石破自民党が誕生したかと思えば、即座に衆議院解散、総選挙である。そして国民に審判を受けた政権のもとで来年、戦後80年を迎える。国家的分水嶺の時である。我々は今一度、足元を振り返り国の針路をどこに向けるべきか、「日本丸」の舵取りを誰に、どの政党に託すべきか、真摯に考えねばならない。そうした真剣勝負の「秋」が来た。
世界を見れば、至るとこで戦火が上がり、その火の粉がいつ我が列島に降り掛かるかも知れない。火の粉どころか何百万人を一瞬にして死に貶める核ミサイルや生物・化学兵器が撃ち込まれるかも知れない。国内では個人主義(自分さえよければよい)や刹那主義(過去や将来のことを考えず、ただ現在の瞬間を楽しく生きればよい)が闊歩しており、自滅するやも知れない。そんな危機に陥っているのが日本だ。
「勝共」の視点で日本の未来を考察
最近、『失われた古代文明 歴史に消えた40の民族』と題する書籍が出版されているが(フィリップ・マティザック著・安原和見訳=河出書房出版)、これは昔話でも他人事でもない。現代文明において日本民族がその列に加わらないと誰が断言できようか。この危機感を国民は共有すべきだ。
我々は「勝共」という視点からそのことを考える。勝共とは「共産主義に勝つ」という意味だ。勝つとは克服することを指す。なぜ共産主義に打ち克つ必要があるのか。それは共産主義が単なる唯物論ではない「戦闘的唯物論」であるからだ。
「戦闘的」とは他者を認めない、滅ぼそうとすることを言う。それはしばしば悪性腫瘍に例えられる。良性なら、その箇所だけの腫瘍で済むが(個人的唯物論者)、悪性なら他の細胞も次々と腫瘍化させ、ついには全身に及び身を亡ぼさせる。これが共産主義である。すなわち唯心論的な考えを全面否定し、宗教・伝統・家族を抹殺する。
それが国家という絶大な権力を握れば(すなわち体制共産主義)、思想弾圧、宗教弾圧、言論弾圧、文化弾圧を繰り広げ、その牙を近隣諸国、あるいは自由主義国の「弱い輪」にも向け、その支配、領土拡大(世界共産化)を目論むのである。
ロシアのプーチン大統領はロシア正教の信徒というが、ウクライナでやっていることはKGB(旧ソ連工作機関)仕込みの共産主義に他ならない。習近平国家主席の中国は「中国の夢」などではなく、文字通りの共産主義的世界拡張を目指していると考えるべきである。
彼らの支配に屈すれば、日本人が地球上から消されてしまうだろう。中国広東省深圳市で日本人学校に登校中だった10歳の男児が中国人の男に襲われ死亡した事件が起こったが、中共政権は「偶発的な事件」として謝罪もせず、中国ネットでは「愛国無罪」と言わんばかりの論調も見受けられる。ウイグル人やチベット人が民族消滅の危機に陥っているように日本人もまた、その標的にされる。これは他のいずれの民族にも当てはまる共産主義の脅威である。
だから、共産主義と闘う際、第1に我々自身の「防衛」、第2に彼らの「解放」(共産主義から解き放つ)、第3に「統一」(自由の価値観に基づく分断のない世界)を目指す。この3つのステップで臨むのが本連合の基本的な考え方である。
現在は「防衛」が主任務になるのは言うまでもないことだ。安全保障策である。防衛力増強、集団的自衛権行使、非核三原則撤廃、スパイ防止法制定などは言うまでもなく、エネルギーや食糧、経済を守ることにも心血を注ぐ。それを叶えるために憲法改正は必須である。いかに日本を守るか。総選挙ではそれを最重要課題に据えるべきだ。
ならば何を守るのか。むろん領土、領海、領空である。何よりもそこに住まう国民を守るのである。守るのは肉体的物質的な身体や財産だけではない。営々と続いてきた「国体」(皇統とその国民)を守る。地域で根付いてきた伝統を守る。祖父母から受け継いできた家族の信条や信仰を守る。これを滅ぼそうと企て潜んでいる戦闘的唯物論(すなわち文化共産主義)から歴史と伝統を守るのである。選択的夫婦別性は無論、論外だ。
そのうえで「解放」を目指す。共産主義の間違いを啓蒙するのみならず、例えば共産主義国からの訪問者を共産主義の幻想から解放する。それには敵愾心を抱かず、また抱かせず、ことごとく「親日派」にするように努めるのも一案だ。彼らに共産主義指導者の間違いを気付かせ、「解放」の同志に育てていく気概が我々には必要である。
左翼のエセ平和主義を許さない
戦後、劇的に軍縮が進められた時があった。1990年代にソ連・東欧の共産主義国が崩壊したときである。自由と民主主義、歴史的文化の尊重といった「共通基盤」が造成されたので軍縮へと進んだのである。
それがないのに核廃絶だ、防衛力増強反対だ、改憲反対だ、などと叫ぶ政治家や政党はエセ平和主義者と断じるほかない。その中には共産中国の「第五列」や正真正銘の共産主義者もいるだろう。その正体を国民はしかと見定めたうえで政治選択をしなければなるまい。
【思想新聞 10月15日号】石破政権の出帆 日本をどこに向けるのか/真・日本共産党実録/連載「文化マルクス主義の群像」/朝鮮半島コンフィデンシャル