少子化対策の中核は家庭再建運動だ
2013年5月20日
総務省は5月4日、全国の15歳未満の「子ども人口」が前年より15万人減って1649万人となり、統計がある1950年以降の最低を更新したと発表した。
総人口に占める子どもの割合は1950年に3分の1を超えていたが、今回の発表では12.9%だった。世界的には、米国が19.6%、フランスが18.6%、中国が16.5%、韓国が15.6%で、日本は最低水準だ。
少子化は日本社会に多くの問題を引き起こす。その筆頭が社会保障制度の崩壊である。
現在の社会保障(特に厚生年金)は、将来納税者と所得が増えつづけることを前提としてつくられているため、少子化が進めば破たんする構造だ。
1995年には1人の年金受給者を約5人が支えていたが、2000年には約4人、2010年には2.8人、そして2020年には2.3人になるという(厚生省推計)。
経済全体への打撃も深刻だ。1995年には8700万人いた労働者が、2020年には7500万人程度に減少するという。労働人口とともに消費人口が減少するから日本の経済規模は著しく縮小することになる。
少子化のペースがこのまま続けば、日本の人口は2100年には今の約半分の6000万人になるという推計もある。
政府は2003年に少子化対策担当大臣を新設し、少子化社会対策基本法を成立させたが、実際は十分な効果をあげられていない。人口を維持できる出生率は2.07だが、厚労省の発表では2011年にはこれを大幅に下回る1.39となった。
世帯構成では、これまで一番多かった「夫婦と子ども」の世帯が減り続け、43%(1960年)から27%(2005年)にまで下がった。逆に「一人暮らし」は4.7%(1960年)から29.5%(2005年)に増加し、「夫婦のみ」の世帯も8.3%から19.6%に増加した。つまり、子どものいない「一人暮らし」と「夫婦のみ」の世帯が、13%から49%にまで急増したのである。
政府の対応を難しくしている原因の一つは、結婚に政府が「介入する」ことに対して否定的な声が強いからだ。基本法の制定時には、衆議院の審議過程で「女性の自己決定権の考えに逆行する」との批判も挙げられた。
政府が有効な手だてを打てずにいる中、手をこまねいていられない地方自治体は独自の施策を打ち始めている。今年1月に山形県知事に再選された吉村氏は、公約で現在の山形の出生率「1.50」を「1.70」に引き上げることを掲げた。三重県知事の鈴木氏は、少子化の危機感を共有する10県の子育て中の父親知事で「子育て同盟」を発足させた。ともに地元の若者の未婚化や晩婚化の問題に向き合い、結婚と出産を薦めている。成果が出るのはまだこれからだが、山形県では昨年の結婚数が一昨年より3%程度増えたという。
日本国憲法では、家庭に対して言及する条項が一切ない。その代わり「個人の権利」についてはことさらに強調されている。このことが政府の少子化対策を難しくしている。
また家庭科の教科書にも、家庭よりも個人が尊重される思想が随所に見られる。以下は、開隆堂の教科書「家庭総合」の一節だ。
「日本は諸外国に比べて婚姻率が高いが、近年、結婚観は男女や個人による差が大きくなっている。平均初婚年齢は年々高くなるとともに『結婚しなくてもよい』という考え方も年々増加し、結婚するもしないも一つの選択という考え方が広まっている」
こうした価値観が社会に浸透すれば非婚化、少子化が進むことは当然だ。子供が減れば、子ども同士の交流の機会が減り、過保護が助長されるなどして子どもの社会性が育まれにくくなるという問題もある。
