統一地方選が「イデオロギー戦争」最前線に

世界思想2月号を刊行しました。今号の特集は「政治決戦2019」です。

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統一地方選は安保と家族を巡る攻防だ

 世界思想2月号の特集は「政治決戦2019 改憲へ剣が峰の参院選を突破せよ」。改憲か瓦解か分水嶺に立つ2019年を迎え、安倍政権最大の難関となる今夏参議院選の行方について論考した。また、本ページでは、その特集記事から「平成最後の統一地方選」について取り上げる。

2018年秋、自民党総裁選の演説で手を振る安倍晋三首相。憲法改正を目指す安倍政権にとって2019年政治決戦は最大の難関となる。

 

 今年4月に行われる統一地方選挙は地方議会の方向性を決するのみならず、今夏の参議院選の前哨戦として注目される。しかし巷ではどれほど話題になっているだろうか。

 過去の地方選を振り返れば、1960年代の革新自治体ブームや90年代の無党派旋風(青島幸男東京都知事・横山ノック大阪府知事)、さらに橋下徹氏の大阪維新(2008年)や小池百合子旋風(16年)など国政レベルにも影響を及ぼした地方選が数多くあった。今年はそうした「花」がない。だが、地方政治は沖縄県で象徴されるように安全保障など中央政治にも大きな影響を与える。無関心であってはならない。

 選挙日程は天皇陛下のご譲位などの日程に配慮し、都道府県と政令指定都市の首長と議員の選挙が4月7日、その他の市区町村の首長と議員の選挙は4月21日に行われる。

2016東京都知事選挙「小池百合子旋風」、2017都議選の「都民ファーストの会旋風」、そして直後に民進党との合流し急激に失速

 

自民党の勢い続くか 立憲が「受け皿」か

過去の統一地方選の分析はこちら

 まず4年前の2015年地方選を振り返っておこう。同選挙の特徴は、自民党が10道府県知事選で全勝、41道府県議選で1153議席(前回比34人増)を獲得。全定数に対する自民党の議席占有率は前回より2・4%多い50・5%に達したことである。安倍政権の高支持率が続いていた時期で、自民党に風が吹いていたからだ。

 自民党は1990年代初めに50%を割って以来、長期低落を続け07年には過去最低の47・6%に落ちたが、4半世紀ぶりに50%代に戻した。大阪や栃木など21道府県で議席を増やし、単独過半数を持つ議会は愛知など3県増やし24県議会。大阪府を除く40道府県で第1党を確保した。得票率も前回37・5%から39・4%へと伸ばした。

 17政令市議選では301議席(79人増)を獲得し、得票率は29%(約5%増)。東京区市町村でも343議席(29人増)獲得し、都市部でも着実に支持を回復させた。この勢いを今年も維持できるか、それとも安倍政権への飽きが出て低調に終わるか、そこがポイントとなる。地方議員は国政選挙の手足となるだけに参院選、改憲の行方にも影響を与えるだけにその帰趨は注目される。

 

強い自民党に対極の共産党が受け皿となった

 

 自民党に勢いがあるときは、その極に位置する共産党も勢力を伸ばす傾向がある。ラジカルな自民批判で反自民票を引き寄せるからで、中間政党が落ち込むからだ。

 15年地方選でも共産党は自民に次いで勢力を伸ばし、道府県議選では07年以来となる3ケタ台の111議席(21人増)を獲得、戦後初めて共産党議員がいない「空白県」を解消した。得票率は8・4%(11年比2・8%増)と伸ばした。

日本共産党本部(代々木)

 政令市議選では136議席(37人増)、得票率12・8%(2・5%増)を獲得。東京区議選で128議席(7人増)、市議選で672議席( 44人増)、町村議選で292議席( 11人増)、合計1092議席(62人増)を獲得し、13年参院選、14年衆院選での勢力拡大を維持し「反安倍の受け皿」となった形である。

 15年10月の宮城県議選(定数59)で共産党は改選前の4議席から8議席へと倍増、民主党の5議席(前回7議席)を上回って議会第2党に躍り出た。得票率は前回(2011年)の11%から約18%へと伸ばし、「受け皿」の印象を一層強めた。

 

 ちなみに共産党ブームを起こした98年参院選(820万票獲得)直後の99年統一選では、道府県議選で152議席(得票率10・5%)、政令市議選(当時は11市)で120議席(15・6%)を獲得しており、それには及ばない。

 一方、民主党(当時)は下野した12年総選挙での惨敗をそのまま引きずり、道府県議選では264議席(82人減)、得票率12・2%(5・2%減)。政令市議選では126議席(21人減)、得票率13・3%(3・9%減)に大きく後退。大阪市で議席0(8人減)になるほど、都市部での敗退も際立ち、結党直後の99年統一地方選以来となる「第4党」に転落。議席占有率には過去最低の12・3%。東京区市町村で115議席(23人減)にとどまり、有権者の民主党離れを決定づけた。

