中・露連携/世界秩序変更の危険性高まる

 中国とロシアの連携が強まり、ロシアのウクライナ侵攻と中国の台湾侵攻が連動する危険性が高まっている。昨年12月、バイデン米政権は「民主主義サミット」を開催して中国が強く反発し、中露両国の駐米大使が連名で米「ナショナル・インタレスト」誌寄稿で「冷戦時代の思考の産物」と牽制。だが、軍事的威圧が強まる台湾海峡と大規模な軍部隊を展開するウクライナ国境で軍事侵攻を許せば世界秩序が変質する危機に対し、「防御」を迫られる米国は、自らそれを招来した面が強い

バイデン政権の「弱さ」と独断的手法

 この危機は、バイデン政権の「弱さ」が引き起こしたとも言える。昨年のアフガニスタンからの米軍撤収は、イスラム原理主義組織タリバンの復権を許し、米国の軍事的プレゼンスへの同盟国の不安と中露・覇権的現状変更勢力に「勇気」を与えたのだ。

 バイデン氏は昨年9月の国連一般討論演説で民主党綱領に沿って「20年間の戦争の時代の幕引きと『外交の時代』の開幕」だと強調。対中強硬政策から融和的姿勢への回帰を示唆し、米中対峙の「新冷戦」は望まないと主張したのだ。

 バイデン氏は「外交経験の豊富さ」を背景に側近や同盟国に耳を傾けずに、独断的政策決定を行っている懸念がある。ブリンケン国務長官やオースチン国防長官の反対意見を退け、アフガニスタンから米軍撤収を敢行。アフガンで共に活動していた北大西洋条約機構(NATO)の同盟国との根回し不足が露呈し、撤収後の混乱を招いた。

 「米国は今、三方面戦争への対応に迫られている」としてギデオン・ラックマン氏(「フォーリン・アフェアーズ」解説員)は「米国は何十年も世界の異なる場所で同時に2つの大きな戦争を戦える戦力を常に備えるという2正面戦略を軍事計画の前提にしていたが、3つの戦争を同時に戦うことを前提にした戦略は考えてこなかった。ところがバイデン政権は今、欧州、アジア、中東での軍事的危機に直面しており、それは冷戦の終結以来の最大の試練を意味する」と指摘する(「日経」昨年12月17日付)。

 またカール・ビルト元スウェーデン首相は、台湾とウクライナへの侵攻が同時に起きる可能性を指摘し「この2つの侵略行為が同時に起きれば、世界の勢力バランスは根本から変わるだろう」とし、それはまた「数十年にわたり平和を維持してきた世界秩序の崩壊を意味する」と警鐘を鳴らす(同紙同日付)。

ウクライナとの国境付近に展開するロシア軍

米国で広がる「文化戦争」

 さらに、米国は「内戦としての文化戦争」が広がっている。昨年11月22日、米ニューヨークの市庁舎から、独立宣言を起草し「建国の父」の一人第3代大統領ジェファーソンの像が撤去された。撤去理由は「奴隷所有者」だったジェファーソンに対し苦情が出たためで、撤去された像はニューヨーク歴史協会に移された。「建国の英雄」像の撤去は、保守とリベラルの対立である「文化戦争」の新たな前線となり、保守は怒り心頭に発し、いわゆるBLM運動家らは、「人種差別という負の遺産の解消」への前進だと評価。

 英国の歴史家アンドルー・ロバーツ氏は英紙「デイリー・テレグラフ」寄稿で、「建国の父が悪というなら、建国自体が悪であり、嘘を土台に建国されたことになる」とし、「建国の父への批判は、危険なほど自己破滅的な退廃の兆候」と警告している(昨年12月26日付「日経」)。

 今秋の米中間選挙での争点は税制や歳出、新型コロナウイルス対策のほかに、「文化戦争」も大きな注目点だ。

米国各地でジェファーソン像を撤去する騒ぎに(ツィッター画像から)

求められる日本の覚悟

 かくして米国内外の混乱と「弱体化」は進む。「米中新冷戦」の「最前線」たる日本は、変わらなければならない。アジアと世界の平和を作り出す「積極的平和主義」の姿勢と態勢づくりを進め、日米同盟基軸を柱としながらも自主防衛、日米と台湾の防衛協力態勢の構築が急務である。その意味でも、今夏の参院選では憲法改正国民投票が同時に施行されることを切望する。

月15日号  東海北信越でFWP推進議員有識者研修会/ 名古屋で勝共理論セミナー /【連載】朝鮮半島コンフィデンシャル/【主張】未曾有の危機「台湾有事」備えよ

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