反すると判断を下したが、一方で13条、24条については違憲にあたらないとして、原告の請求を棄却した。これでは、憲法24条は14条違反であるといっているに等しい。論理矛盾をきたしている。

 

24条に基づく14条だ

 

 判決の問題としてまず、24条と14条との矛盾を挙げなければならない。

 札幌地裁は、憲法24条違反でない理由として「24条が『両性』など男女を想起させる文言を用いていることに照らせば、異性婚について定めたもの」といわなければならないからであるという。さらに、民法などの規定が同性婚について認めなかったのは昭和22年の民法改正時は、同性愛が精神疾患などとされた社会通念に合致しており、正常な婚姻を築けないと考えられたために過ぎないからだとした。

 

 日本国憲法の「下地」はマッカーサー草案である。そこには、結婚を「両性の平等の上に存する」としている。「両性の平等」を同性間の平等と解釈することはできないし、当時米国を含め、世界中で同性婚は合法ではなかった

 

 連合国軍総司令部(GHQ)支配下の日本で同性婚を容認する憲法が制定されたとは考えられない

 であれば当然、憲法14条に「婚姻の自由の平等性」(同性婚も容認する意味)も含まれると解釈するには無理がある。

 

 日本国憲法で婚姻に関する文言は24条のみである。よって婚姻に関する法的解釈は24条が基本になるはずであって、14条を別扱いすることはできないはずなのである。24条が14条違反であるはずがない。

 

作為的な婚姻本質外し

 

 14条違反という判決の問題として2番目に指摘しなければならないことは、「婚姻」の本質をはき違いしていることである。

 国会は憲法24条に基づき、同性婚を認めない民法を定めてきた。民法では、婚姻とは「伝統的に生殖と子の養育を目的とするものであった」(「新版注釈 民法」)というのが通説である。子供がいないなど、様々な夫婦の形はありうるが、本質は「子を生み育てる」制度だという理解が定説になっているのだ。

 

 しかし判決は、婚姻の目的について「永続的な精神的及び肉体的結合を目的として」「共同生活を営むこと」などと述べ、自然に子供ができない同性婚を「容認」している。作為的といわねばならない。同性婚を容認しないことは14条違反ではない。

 

 3番目に、「同性愛」という性的指向についての理解が表層的過ぎることである。以下、楊尚眞(ヤンサンジン)弘前学院大教授(「産経」3月28日付)の指摘をもとに説明する。

 

 判決には「同性愛は精神疾患ではなく、自らの意思に基づいて選択・変更できないことは、現在は確立された知見である」と言明しているが、現実と乖離(かいり)している。

 

 同性愛の感情は同性愛者だけではなく、両性愛者、性同一性障害を持つ人も抱くことがある。楊教授は、ジークムント・フロイト以降、同性愛を精神疾患としてとらえる医学者が現在も多数存在しており、「性自認」に対し精神的な葛藤を持ち、治療を受けている人々は多いと述べている。

 

 さらに「同性愛」は先天的なものではないと裏付ける研究成果も米国において多くあるという。

 最近の大規模研究では、米国と英国の研究者が同性愛の経験がある47万人の遺伝形質を調査した結果、同性愛に関連する特定の遺伝子を見つけることができなかったという報告も、国際学術誌『サイエンス』(2019年8月30日)に掲載されたという。

 

 また、米マサチューセッツ総合病院とハーバード大学、英ケンブリッジ大などの国際共同研究チームが、米英で同性間の性的関係をもったことがあると答えた男女47万7552人の遺伝形質を調べた結果、特定の遺伝子が同性愛行動に影響する割合は1%未満だったというのだ。

 

 「同性愛」の原因はまだ解明されていないにもかかわらず、「同性愛」者は自分の意思で性的指向を選択や変更できないという認識を持たないものは時代遅れ、人権侵害の発想であるというイメージを与えている。これは、共産主義者一流の「前衛」意識と全体主義に傾斜する危険性を内包しているといわねばならない。

 

 楊氏はまた、「性的指向」や「性自認」は変わることがあるという。生まれて大人になるまで異性愛者だったが、同性愛の経験によって同性愛者や両性愛者になった人たちがおり、回復治療や宗教的な体験によって同性愛から離れた元同性愛者もいるのだ。判決は科学的ではない。

 「性的指向」や「性自認」を理由に同性婚合法化を進めることによる社会的混乱も指摘しなければならない。米国の連邦最高裁が同性婚容認の判断を下すきっかけとなった「オバーゲフェル判決」(2015年6月)は、連邦最高裁判事9 人のうち、賛成派が5人、反対派が4人の多数決で確定したものだった。

 

 反対派が示した理由に以下のような、説得力をもつ内容があったことを忘れてはならない。「結婚を生殖から切り離してしまうともはや歯止めが利かない」ようになり、「(一夫多妻など)多重婚を認めなければならなくなる」。

 

 そして、「政府からの自由」は広く認められるべきだが、「政府による自由」を認めるのは慎重であるべきだ。同性婚は「政府による自由」に分類される、などと述べたのだ。

 

論議・判断に「子供の視点」を欠かしてはならない

 

 最後に、判決は「子供の視点」を欠いているということである。

 結婚は夫婦の幸福のためだけではない。子供や社会の利益のためにもするものであるという観点が欠けている。

 

 成長した子供が、両親が同性であることから、誰が血のつながった親なのかを理解したいときに、どう思うかということも考えておかなければならない。子供が自分のルーツを知ることはアイデンティティの形成に重要で、「出自を知る権利」(「児童の権利に関する条約」)にもかかわる。

 

 結婚は社会全体の問題として考えるべきである。

 国連が進めるSDGs(持続可能な開発目標)がジェンダー平等のみ強調するのはおかしい

 

 「角を矯ためめて牛を殺す」「木を見て森を見ず」の愚に陥ってはならないのだ。

 

 

 思想新聞【総合】憲法 24 条が 14 条「違反」?科学的知見排除の独断判決だ【札幌地裁「同性婚」判決】(掲載のニュースは本紙にて)

4月15日号 憲法 24 条が 14 条「違反」? 科学的知見排除の独断判決だ【札幌地裁「同性婚」判決】/ 日本は役割を果たせ 勉
強会でミャンマー情勢解説(東京都連合) /【主張】原発再稼働へ平和ボケから脱却せよ

機関紙「思想新聞」へのお問い合わせ・購読はこちらへ

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で

「いいね」と思ったらシェア!