レノボなどの中国製PCは、欧米軍事・警察関係者の間で「使用は御法度」とされている。
今回副会長が逮捕されたファーウエイにおいても、中国共産党の情報機関との関係が指摘される。
これは、私たち日本国民をも巻き込んだ現代の戦争、「iWar」(情報戦)である。
公的機関から排除されるファーウェイ
中国のIT大手のファーウェイ(HUAWEI,華為技術)副会長の孟晩舟・最高財務責任者(CFO)がカナダで逮捕された。孟CFOが、「米国のイランに対する経済制裁に違反した」という容疑で、米国への身柄が引き渡されると見られている。
これは、米国のトランプ政権が今年8月に成立させた「国防権限法」により、全政府機関に対し、中国共産党の情報機関と関係しているファーウェイおよびZTE(中興通訊)が製造した通信機器の使用を禁止したことと関わるとされる。
米国に続き、豪、印、ニュージーランドの各政府は、自国の高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムへのファーウェイの参入を正式に禁止した。
中国政府は「ファーウェイ・ZTE包囲網」が、米国のみならず、英・加・豪・印・ニュージーランド、EU諸国に波及し、日本政府も、名指しは避けたものの各省府省庁など公的機関からの両製品を排除する方針を固めた( 12月7日付読売新聞)。
この政府方針を承け、駐日中国大使館は、当該措置を実施すれば、「中日の経済協力のためにならない。強烈な反対を表明する」と報道官声明を発表した。声明は大使館サイトに掲載され、「2社製品は日本の利用者から好評を得ており、中国の法は、盗聴やスパイ装置を仕込む権限を与えていない」と主張する。
こうした中国の主張を真に受け「大手IT企業の排除」は、第2次世界大戦の遠因ともなった「ブロック経済」の再現と見る向きもあるかもしれない。その流れの中に米中の貿易戦争があると見るのは安易すぎる。
中国による明確な諜報戦略を見極ろ!
これまでも、IBMから買収したパソコン事業によるパソコンの製造販売を行っている「レノボ」などは、欧米軍事・警察関係者の間では「使用は御法度」というのが半ば「常識」となっていた。いわゆる「バックドア」つまり「裏口から」の外部からの遠隔操作機能が予め仕込まれていると言われていたからだ。
それに加え、PCやスマートフォンなどの文字入力システム「IME(インプットメソッド)」ソフトである百度(バイドゥ)の日本語IMEをインストール(「バンドルソフト」、つまり無料ソフトなどをインストールする際に同時にインストールされる仕組み)したパソコンから、企業から文字入力データが漏洩した事件が問題となったことがある。
つまりこれは「一企業の産業スパイ」の次元ではなく、国家的なプロジェクトによる明確な諜報戦略と見なければならない。
そして、日本は特定秘密保護法は成立したが、肝心の外国からのスパイを取り締まる法律が存在しせずスパイ天国であることは変わっていない。その弱点を突いてくるのが、侵略者の視点だ。
これは現代の最先端の「情報戦」である
中国政府が自国大手企業の製品を公的機関から排除するという日本政府の方針を承けて、報道官による異例の声明発表は、「日中融和ムード」に水を差す暴挙として揺さぶりをかけようとしているのだ。
日本では、米政府のように販売や所持まで禁止という措置は避けた形だ。だが、米政府が「ファーウェイ、ZTE2社製品を使用する国や企業とは取引しない」と決定したとなると、携帯電話大手のNTTドコモやソフトバンクでは、基地局にファーウェイ製品を使用しているものが存在するため、米国に電話が繫がらなくなる事態も想定される。
中国の2大私企業の問題をなぜ執拗に排除するのか、との観点で見てはならない。つまり米ワシントンタイムズ紙コラムニスト、ビル・ガーツ氏が主張するように、これは現代の最先端の「iWar」(情報戦)と見なければならない。だからファーウェイとZTEは単なる私企業ではなく、国家資本主義による国策企業、もっと言えば「全世界に張り巡らされた巨大な諜報機関」と見なさなければならない、ということだ。
少なくとも、現在の米国はそのような認識と見るべきである。今なお各所にファーウェイのパソコンやスマートフォンのCMが流れ、広告が街に溢れている。日本社会は何と安穏とした「平和ボケ」に陥っていることだろうか。
思想新聞「文化共産主義に警戒を」12月15日号より(掲載のニュースは本紙にて)
12月15日号 米中首脳会談、中国を「圧倒」した米国/ 秋田で安保講演会 100人結集/ 主張「新防衛大網で抑止力を高めよ」 etc