人は家庭で生まれ、家庭で人として育っていく。結婚して親になればまた新しい家庭を築き、子供を育てながら親も人として成長する。だから人は家庭の中で成長するといっていい。国家の基本単位は、個人ではなく家庭であるべきだ。結婚や出産を奨励し、子育てしやすい環境を強化する。このような施策の壁となっている「思想」が、家庭は女性と子供を抑圧する場であるとする共産主義的考え方である。その壁を打破して、家庭を核とした社会像をはっきりと提示する。日本の少子高齢化問題を解決するにはそれ以外にない。
人民日報論文─中国の「沖縄奪取」を許すな
2013年5月15日
思想新聞5月15日号に掲載されている主張を紹介する。
尖閣諸島のみならず、沖縄全体を支配下に組み入れようとする中国の工作が活発化している。5月8日付の中国共産党機関紙「人民日報」は「馬関条約と釣魚島問題を論ずる」と題する論文を掲載し、その中で「歴史的な懸案で未解決の琉球問題を再び議論できる時が来た」とし、中国に沖縄の領有権があるかのように論じた。中国の沖縄奪取を断じて許してはならない。
論文は中国の政府系調査研究機関・中国社会科学院で中国近代史などを専門とする張海鵬研究員ら2人の連名で、「琉球は、明清両朝の時期、中国の属国だった」とし、日本が武力で併合したと主張。日本は1895年1月に尖閣諸島を領土に編入しているが、論文は日清戦争を終結させた同年4月の下関条約の調印の際、「(敗北した)清政府に琉球を再び問題にする力はなく、台湾とその付属諸島(尖閣諸島を含む)、膨湖諸島、琉球は日本に奪い去られた」と指摘した。
そのうえで1943年のカイロ宣言や、その履行を明記したポツダム宣言を日本が受諾した以上、尖閣諸島などを中国に返還するだけでなく、「未解決」の琉球の帰属を論議すべきと主張している(読売新聞5月9日付)。
呆れた妄想だ。菅官房長官が記者会見で「全く筋違い」と不快感を示したように、中国共産党の典型的な捏造論理である。日清戦争時の馬関条約では沖縄も尖閣諸島も全く論じられず、日本領土であることに一点の曇りもない。ポツダム宣言、サンフランシスコ講和条約においても同様である。だから沖縄は72年5月に本土復帰を果たした。
ところが中国共産党は秦や漢、明など封建帝国主義として否定したはずの歴代王朝の版図を持ち出し、それが現在の中国領と言わんばかりに主張しているのだ。南シナ海でもそうだ。人民解放軍機関紙「解放軍報」は2011年6月14日付に「古来からの自国領」との論説を掲載し、「秦・漢の時代から中国の民は南シナ海への航路を開発し、漁業や通商を行っていた」とし、「島嶼は唐代に中国領になった」と主張、「明代にも行政管轄の対象になり、官員を派遣して巡視させた」とした。
さらに1920年代から30年代に日本人やフランス人が不法に入り込み、大戦中には日本が占領したが、戦後、中国は軍艦を派遣し日本人を撤退させ、南シナ海の島を広東省の管轄としたと主張した。これも噴飯モノの作り話だ。
尖閣諸島も南シナ海の各諸島も、国連の海底資源報告が出された1970年代以降、中国が自国領土と主張し始めたものだ。中華帝国への“先祖返り”と言うほかない。習近平主席の「中国夢」もこの構図を描いている。冊封(中国皇帝から封爵を授かる)していた国が中国のものだとすれば、歴代王朝が冊封していた李氏朝鮮だった朝鮮半島はそっくり中国に奪取される。沖縄も15世紀から19世紀に琉球王国が明と清に冊封していたから、中国の野望の対象になっているのだ。
すでに中国の学者の間では「琉球王国時代の大部分は中国出身で、言葉も制度も中国大陸と同じだ」と強弁し、沖縄は「中国領」とする研究まで登場している(日本経済新聞10年3月10日付)。中国の中学教科書の中には清朝最盛期の版図に「中国」と書き込み、沖縄の説明に「琉球列島。1879年、日本により占領」と記述するのもある。北京大学歴史学系教授で北京市中日文化交流学会秘書等の除勇という人物に至っては日本が沖縄を領有していること自体が違法と主張する始末だ。
