「国家のリスクマネジメント(危機管理)を構築し、強くてしなやかな国をつくる」―。これは安倍晋三元首相が2013年に成立させた国家強靭化基本法の理念だ。それから13年を経て、我々は改めて国土強靭化の必要性に迫られている。
なぜなら大地震や大津波、スーパー台風、大雨、河川氾濫、山林火災等の自然現象のみならず、直接間接の軍事危機、共産中国によるレアメタルなどの戦略化、ホルムズ海峡閉鎖に象徴されるエネルギー危機等々、安全保障上のリスクが深刻化しているからだ。
ところが、安倍政権後の日本政治は、「熟議」とか「丁寧な国会論議」とか、あれこれ指示する〝左翼徒党〟やオールドメディアによって物事の進行が妨げられる「船頭多くして船山に上る」を呈してきた。国民はこれに飽き飽きし、今年2月の総選挙で高市早苗政権に圧倒的議席を与えた。戦略的な国家強靭化に取り組む時が到来したのだ。
今こそ日本列島を「不沈空母化」せよ
安倍政権下の2013年秋に「防災・減災等に資する国土強靭化基本法」が成立し、同法に基づいて内閣に国土強靭化推進本部が設けられ、国土強靭化政策大綱が定められた。大綱は「いかなる災害等が発生しようとも、①人命の保護が最大限図られること②国家及び社会の重要な機能が致命的な障害を受けず維持されること③国民の財産及び公共施設に係る被害の最小化④迅速な復旧復興を基本目標として、『強さ』と『しなやかさ』を持った安全・安心な国土・地域・経済社会の構築に向けた『国土の強靱化』(ナショナル・レジリエンス)を推進する」とうたっている。いずれも有事に当てはまる。
その後、「南海トラフ地震対策特別措置法」と「首都直下地震対策特別措置法」が制定され、今年7月には「国土強靱化年次計画2026」も立案された。さらに大規模災害時に東京圏の行政・経済の機能を代替する「副首都法」が成立し、北海道、愛知県、大阪府、福岡県の4道府県が指定される見通しだ。東京の一極集中によるリスクを分散し、地方活性化の道を開くためだが、これも自然災害だけでなく有事を想定する戦略的思考が必要だ。
国土強靭化に有事の想定を怠ったのは一大欠陥だった。政府は今年3月、他国から弾道ミサイル攻撃を受けた際に人々が一時的に退避する「緊急一時避難施設」(シェルター)の指定を加速させる方針を決めた。8月には災害時にも使える「デュアルユース」型シェルターの建設、整備に国土強靱化関連予算を充てることを可能とした。
これに対して産経新聞の岡嶋大城・大阪報道本部部次長は「国民一人一人の命をどう守るかという観点からすれば、従来の危機管理のあり方から一歩前進したことは確かだ。とはいえ、日本における地下の緊急一時避難施設の人口カバー率は5・9%(4月時点)にとどまり、いまだ脆弱であることに変わりはない。核・生物・化学(NBC)兵器に対応できる地下シェルターが普及するスイスやフィンランドなどの欧州諸国と比べ、差は歴然といえる」と憂えている(産経ネット26年9月30日「迫る核・ミサイルの脅威、シェルター整備で命守れ 冷徹な思考で備えを」)。
正鵠を射た指摘だ。かつて中曽根康弘元首相は日本列島を「不沈空母」に譬えたが、今ほど要塞化が必要な時はない。それには国土強靭化とは何だったか、原点に立ち返って考えてみる必要がある。その青写真を描いた藤井聡・京都大学教授(安倍内閣時の内閣官房参与)はトータルなレジリエンスを「八策」として以下、提唱していた。
第1は、防災・減災のためのインフラ対策。重要施設や家屋の耐震化や防潮堤の整備など、いわば当たり前の防災・減災策。第2は、リスク・コミュニケーション。すなわち防災教育。第3は、災害現場での情報共有などの地域コミュニケーション。第4は、有事を用意した強靭なエネルギー・システムの構築。第5は、BCP(ビジネス・コンティニュイティ・プラン=事業継続計画)。第6は、有事の際の救援・復旧の事前想定。第7は、日本全体の「経済力」の維持・拡大。第8は分散的国土構造の実現である。
中でも「『地震や津波の被害を大きそうな所のいろいろな機能を、地震や津波の被害を小さそうな所に移転させておく』ことを通じて『分散型国土』をつくっていく」ことが最も巨視的かつ抜本的、効果的な取り組みだと強調していた(『救国のレジリエンス』講談社)。
安保3文書改訂を強靭化と連動せよ
分散化とは地方を活性化させることを意味している。首都圏への一極集中、人口減で地域社会成り立たなくなる地方の「限界自治体」の拡大等、課題は山積している。加えて「悪の枢軸」(中朝露)の軍事的脅威が現実味を帯びている。
高市政権は公約に掲げた「安全保障関連3文書」(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)の年内改定に向けて今秋、論議を本格化させるが、それと連動させて救国の国土強靭化策を構築すべきだ。国民の生命と暮らしを守るために左翼勢力の無知蒙昧な主張を粉砕しよう。
【思想新聞 10月15日号】韓国・李政権の司法改革/「辺野古沖転覆事件」の深層/朝鮮半島コンフィデンシャル