文科省は小中高校のカリキュラム編成の基準となる学習指導要領の改定案をまとめた。人工知能(AI)の急速な発展に対応するため情報を見極める能力向上を目指すことをメインに据えている。情報教育は時代の要請だが、それだけでは事足りない。教育に「歴史と伝統」と取り戻さねばならないと我々は考える。
古来、教育大国の良き伝統を顧みる
教育とは人を「一人前」まで育成させることだ。古来、人は生まれたまま放置されれば死すほかない。育てられて「一人前」になり、それで終わるのではなく善く生きるために生涯に渡って学ぶ。祭りや儀式、畑仕事などを通じて生きる術を学び、一人前の大人に成長すると、今度は先輩となり親となり社会のリーダーとなって学んだことを次世代に継承する教育者の立場に立つ。連綿と教育は続いてきたのだ。
日本の歴史をみれば、他国に学ぼうと決死の遣随・遣唐使があり、律令体制下で初めて公教育として大学寮や国学が設置され、イエズス会の宣教師ザビエルが世界に紹介した足利学校、江戸期の幕府直轄の昌平坂学問所、明倫館(萩藩)や弘道館(水戸藩)、興譲館(米沢藩)などの藩校や郷校が開かれ、地域には私塾や寺子屋など多数の教育機関があった。藩校の数は276。寺子屋は実に2万以上。日本は昔から教育大国だったのだ。
明治維新後、政府は「教育なくして立国なし」と並々ならぬ決意で教育に取り組み明治5(1872)年に「学制」を公布した。国民への「仰せ出され書」は、学問・教育は国家のためにするのではなく各自の「身を立てる財本である」とし、それがないと貧乏・破産・喪家を招くと諭し、「人たるものは、学ばずんばあるべからず」と諭した。
明治23年の憲法発布に際して国民のアイデンティティの確立を目指し「教育勅語」が発布された。近代化、西洋化で国民が古来の忠孝や節義、誠実の美風などの伝統的精神を失わないよう教育の礎に据えとしたのである。勅語は父母への孝心や兄弟愛、夫婦の和合、友情、為に生きる精神、遵法精神や危急の際の義勇心など12の徳目(道徳)を説いている。いずれも現在に通じる道徳的価値と我々は考える。
だが、戦後教育は「歴史と伝統」の否定からスタートした。日本を占領したGHQ(連合国最高司令部)は昭和20(1945)年に「神道指令」で教育界から神道を〝追放〟し「終身・日本歴史・地理」の3教科の中止を命令し、戦前教育の全面否定・破壊を強行した。
占領政策を体現したのが教育基本法だ。道徳教育の基本となる「宗教的情操」を育むことを否定し、「政教完全分離」を学校に持ち込み徳育を形骸化させたばかりか、唯物論教育の道を開いた。昭和21年、教育基本法の原案を検討した教育刷新委員会(委員長=安倍能成前文相)は、要綱案で「宗教的情操の涵養は、教育上これを尊重しなければならない」としたが、GHQは「宗教的情操」は「特定の宗教を介してでなければ涵養できない」と主張し、「歴史的には神社に頭を下げるといった軍国主義、超国家主義の手段になっている」と決め付け削除した。
世界いずこでも道徳は宗教を基盤として成立しており、宗教抜きの道徳教育はあり得ないから、学校現場は自ずと道徳教育をためらうようになった。「青少年を革命の担い手」に育てようとする日教組は教育基本法を盾に道徳教育の排除に動き、修学旅行で奈良や京都の寺院・神社の訪問も拒んだ。このため自治体や校長は苦肉の策として「宗教施設ではなく文化財を見学する」との理由をつけて修学旅行を実現させたほどだ。
共産党は「資本主義のもとでも、支配権力に抵抗しながら、民主教育のいっそうの発展を求め、その実現に努力しようという学校は…資本主義下の社会主義学校と呼ぶことができる」(日本共産党中央委員会宣伝教育文化部=昭和38年4月25日)と豪語し、道徳教育を「民主教育」(革命教育)にすり替えようとした。
安倍氏の遺志継ぎ抜本的教育改革を
一方、宗教的情操教育を否定された一般教師はフランスの思想家ルソーの「エミール」の影響を受け自由放任主義が広がった。あるいは米国の〝デューイ式民主主義教育〟を採用し、道徳教育を軽んじ実用思考(経験学習、○×的思考)を重んじるようになった。自由放任・実用主義教育と共産主義的唯物思考がドッキングし、戦後の教育現場が荒廃していった。
宗教的情操や道徳、日本の歴史・伝統・文化が軽視され、個人の権利優先、悪平等、自由放任の私優先主義が闊歩し、子供たちは「滅公奉私」の利己主義に染まり、宗教心は薄れていった。これが「戦後レジーム」の実相である。
ゆえに安倍晋三元首相は第1次安倍政権において「教育を取り戻す」をスローガンに教育基本法改正を成し遂げ、第2次安倍政権下の平成30年に道徳教育の教科化を実現させた。
だが、道半ばだ。高市早苗政権は安倍晋三元首相の遺志を継ぎ、情報教育の充実に甘んじることなく、日本人を取り戻す本格的教育改革に着手しなければならない。
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