 

大阪の「地域政党」色強める維新の党

 

 その他の政党を見ると、統一選に初めて臨んだ維新の党は、道府県議選で28議席(改選前比15人増)、大阪維新の会は42議席(同3人減)の計70議席を獲得したが、大阪以外では僅かな議席増にとどまり、地域政党の様相を呈した。その後、一層、地方政党化している。公明党はほぼ一定の議席を確保し続けている。

橋下徹氏の演説(2013年)

 今回の統一地方選でもっとも注目されるのは、旧民主党勢力(立憲民主党と国民民主党)の動向だろう。17年総選挙で立憲民主党は比例得票率・票で、19・9%・1108万票、希望(現・国民民主党)は17・4%967万票で、合わせて2000万票以上の支持を集めた。現在、勢いがあるのは立憲民主党。旧社会党や共産党のお株を奪うほど左翼路線を採り、共産党に代わって反安倍の「受け皿」になる可能性がある。また大手民間企業の労組基盤をもつ国民民主党も侮れない。4年前の旧民主党の議席がどう変化するかも参院選のバロメーターになる。

 

地方選イデオロギー戦争の記事に続く

 問題は政策である。地域作りや福祉など身近な地方政治に対する各党の姿勢に当然、違いはあるが、際立って対立するのはイデオロギー的な政策を巡ってである。

 

反米軍基地闘争と家族崩壊策を注視せよ

 

 第一に、安全保障だ。沖縄県の普天間飛行場の名護市辺野古への移設問題では県は2月に賛否を問う県民投票を予定しているが、反対している自治体もあり紛糾している。

 左翼勢力は反米軍基地闘争を沖縄県から全国へと拡大しようとさまざまな手を打っている。例えば、東京都小金井市議会は昨年9月、普天間飛行場の県外・国外移転を求める陳情を賛成多数で採択した。陳情は辺野古移設を直ちに中止し、代替施設が必要なら全国の自治体を等しく候補地にして「当事者意識を持った国民的議論を行うこと」を求めている。

 採択では自民党などが反対し、公明党が退席したものの、旧民進系や共産などが賛成した。反米軍基地勢力はこうした陳情を全国に展開しようと目論んでいる。

普天間基地の基地負担軽減のためオスプレイ移設を受け入れた岩国市でも左翼活動家による「反対運動」が起こっている

 

 山口県岩国市も左翼の反基地闘争にさらされている。米海兵隊岩国基地があるからだ。昨年3月までに神奈川県の厚木基地から空母艦載機部隊の約60機が移転し現在、米軍機は約120機。沖縄県の嘉手納基地と並ぶ米軍の極東最大級の航空基地となった。

 岩国市は06年3月、岩国基地への米空母艦船機移転に対して住民投票を行い、反対が過半数を超えたが、その後、反基地派市長が落選。国は市と議会、地域住民らの話し合いを進め、移転受け入れへこぎつけた。

 

 垂直離着陸輸送機オスプレイの受け入れ問題では佐賀県や千葉県などでも左翼勢力は反対闘争を仕掛けている。議会の共産党や立憲民主党系がこれに呼応し、地方議会でも安保論争が今後、活発化するのは必至だ。

 

夫婦別姓やパートナーシップ制度運動の背後にある左翼勢力

 

 第二に、「家族」をめぐる抗争だ。東京都中野区議会は昨年12月、選択的夫婦別姓制度の法制化を求める意見書を公明、立憲、共産などが賛成して採択した。法制化を求める意見書の可決は23区では初だ。「市民団体」が陳情したもので、全国に広げようとしている。伝統的な家族観を打ち壊そうとする左翼勢力が背後に存在する。

 

 2015年に東京都渋谷区は、性倫理を脅かしかねないLGBT(性的少数者)の〝権利擁護〟をうたう「パートナーシップ制度」を導入したが、これを皮切りに世田谷区、伊賀市、宝塚市、那覇市、札幌市、福岡市、大阪市、中野区が導入した。今年度には千葉市なども導入予定だ。

 昨年2月にはこうした動きを全国化しようと「自治体にパートナーシップ制度を求める会」なる団体が発足。昨春、全国27自治体に一斉に、性的少数者の権利保護を求める請願書を提出。今年は請願提出に拍車をかけるとしている。このように、地方議会が「家族」をめぐる攻防の最前線に立たされている。

 

 さらに、地方政治に関わる問題としては、別表のようにさまざまな左翼的な条例が存在している。19年統一地方選の動静から目を離すべきではない。

 


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