11年1月には香港で「世界華人保釣連盟」(保釣とは尖閣諸島の魚釣島を保護する意味)が結成され、広東省深圳市には「中華民族琉球特別自治区準備委員
会」事務所が開設されている。
消息筋によると、沖縄工作の首謀者は元駐日中国大使館商務参事官で中国商務部研究院日本問題専門家の唐浮風氏で、唐氏は新聞上やインターネットで「日本は沖縄を不法占拠した」とする「偽情報」を発信し続けている。人民日報系の「環球時報は10年に「中国の琉球は古来よりわが国の領土であり一時的に日本に占領された」という唐氏の署名記事を掲載した。07年9月の歴史教科書検定意見撤回を求める県民大会」も「琉球独立」のための大会として宣伝している。
産経新聞は、「中国中央テレビなど国営メディアは最近、学識経験者の声として“沖縄領有論”を相次ぎ報じている。『釣魚島(魚釣島のこと)の次は琉球だ』との沖縄併呑工作が、民間勢や学術界を総動員して水面下で始まったとみてよさそうだ」と警告している(5月3日付)。
こういう一連の流れの中で今回の人民日報の論文掲載があるのだ。国民は結束して中国の工作を粉砕しなければならない。
政権基盤の弱い朴大統領の発言に注意せよ
2013年5月11日
韓国の朴槿恵大統領は7日、オバマ米大統領と初めて会談した。
北朝鮮問題に関しては、国際規範順守と非核化を粘り強く求めていくことで両者が一致した。会談後の記者会見で朴氏は、「北の脅迫と挑発を黙認することはない」とも述べた。
朴氏は4月、北が開城工業団地を閉鎖したことで多額の損失が生じ、「非核化」抜きに対話に応じようとした経緯がある。日米が北に対して強い態度で臨んでいる中、事実上韓国だけが「根負け」し、対話に前のめりになったのだ。
その後、米韓合同演習が終わり、北は日本海側に展開していた中距離弾道ミサイル「ムスダン」を撤去した。中国が初めて北に対して独自の経済制裁を行ったことも影響したと言う。北による脅威が減じられたことにより、朴氏が米国と歩調を合わせて強いメッセージを発信しやすくなったことは間違いない。
朴氏の韓国内における政権基盤は決して盤石ではない。
朴氏が大統領選で国民から最も求められたのは、行き詰った韓国経済を何としてでも打開してほしいということだった。そのために朴氏が大統領選で訴えたのは、「創造経済と経済民主化による経済復興」だ。財閥や大企業偏重の経済構造を変革しようとする朴氏を多くの国民が支持し、朴氏は大統領選に勝利した。
韓国経済はここ数年、すでに成長の限界に直面している。これまで韓国は、日本などの先進経済国を政府が主導して追撃をすることによって飛躍してきた。しかし今や韓国は、より創造性を発揮して競争を勝ち抜かなければならない段階にきている。ところが実際は、経済発展の過程で財閥や大企業に経済力が集中しすぎたことによって、硬直してしまっているのだ。
財閥グループは莫大な経済力によって政治的にも大きな力を得るようになった。現代やサムスンの会長が犯罪で起訴されたが、政府が「国家経済に貢献したことを勘案」して特別赦免になったのがいい例だ。
市場は「均等な経済活動の場」であってこそ新たな創意と革新が生まれ、高い競争力を生み出していく。しかしこのような「傾いた経済活動の場」では、経済は躍動性を喪失する。
だからこそ朴政権は、「経済民主化」のための政策を打ち出した。当然財界は猛反発し、「企業の経営活動を委縮させ、低迷した経済をさらに厳しくさせる」と批判した。
そして韓国政府はその後3月に、「経済非常事態」を宣布した。消費と投資・輸出がすべて後退し、失業率も増え、今年の成長率予測値が大幅に下方修正されたのだ。「経済民主化」を訴えた大統領選当時の雰囲気は影をひそめ、政府が大々的に市場に介入せざるを得なくなってしまった。朴氏の「経済民主化」は失敗に終わったのだ。
財界関係者は「政権スタート後に現実との乖離を悟ったようだ」と言い、「(政府の方針は)混乱を与えている」と批判している。
