自民党新総裁は「日本の使命」を自覚せよ

 自民党の新総裁は心を澄ませて「天命」を聞かねばならない。その時代にはその時代に成し遂げなければならない「ミッション」(使命)が存在すると我々は信じる。令和の時代に何をなすべきか、その「天命」を遂行しなければならない。それを誤ると「天運」は離れ去り、亡国の憂き目に遭う。日本国は今、その瀬戸際に立たされている。新総裁はこのことを肝に銘じるべきだ。

 先ずもって地球を俯瞰せねばならない。日本は日本列島の日本にあらず、世界の中の日本である。資源もエネルギーも食糧も経済も、遺憾ながら日本の国内だけでは回らない。世界と関わらない限り日本の生存は不可能である。もはや鎖国はあり得ない。もとより世界は日本の為だけに存在するのではない。世界を生かし、かつ日本も生きる。それこそ日本列島に住まうわが民族の世界的ミッションであろう。

自民党総裁選の立候補者ら

護憲論者も憲法前文を正視せよ

 世界は今、国民誰もが知るように弱肉強食の恐るべきジャングル世界に陥っている。ウクライナ侵略のロシア、自由圧殺・覇権拡大に血眼の共産中国、軍事一辺倒・個人独裁にひた走る北朝鮮がいわゆる「悪の枢軸」を形成し、自由諸国を葬り去り世界を乗っ取ろうと蠢いている。

 新総裁は、この現実を直視しなければならない。ところが総裁選では「井の中の蛙、大海を知らず」のごとく、左翼メディアが喚き立てる世論という「騒音」に惑わされ重箱の隅をつつく論争に明け暮れた。そのような内向き姿勢では断じて世界平和は実現できず、日本国民を幸せにできない

 護憲論者も耳を傾けよ。それは憲法前文をしっかり読み直すことだ。すなわち、前文は「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と記す

 専制と隷従、圧迫と偏狭をもたらしているのはロシアや共産中国、北朝鮮の「悪の枢軸」に他ならない。このことは自明のことだ。これを除去しようと努めているのは自由や民主主義、法の支配といった基本的価値を共有する国々であることもまた自明であろう。さらに前文はこう言うではないか。

 「いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる」と。

 ゆえに安倍晋三政権以来、自民党は日米同盟を深化させ、クアッド(日米豪印)を形成し「自由で開かれたインド太平洋」を構築し、さらに同盟を自由欧州諸国へと広げ、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する」ように努めようとしているのである。

 そこで「名誉ある地位を占めたい」と欲するなら、我々は進んで軍事力を増強し、個別的自衛権といった「自国のことのみに専念せず」に集団的自衛権行使を厭わず、さらに率先して国際貢献に臨み、全世界の国民が「恐怖と欠乏」から免れるように努めるべきである。それこそが「自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務」である

 護憲論者よ、耳を塞ぐな。だからこそ9条を改正し、自衛隊を軍隊と明記し日本をして「普遍的な政治道徳の法則」に従う「普通の国」とすべきなのだ。この高邁な憲法前文の精神を是とするなら、率先して9条改正に臨むのが真の護憲論者ではないのか。

 「普通の国」すなわち自由と民主主義を基盤とする国は、国家と国民を対立関係としては捉えない。それは前々世紀の遺物である。18、19世紀の憲法は国家権力からの国民の自由を定めるものであったが、国民国家となった今日、憲法は国民自らが理想的な国家社会をつくるための設計図の性格を持つ。

 国民主権とは国民自らが主権者であり、「国を統治する権力」を持つ者である。それが国民の権利とすれば、自ずとそれに伴う国民の義務が生じるのである。それが「政治道徳の法則」である。義務とは「当然しなければならない務め」のことだ。その国民の義務の最たるものは「普通の国」では国防義務となる。「一旦緩急あれば義勇公に奉じ」るのが民主主義国の国民たる者の義務なのである。

改憲で問うべきは国民精神の一新だ

 冷戦終結後、多くの欧州諸国は徴兵制を停止したが、ロシアのウクライナ侵略を契機にスカンジナビア諸国やバルト3国では徴兵制を復活させた。また先の大戦の敗戦以来、軍国化を嫌悪してきたドイツではピストリウス国防相が今年6月、新たな志願兵制を提案し、「29年までに戦争に備えなければならない」と訴え、「大きな精神的転換」を遂げようとしている(CNNネット版2024年7月27日付)。

 翻ってわが国はどうか。ロシアのみならず中国と北朝鮮に近接しているというのに眠ったままである。これでは平和を維持することができず、国民を「専制と隷従、圧迫と偏狭」に陥れかねない。自民党新総裁のミッションは国民を覚醒させることだ。それは憲法改正をおいて外にない。それは単なる条文改正でなく、国民精神の改革に繋げてこそ世界平和に寄与するのである

【思想新聞 10月1日号】金正恩総書記「統一」を放棄 近く「核実験」再開か/真・日本共産党実録/連載「文化マルクス主義の群像」/共産主義定点観測

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