香港を「第二の天安門」にさせるな


日本でも「香港の人権蹂躙・民主主義崩壊」に反対する署名活動が広がりを見せている(change.org)


自由を守るのか、それとも弾圧の毒牙に屈するのかー。香港は今、岐路に立たされている。

 

 香港政府は容疑者の身柄を中国に引き渡せる「逃亡犯条例」を制定しようと目論(もくろん)でいる。

 

 同条例が成立すれば、香港の裁判権が中国共産党政権に握られ、それでなくても破綻しかけている「一国二制度」が完膚なきまで破壊され、香港市民の自由が剥奪されること必定である。

 それゆえに市民はこぞって条例撤廃を訴え、抗議行動を強めているのである。

 

 これに対して中国は武装警察を香港との境界線に集結させ、武力弾圧の威圧をかけて市民の抵抗を排除しようと策動している。

 

 「第二の天安門事件」の蛮行がまかり通るのか、それとも香港市民が自由を守り抜くかの岐路に立たされているのである。

※香港の林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官は9月4日、「逃亡犯条例」改正案の撤回を正式に表明したが、デモ隊・民主派は「遅すぎる、少なすぎる」として反発を強め、デモ逮捕者の釈放、(台湾同様の)普通選挙の実現など5項目の要求デモを続けている。

警察も軍も司法も全て共産党支配に

 

「逃亡犯条例」は刑事事件の容疑者身柄引き渡しの手続きを簡略化し、中国に容疑者を引き渡せるようにするものだ。

 成立すれば、香港行政長官は殺人罪のほか贈収賄、出入国審査違反等、7年以上の懲役刑が科される30種類以上の容疑者を引き渡し対象にできるばかりか、中国の要請を受けて資産凍結や差し押さえも強行できる。

 

 中国共産党はこれまで巧妙に香港支配を進めてきた。立法府選挙では親中派が有利になる選挙制度を作り上げ、行政長官選挙では親中派が多数を占める「指名委員会」で候補者を恣意しい的に選定できるようにした。2017年の共産党大会で習近平総書記は「香港の全面的な管轄権を握り締める」と言い切った。

 

 中国の国家機関はすべて共産党委員会を通して「党の指導」下に置かれている。これが伝統的なプロレタリアート独裁で、彼らは「人民民主独裁」と称してきた。三権分立も「法の支配」もなく、司法は共産党の支配下にある。

 中国刑事訴訟法107条は、「重大な事件と微妙な事件」で裁判所長が「必要」と判断すれば、裁判所所属の「裁判委員会」に事件をまわし、そこで審議と判決を行うとしている。

 「裁判委員会」は司法機関を監督するために各裁判所に設置されており、裁判所長(共産党員)および党所属の裁判関連委員会のメンバーで構成されている。裁判所は法的にも実際にも共産党の支配下にあり、党の1機関にすぎない。

 

 こういう中国に身柄が引き渡されれば、正当な裁判を受けられず、共産党の思いのままの「判決」で人権を蹂躙(じゅうりん)され、自由どころか命まで奪われる

 ノーベル平和賞を受賞した故・劉暁波氏が「08憲章」で言うように「今の中国は共産党の天下だ。党は文化大革命、天安門事件や人権擁護運動の弾圧などで数千万人の命を奪った」のである。

中国・深センに集結した武装警察。

 

 その毒牙は日本人にも向けられていることを忘れてはならない。中国の裁判所は今年5月、身柄拘束中の日本人4人に対し、懲役15年などの重刑を言い渡した。2015年以降、少なくとも邦人9人が起訴され、判決を受けた8人全員が実刑である。国家機密を盗んだ罪とか、スパイ活動への関与とか言い募っているが、起訴内容も判決文も明らかにされず、まさに暗黒裁判であった。

 

 今、香港との境界で手ぐすねを引いている武装警察(武警)なるものは軍隊そのもの、それも「共産党の軍隊」である。中国の軍は共産党の建党当時、「中国労農紅軍」と名乗り、革命の軍隊として共産党の政権獲得の道具として成長・発展を遂げ、49年10月に中華人民共和国が建国されると、党・政権の擁護と外敵から国(共産党政権)を守る国防軍としての役割を担い「中国人民解放軍」と称するようになった。

 人民解放軍は「中国の武装力は中国共産党の指導を受ける」(国防法)と規定され、中央軍事委員会の指導に服する。中央軍事委員会は党と国家にそれぞれ存在するが、メンバーは同じなので実質的には一体で共産党中央軍事委員会が最高指導機関である。

 

 50年代には国内弾圧組織として「人民武装警察部隊」を組織した。武警は暴動鎮圧用の火器や装甲車など陸軍並みの装備を持ち、チベットやウイグルなどで民衆を弾圧したことで知られる。今なお全土で民族弾圧、人権弾圧の先鋒を担っているのである。

多くの市民が参加した大規模デモ行進で、香港は中国ではないと訴える若い女性。

 

香港の次なる標的台湾も危機に陥る

 

 ちなみに台湾問題を国内問題と強弁するため96年10月に陸軍14歩兵師団を武装警察に衣替えさせ、武警機動師団と名乗った。国内の治安維持や国境防衛などを担う武警を台湾侵攻に使って、国内問題として武力統一を正当化する狙いだ。武警はパラシュートで台湾に上陸し、総統府を軍事占拠するという「斬首戦」訓練を重ねている。

 

 香港問題は即、台湾問題であると認識しておかねばならない。

 

 中国が2005年3月に制定した「反国家分裂法」は、台湾への武力侵攻を正当化する。さらに10年7月に「国防動員法」を施行し、全人民を共産党支配に奉仕させる仕組みを作った。

 香港の自由の灯を守れなければ、世紀の野蛮大国・中国の毒牙は台湾、沖縄、日本本島、さらには世界へと広がっていく断じて香港圧殺を許してはならないのである。

 

※日本国民として、香港における「自由・民主主義の灯」を守るため、change.orgでキャンペーンが行われています。ぜひお力をお貸しください。 http://chng.it/94Sr7gbsB9

 

思想新聞 香港を「第二の天安門」にされるな 9月1日号より(掲載のニュースは本紙にて)

9月1日号 文政権の「正体」露わに / 「北のミサイル実験、容認する米」大阪府で安全保障セミナー / 主張 香港を「第二の天安門」にされるな

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