日米安保を「血の同盟」にする時が来た

 今秋の米国大統領選挙の構図が決まった。現職の民主党バイデン氏、前職の共和党トランプ氏の対決となる見通しである。どちらが次期大統領になろうと、2025年からの4年間はそれこそ第3次世界大戦を想起させる大混乱期を迎える
 ユーラシア大陸を強奪している「白い熊」と「赤い竜」が西へ東へと押し出そうとしているのである。この「熊」は昨秋、日本国内で騒動をもたらしたクマではない。「竜」もまた目出度い今年の干支の龍ではない。狂暴かつ無慈悲な大軍事力を誇り、それを使って押し出してくるのである。「熊」の頭目は大統領選を経て今後6年の権力を、そして「竜」の頭目はもはや終身権力を手にしている。その心次第で好きなように軍事力を行使すると見ておかねばならない。

国の守りに必要な集団的自衛権行使

 この大陸勢力の軍事侵攻を抑えるためには並々ならない決意と具体的な力を必要とする。それによって自由と民主主義、伝統的価値観を守り切れば、「熊」も「竜」も行き場を失い自滅するだろう。自滅とは真の人々による国家の生まれ変わりを意味する。それを果たせるか、それとも我々が自滅すなわち独裁の毒牙に飲み込まれ、家族も民族も踏み潰されるか、その分水嶺に立つのである。

 こんなとき、わが国では与党・自民党が派閥資金問題に右往左往するばかりか目を覆う性退廃を露呈し、野党はその追及にうつつを抜かし、それをメディアは嬉々として報じている。国を挙げて「平安がないのに、『平安だ、平安だ』と言っている」(エレミヤ書14章6節)。まさに醜態をさらしているのである。

 国家指導者たちは体を張って国家・国民を守る気概があるのか。松下幸之助翁は「国民は自らの程度に応じた政治しか持ちえない」と語っているが、そうであるなら日本国民自身が問われているのである。体を張るとは「身命を賭して」すなわち身体や生命が損なわれ失われるとしても構わず事に臨むことを言う。その決意、日本国民にありやなしや。この疑問を突き付けたのは他ならぬトランプ氏であった。

 「日本が攻撃されれば、米国は第3次世界大戦を戦う。我々は命と財産をかけて戦い、彼らを守る。でも、我々が攻撃されても、日本は我々を助ける必要はない。彼らができるのは攻撃をソニーのテレビで見ることだ」(2019年6月26日、米テレビ・インタビューで)

 このように日米安保条約の片務性に胡坐をかく日本を皮肉った。同様にこのことを問うたのは、故・安倍晋三氏であった

 「軍事同盟というのは〝血の同盟〟です。日本がもし外敵から攻撃を受ければ、アメリカの若者が血を流します。しかし、今の憲法解釈のもとでは、日本の自衛隊は、少なくともアメリカが攻撃されたときに血を流すことはないわけです。実際にそういう事態になる可能性は極めて小さいのですが、しかし完全なイコールパートナーと言えるでしょうか」(『この国を守る決意』芙蓉社)

 戦後、国際社会は「集団安全保障」(国連憲章第7章)と「個別的又は集団的自衛権」(同51条)の二つの概念で平和構築を目指した。前者は国連が安保理事国を要に加盟国挙げて平和を守るというものだが、絵空事であった。「白い熊」も「赤い竜」も安保理事国でそれ自体が侵略国なのだ。

 だから現実的な平和獲得手段は後者の「個別的又は集団的自衛権」しかない。もとより個別的だけで平和を守る方法もある。スウェーデンがそうだった。国民皆兵・全国民避難の核シェルター・軍事産業の育成等々、並々ならぬ軍事努力で個別的自衛権(中立)をもって生存してきたが、「熊」が暴れ出したのでそれが叶わなくなった。

 ゆえに集団的自衛権も獲得することを決め今年、北大西洋条約機構(NATO)に加わり、自国のみならずNATO加盟国の国民のために有事には血を流す決意を国際社会に披歴したのである。

 もとより日米安保条約も集団的自衛権である。このことは前文に「両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認」し締結すると明記している。

NATOに加盟したスウェーデンのクリステンション首相

陳腐な政府解釈を改めて日本を守れ

 ところが、馬鹿げたことに権利は有しているが、「行使するのは憲法違反」という国際社会では信じがたい錯誤的な政府解釈に立つ。考えてみてほしい、例えば表現の自由は権利として有しているが、表現できないとすれば、それは権利を有していると言えるだろうか。決して言えまい。

 集団的自衛権を行使できないとは権利がないに等しいのである。政府解釈は詭弁である。いつまで小田原評定のような憲法論議を繰り広げているつもりか。そんな時間的余裕はない。

 日米安保条約を「血の同盟」として国際社会に示さなければ、少なくともトランプ氏に明言しなければ、「そんな日本など守る必要があるのか」と見放されるであろう。我々は祖国を守るために日米安保条約を「血の同盟」へと進化させることを求める。すなわち政府解釈を改めることだ。それができないと言うなら、そんな憲法は不要である。直ちに改憲せよ。

【思想新聞 4月1日号】 中国・全人 「党政不分」の毛時代に先祖返り/真・日本共産党実録/文化マルクス主義の群像/共産主義定点観測

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