イスラエルとハマス「戦争」/「テロは絶対に許さない」が原則

 イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突から、12月7日で2カ月となった。パレスチナ自治区・ガザの建物の3割が破損し、イスラエル軍は南部主要都市に攻勢をかけている。ハマスを追い込んでいる。11月までに北部をほぼ掌握し、12月3日に南部にも地上侵攻を開始したのである。イスラエル軍の侵攻に対して「人道の危機」をもって批判する声が高まっている。民間パレスチナ人への支援は必要だが、テロは絶対に許さない、との原則がかすんではいけない

 12月5日夜、「ガザ南部のハマスの拠点」とみなす主要都市ハンユニスに侵攻を開始した。南部の拠点中枢部を包囲し、市内に潜伏しているとみなしているハマス幹部の殺害とインフラ破壊を目指しているのである。

ハマスの越境攻撃は第2のホロコースト

 ガザ当局は衝突から2カ月で累計1万6000人の死者となったと公表した。イスラエル軍幹部は12月4日、戦闘開始からこれまで、ハマス戦闘員の約5000人を殺害。民間人の犠牲は約1万人を超えたことを明らかにした。戦闘員の2倍となっており、国際的な批判も増している。

 米国のオースティン国防長官は、民間人を保護できなければ「戦略的な敗北」だと警告している。2カ月間で国際世論の風向きは変わっており、人道的配慮を求める声が大きくなっているのだ。

 11月27日、イスラエル軍は市街戦訓練を公開した。パレスチナ自治区のガザの町を模した市街戦訓練の様子を一部海外メディアに公開したのである。国際的な批判が高まる中、民間人に配慮して作戦をすすめているとアピールする狙いがある。イスラエル兵士がここで数週間にわたる訓練を受け、ハマスは民間人を盾として使うが我々は民間人を巻き込まないように訓練を積んでいることを伝えようとしたのだ。

 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは10月7日、2500発以上のロケット弾をイスラエル領内に打ち込み、境界を越えてイスラエル南部の町に戦闘員数十人を侵入させた。

 イスラエルは対空防衛システムで迎撃(「アイアン・ドーム」によって)したが、一部が着弾。エルサレムにガザからロケット弾が飛んできたのは初めてだった。情報機関「モサド」のエフライム・ハレビ元長官は、「ハマスがこれほどの量のロケット弾を持っているとは思わなかった」と語っている。さらに、ハマスの越境攻撃は、残虐性と非人間性において、前代未聞。非人間性の意味でホロコースト(ユダヤ人の大虐殺)に匹敵すると非難した(読売 12月9日付)。

 ハマスの軍事部門カッサム隊のムハンマド・ディフ司令官の声明は、「(イスラエルの)占領による犯罪を終わらせる決意をした」とする軍事作戦開始の宣言を発出している。イスラエルは激しく反応した。ネタニヤフ首相は「我々は戦争状態にある」「敵はこれまでにない代償を払うことになる」と語り、ハマスの完全排除を宣言したのである。

 今回の「衝突」で強く意識すべきことは、ハマスがはじめた戦争は一般人の殺害を「作戦の前提」としていることだ。ハマスはテロリスト約1500人をイスラエルに侵攻させて無差別殺人を行った。それは兵と兵、軍と軍との戦いのなかで、やむを得ず一般の市民を巻き込んでしまったものでは全くない。最初から一般人を殺害する目的で侵攻したのである。イスラエルに在住する日本人の証言である

 イスラエルは10月24日、ハマス幹部殺害部隊「ニリ」を新設した。イスラエルの諜報機関シンベットとモサドの合作だ。パレスチナ自治区ガザからの越境攻撃に加わったハマス幹部や戦闘員を捕らえて殺害するための組織である。「ニリ」設立は、「ホロコースト以来の悲劇」とされるこの度のユダヤ人虐殺に報復するのが狙いである。

 「モサド」の歴史で想起すべきことがある。1972年西ドイツ(当時)で行われたミュンヘン五輪の選手村でイスラエル選手団の11人がパレスチナゲリラ「黒い9月」に殺害されたことを受けて、このテロ計画にかかわったゲリラをイタリアやレバノンなどの各地で追跡し、8人を殺害した。

ハマスが虐殺を行った現場

イスラエルを非難する日本共産党

 共産党の志位和夫委員長は「どんな理由があってもジェノサイド(集団殺害)は許してはならない」と強調。イスラエルの国際法違反を正面から批判しない日本の政府の姿勢に対し、「情けない」「信頼を損なう」などの厳しい声が寄せられていると批判した(赤旗 11月24日付)。

 パレスチナ自治政府(ヨルダン川西岸地区とガザ地区)は2012年11月29日、国連総会で国連オブザーバーとしての地位をもつ非加盟国として認められている。そして2021年時点で138の国連加盟国が国家として承認している。いわば「準国家」である。

 今回のイスラエルとハマス「戦争」はイスラム組織ハマスによる大規模テロに端を発している。まずこの点が徹底して非難されるべき中心でなければならない。あらゆる批判の前提でなければならない

 パレスチナは国連加盟国ではないが、「準加盟国」といえるオブザーバー参加の立場であある。国際法において最優先されるべきは国連憲章であり、「第二条4項 すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」とある。「力による現状の変更」と大規模テロは断じて許されない。

テロを再び起こさせないことが重要

 イスラエルとハマスは11月24日、戦闘休止期間を開始。7日間でハマスは人質105人を解放、イスラエルはパレスチナ人収監者240人を釈放した。しかし12月1日、合意が期限切れとなり戦闘が再開された。

 自衛権行使の軍事行動は大詰めに来ている。「10・7」を計画したハマスの指導者宅を包囲しているとイスラエル軍は6日、発表した。

 パレスチナ自治区ガザ南部の最大都市ハンユニスの防衛線を突破し、ハマスのガザ地区指導者ヤヒヤ・シンワール氏の自宅を包囲したという。シンワール氏を10月7日の越境攻撃の首謀者だとみているのだ。

 首謀者の排除によって戦争の連鎖が集結するとは思わない。「平和」の維持のため今できることは、テロは絶対に許さないという原則を最優先にすること、普遍原則とすることだ

【思想新聞月12月15日号】テロは絶対に許さない」が原則/真・日本共産党実録/朝鮮半島コンフィデンシャル/共産主義「定点観測」

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