思うように韓国経済を立ち直らせることができない朴政権は、政権基盤が弱く苦心している。そこへきて北の挑発である。経済再生の取り組みに冷や水を浴びせられた朴政権は、前述の「根負け」発言に至った。
その後北の脅威が減じたため、朴氏はオバマ氏に北に対する共闘姿勢を示すことができたが、朴氏の政権基盤の不安定さは何も変わっていない。その象徴が首脳会談における日本批判だ。
会談でオバマ氏が日米韓の協調の必要性に触れると、朴氏は「東北アジア地域の平和のためには、日本が正しい歴史認識を持たなければいけない」と述べた。米国は一貫して、「日韓の歴史認識戦争には一切関与しない」という立場をとり、かつ東アジアの安定のためには日韓が協力体制をとるべきだと主張している。朴氏がこのことを知らないはずがない。それでもなおこの発言をしたのは、韓国内の政権基盤がいかに弱体化しているかを物語っているといっていい。
韓国では政権基盤が弱まると、大統領が反日的発言をする。それは朴政権においても何ら変わりはない。
東アジアの安全保障においては日韓の協力関係は不可欠である。日本側としては、こうした韓国内の情勢を踏まえつつ、注意深い対応が必要である。
2013年5月10日
中国が二年ぶりに発表した国防自書(4月15日)の中で、2011年の自書にあった核兵器の「先制不使用」の記述を削除し、さらに「海洋強国の建設は国家の重要な発展戦略であり、国家海洋権益を断固として守ることが人民解放軍の重要な職責だ」と強調しつつ、初めて沖縄県・尖閣諸島について記述した。そして4月26日、外務省の副報道局長が定例記者会見において、沖縄県・尖閣諸島について「中国の核心的利益」であると明言。これまで人民日報の社説等での記述はあったが政府の公式発言は初めてであった。
中国はこれまで自国の軍事力は防衛的なものであると繰り返してきた。その根拠は、毛沢東が主導した「積極防衛」戦略に基づくものである。その意味について太田文雄氏(元防衛大学教授)は、「全土挙げて戦う反侵略全面戦争では後発制人(攻撃を受けてから反撃)を原則とし、戦略上は防御的であるものの、戦闘地域、戦争目的が限定される局地戦争のような、戦略レベルより一段下位の戦役レベルでは先制攻撃を含む積極的な攻勢を是としている」ものであると説明している。(「中国の海洋戦略にどう対処すべきか」)
安倍首相は1月5日、尖閣諸島周辺での領域警備で対抗措置を強化することを指示した。昨年12月13日、尖閣諸島上空で中国国家海洋局所属の航空機(Y-12)が領空侵犯したことに対する措置であった。その内容は、領空侵犯機が無線警告に従わない場合、空自戦闘機が曳光弾(えいこうだん)で警告射撃を行い、海軍艦艇が領海付近に進出してくれば、それまで28キロの距離を置いていた海自艦艇が3キロまで接近することに改めたのである。
そして、中国海軍艦艇からの火器管制レーダー照射事件が起きた。尖閣諸島の北約180キロの公海でのことである。1月19日、護衛艦「おおなみ」搭載のヘリ「SH60K」に中国海軍フリゲート艦「ジャンカイⅠ級」からレーダーが照射され、警戒音によってそれを感知した。10分間も続いたという。さらに1月30日、護衛艦「ゆうだち」にフリゲート艦「シャンウエーⅡ型」の火器管制レーダー(射撃用レーダー)が照射され、「ゆうだち」は回避行動をとっている。自衛戦闘発動に該当する事態であったのだ。
この危険極まりない挑発行動が中国共産党中央による指示であったことが、4月23日に判明したと産経新聞が報じた(4月26日)。複数の日中関係筋が明らかにしたというその内容は、党中央から威嚇手段の検討を指示された中央軍事委員会が、レーダー照射に加え、「火砲指向」も提示したという。それは1月14日であった。海上自衛隊側は、レーダー照射につづき火砲も向けられれば中国側の攻撃意図を認定せざるを得ず、一触即発の事態になる恐れがあったという。中国は衝突を望んでいる。それが領土問題の存在を世界に知らしめ、日本に妥協を迫るチャンスとなるとみているのだ。
