沖縄復帰50年 安保の新地平を拓け

 沖縄が祖国に復帰して5月15日に50年を迎えた。東京と沖縄で同時開催された沖縄復帰50周年記念式典で皇居・御所からオンラインで出席された天皇陛下は、「苦難の道を歩んできた沖縄の人々の歴史に思いを致しつつ、式典に臨むことに深い感慨を覚えます」と述べられた。県民はもとより国民もまた感慨深いものがある。沖縄は「次なる時代」を目指して新たなスタートを切ったと慶賀したい。

沖縄復帰50周年記念式典でお言葉を述べられる天皇陛下

「独立」唱える親中派駆逐せよ

   朝日新聞と地元紙、沖縄タイムスが合同で行った県民世論調査では、沖縄の米軍基地が「日本の安全保障にとって必要」という回答が69%を占めた。沖縄の「最重要課題」の回答はトップが「経済振興」の38%で、「基地問題」の26%を大幅に上回った(5月13日付)。 また毎日新聞ともう一つの地元紙、琉球新報の合同世論調査では祖国復帰に否定的な回答は僅か4%。ちなみに全国では1%である(5月12日付)。このように左翼の朝毎、地元2紙の世論調査をもってしても沖縄県民は祖国復帰を「良かった」と思っており、「米軍出ていけ」といった共産党などの反米基地闘争は支持されていない

 それにも関わらず、左翼勢力は「反米軍基地」闘争にうつつを抜かしているメディアも朝日・沖縄タイムス、毎日・琉球新報のみならず少なからず「反基地」報道に血道をあげている。これはわが国に左翼マルクス主義勢力がいかに浸透しているか、如実に示す例である。  ロシアのウクライナ軍事侵攻の口実に使われたのは、親ロシア勢力が迫害を受けているといった「偽旗作戦」であった。同じように中国は沖縄工作を手掛け、侵略の機会をうかがっていることを想起しておかねばならない。中国軍は世論戦、法律戦、心理戦の「三戦」を仕掛けているのだ。

 過激派や共産党、中朝など周辺諸国の動向を分析する公安調査庁は「2017年 内外情勢の回顧と展望」の中で、「琉球独立勢力」に言及し、「中国国内では、『琉球帰属未定論』に関心を持つ大学やシンクタンクが中心となって、『琉球独立』を標ぼうする我が国の団体関係者などとの学術交流を進め、関係を深めている」と指摘している。

 こうした動きには「(中国の)日本国内の分断を図る戦略的な狙いが潜んでいる」とし、「今後の沖縄に対する中国の動向には注意を要する」と警鐘を鳴らした。それから5年を経て工作はより一層、深化していると見ておかねばならない。

 当然のことながら、沖縄県民で独立を唱えているのはほんのひと握りにすぎない。琉球新報の県民意識調査(2018年元日号)では2・6%である。つまり97%強の圧倒的多数の県民は独立など考えていない。日本国民であるから当たり前だろう。

 ところが、ウクライナでもそうだが、僅かであってもこうした独立派を侵略国は最大限、利用しようと考える。その危険な団体の一つが「琉球民族独立総合研究学会」である。

 その中心人物、松島泰勝氏(龍谷大学教授)は、自著『琉球独立への道』(法律文化社)で「このまま(米軍)基地が存続し続けると、過去数百年にわたりアジアとの間で築かれてきた交流の歴史が断絶されるだけでなく、アジアに敵対する島として琉球が固定化されてしまうだろう。軍事基地が置かれた現在の琉球はアジアの亀裂、裂け目であるともいえる」などと珍論を唱えている。

 アジアでこんな主張に同調する国は中国と北朝鮮を除いてどこにも存在しないだろう。かつて民主党政権が普天間基地移設問題で「最低でも県外」と叫んだとき、リー・クアンユー元シンガポール首相は「米国抜きではアジアの勢力均衡は保てぬ」と訴え、沖縄米軍基地の「県外移設」を厳しく批判し、次のように述べたことがある。

「将来、中国が米国の軍事力で対抗できなくても、西太平洋とインド洋を担当する第7艦隊に大きな打撃を与えることはできる。また、潜水艦で空母を沈めることさえ可能だ。従って戦力展開の際には空母を頼れなくなる。米軍には基地が必要である。それゆえ日本やタイに基地が必要なのだ」(朝日新聞10年5月11日付)

 この発言から10年以上も経って中国の軍事力は米国に対抗するほど巨大になった。自由諸国は一層、沖縄の米軍基地を頼りにしているのである。軍事侵攻の危機が迫る台湾は論を待たない。

沖縄復帰50周年記念式典で式辞を述べる岸田文雄首相

「蟻の一穴」に最大限の警戒を

 沖縄から米軍を追い出し中国の勢力圏に組み入れようとする「琉球独立勢力」は、数は少ないとはいえ、まぎれもなく中国の第五列(内通者)と見ておかねばならない。それにも関わらず松島氏らの主張を左派紙はまことしやかに取り上げているのである。ここに危険な芽が垣間見える

 こうした左翼勢力が、あるいは反日勢力が「蟻の穴から堤も崩れる」ごとくに日本の平和と安全を危うくするのである。沖縄の祖国復帰50年を祖国防衛の新たなスタート台にせねばならない。

思想新聞6月1日号  米韓首脳会談・韓国「安米経中」路線を転換 【連載】マルクス・レーニン主義  東愛知安保大会  【連載】共産主義定点観測

機関紙「思想新聞」へのお問い合わせ・購読はこちらへ

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で

「いいね」と思ったらシェア!