世界思想9月号を刊行しました。今号の特集は「政治決戦 2021」です。
ここでは特集記事の一部 【アフターコロナと危機管理 】 についてご紹介します。
4度目の「緊急事態宣言」で、国民の「自粛疲れ」も指摘される。自民党のコロナ対応が迷走していることは確かだが、これは単に一政権の問題というよりも、これまでの日本の構造的課題に起因するところが大きい。
マスコミによる表層的な政権批判に流されることなく、今後の日本の「国のかたち」を見据えて投票行動に臨むことが重要だ。
憲法に緊急事態条項を
国家緊急時は、世界的感染症ばかりではない。政府の迅速で強力な対応を可能とするため、憲法に緊急事態条項を盛り込むべきだ。
現今のインフル特措法では都道府県の首長の権限が強いのに比べ、政府の印象が薄い。政府が「火中の栗」を拾うことを強いられる一方、法定以上の権限行使を都道府県の首長が判断しようとする歪いびつな状況は、そもそも「緊急事態」に対する考え方が整理されていないことに起因する。
これは総合的に見て「幸福な統治形態」ではない。最大限の成果(公共の福祉など)を得るためには何らかの犠牲(一定の私権制限など)が伴うが、現憲法下では、そのバランスが著しく損なわれている。
緊急事態に際して政府が無為無策であるべきではないし、逆に法的根拠もなく、行き過ぎた私権制限がなされるべきでもない。
適切な対処を可能にするためにも、緊急事態に対する規定を定めておかなければならない。
国益を守るためには時代に即応する柔軟性が必要
コロナ禍で重要性が指摘され、「ポストコロナ」でもその位置が変わらないとされているのが、インターネットやSNS、WEB会議システムなど情報インフラ技術である。地方と中央、さらには世界との距離が急速に縮まり、情報発信の主流もマスからピアツーピアに移行しつつある。
そこで重要なのは情報分野における「国益観念」だ。特に新設のデジタル庁や、国家のあらゆる情報にアクセスする「専門家」において、国益を守る意識が徹底されなければならない。
それは国内の軍事研究に反対しつつ、中国の軍事開発に関わる「日本学術会議」や、中国への情報漏洩が指摘された国民的SNS「LINE」の教訓からも明らかだ。
現憲法下ではあまり意識されないが「国益を守る」ことは「国民の生命と財産を守る」ことと、ほぼ同義である。また「国益尊重」は、必ずしも偏狭な「自国中心主義」ではない。
例えば、GSOMIA(軍事情報包括保護協定)や米+英連邦情報網ファイブ・アイズなど軍事機密情報の共有は「国益=同盟益」となる、優れて公益性の高い取り組みだ。
現実に中国による軍事技術や企業機密などの情報略取を防ぐには、同盟国の協力・団結が不可欠である。
技術革新が進む時代にあって、国家の社会資源を次世代の国民にいかに引き継ぐのか。国内の法整備、同盟国との協力など、複雑な課題が山積みだ。
率直に言って、それらの問題意識に鋭敏に反応できる柔軟性(レジリエンス)を持っているのは自民党だろう。長期政権となった安倍政権から菅政権まで、国益に対する深刻な危機意識に基づいて、安保法制、機密保護、クアッド(日米豪印戦略対話)、さらには「経済安全保障」などの取り組みが受け継がれている。
一方、立憲民主党の「枝野ビジョン」は軽武装・経済至上の「吉田ドクトリン」を理想としている。これは、国益と安全保障の感覚を欠いた「周回遅れの偽装保守」戦略である。
国をミスリードしない確かな政権選択を心がけたい。
(「世界思想」9月号より )
◆2021年9月号の世界思想 特集【政治決戦 2021】
Part1「国のかたち」の根幹となる結婚と家族を守ろう
Part2 安保政策の充実こそ最大の福祉政策
Part3 アフターコロナと危機管理
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