埼玉県で「LGBT理解増進条例」の動き

 今年4月、埼玉県議会では「性の多様性への理解を広め、性的少数者を支援する条例」(LGBT理解増進条例)案を定例会に提出し、来年4月までの施行を目指すという(読売新聞)。条例案をまとめて提出したのは自民党埼玉県連で、ついては条例制定に向けたパブリックコメントを5月初めまで募集していた。

「LGBT条例」についてパブリックコメントを募集した自民党埼玉県連のサイト

異を唱えれば「差別主義者」

 これについて産経新聞政治部編集委員の阿比留瑠比氏が自身の連載「阿比留瑠比の極言御免」でこの問題に言及(4月14日)。自民党の国会議員から聞いたとして、この「条例骨子案」では、性の多様性の理解増進のため「何人も、性的指向または性自認を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならない」と禁止条項が明記されている点を指摘。そして昨年の同じ頃には「LGBT理解増進法」案をめぐり自民党内が二分し紛糾を極めていたことと重ね合わせた。その上で、自民党の法案では「差別は許されない」と記されていたが、埼玉県条例案は「差別的取扱いをしてはならない」と少し表現は異なるが主張は同じだとしている。さらに何をもって「差別」や「差別的取扱い」とするのかが明示されていないとツッコミを入れている。

 さらに4月25日にはモラロジー道徳教育財団道徳科学研究所の髙橋史朗教授が同研究所のブログで「同性パートナーシップ制・埼玉県条例案の問題点」と題した論文を投稿している。この論稿の結尾で高橋教授が指摘しているのが、「自民党の『LGBT理解増進法』案に『差別は許されない』という野党案が追加されたために、了承見送りになった経緯を踏まえれば、自民党が同条例を推進しているのは不見識と言わざるを得ない」と断じている。

 阿比留瑠比氏の「差別」や「差別的取扱い」の不透明なグレーゾーンという指摘はもちろんだが、高橋氏はもう少し踏み込んで「性自認」がもたらす問題点と社会的影響度などについての指摘が秀逸だ。

 同条例案の第1条に「性のあり方が男女という二つの枠組みではなく連続的かつ多様であり、……性的指向及び性自認の多様性に係る理解増進に関する取組を推進し……」とあるが、「性の連続性」や「性自認の多様性」は、極めて理解しづらい概念だが、とにかく異を唱えれば「差別主義者」「ヘイトスピーチ」のスティグマ(烙印)を押される。 

2021年5月、LGBT法案の国会提出を断念した自民党

女性の権利法益を奪うもの

 高橋教授は自民党の「性的マイノリティに関する特命委員会」で当事者ヒヤリングとして「性別不合当事者の会」メンバーから次のような意見が出された。

 「『性自認』という概念が社会制度に導入され、性別を自己決定できるという考えが伸張していくことは、女性の権利法益を奪うもの。『性自認』という主観的な基準で戸籍上の性別を変えられるとする考えは、私たちの希望するところとは全く異なり……トランス女性を認めることは、『性自称』を認めることによる男権拡大であり、自由平等社会を破壊するもの

 つまり「性自認」とは容易に「性自称」に転化する危険性があるわけだ。

 さて、埼玉県では6月の定例議会で同条例案を議員提案するようだが、同県内の深谷市では、既に市の条例が制定され3月23日に施行されている。性的少数者の人権は当然、マジョリティと同じく守られるべきである。だが性的自己決定権で「性自認」と称したもので、トランスジェンダー女性(元男性)によって通常の女性のスペースや安全、権利が脅かされ、時には犯罪につながるトラブルを生みかねないことを、改めて指摘しなければならない。

 「見た目が男性」という人物が、果たして「トランスジェンダー」なのか「女装趣味の男性」かは傍目には誰にもわからない。それは以前にも指摘してきた内容であり、実際に同じ「マイノリティ」でも「LGBT」> 「フェミニスト」という力学関係が固定され、実際に米国の学校で起きた性犯罪で女子学生が泣き寝入りした事件を本欄でも以前紹介した。

思想新聞5月15日付 参院選、「改憲」勢力圧勝で憲法改正を/新しい憲法をつくる国民大会/【連載】朝鮮半島コンフィデンシャル/【主張】集団的自衛権行使を改憲で明示せよ

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