中国の対日攻勢レベルが高くなったのは、昨年9月の政府による尖閣国有化以後であるとの指摘もある。(麻生幾 文春5月号「日米『尖閣共同作戦』極秘シナリオ」)
米太平洋軍関係者からの情報によれば、中国指導部・中央軍事委員会が昨年9月半ばに包括的な重要命令を出したという。その内容は、「尖閣諸島においてはできうる限り中国のプレゼンスを示し、領土奪還に向けて躊躇なく行動せよ」というもの。海自側へのレーダー照射事件は起こるべくして起こったのだ。さらに日米「尖閣共同作戦」=離島奪還作戦計画が進行中であるという。これは陸上自衛隊が参加する、「初めて本気で、闘うための作戦計画」である。陸上自衛隊、西部方面普通科連隊(長崎県佐世保市相浦に駐屯)がその任に当たり、ファーストイン(最初の投入)される部隊となる計画である。日本側が血を流す覚悟を示して米側との統合作戦を遂行しようとするものなのである。
まず第一に、情報戦において中国を凌駕しなければならない。領海侵犯があっても外務省の事務方が口頭で抗議する程度ではいけない。中国の態勢強化に合わせて日本も強化しなければ、さらに増長して不測の事態が発生する蓋然性も高くなりかねない。海上保安庁は、現場で中国側の行動や無線等によるやりとりを遂一、記録して証拠として出せるようにしてあるという。記録した証拠をもっと国際社会に公表するべきである。
第二に、日本の領土は日本が守るという覚悟が必要である。日米安保体制が「米国が日本を防衛する」ことを意味するというのは、誤解である。日米安保条約の本当の意味は、自衛隊と米軍が一緒に日本を防衛することにある。ワシントンには「日本は米軍だけに戦わせるのでは」という疑念の声もある。
第三に、特殊部隊等による尖閣上陸が可能と思わせるような「隙」を作らず備える体制をつくらなければならない。(香田洋二 元自衛艦隊司令官 4月2日 読売新聞)
海上保安庁は、大半の巡視船に対空レーダーを備えていない。潜水艦などへの水中警戒能力も備えていない。対空、対潜水艦の監視面で自衛隊が全面的に海保をささえるなどして、不意を突かれない穴のない警戒監視態勢をとることが不可欠である。万一上陸されたときでも間髪入れず展開できるよう、沖縄などに緊急対応の実力部隊を待機させることも必要である。自衛隊が米軍を支援し、潜水艦やミサイルの脅威から米軍を防御できるような能力(集団的自衛権の行使)を備えれば、中国は動けない。
北の恫喝外交には日米韓の連携で対応せよ
2013年5月2日
韓国で米韓両軍が2か月にわたり行ってきた合同軍事演習「フォーイーグル」が、4月30日に終わった。「フォーイーグル」とは、朝鮮半島有事を想定した米韓の総合軍事演習である。
今回の演習の特徴は、強硬姿勢を取る北朝鮮に対し、米国が徹底した対決姿勢を示してきたことにある。北のミサイル発射による威嚇をけん制するために、米軍は最先端のミサイル防衛システムを配備した。さらに3月末にはステルス戦闘機F22も演習に加わった。
米国が示しているのは、「北のミサイル攻撃による恐喝に米国は絶対に屈しない。それどころか、もし北が攻撃してくれば、ステルス戦闘機で北の中枢を攻撃する」ということなのだ。
北が強硬路線を取り続ける理由の一つは、米国との交渉を実現し、「北を攻撃しない」という確約(和平条約)をとりつけることにある。裏返して言えば、それだけ北が米国を恐れているのである。
実は米国は10年前、この演習で北に対する「秘密訓練」を行ったという。
レーダーに捕捉されないステルス戦闘機であるF22を密かに平壌上空に送り込み、金正日が住む宮殿をめがけて急降下や急上昇を繰り返させ、爆音と振動を響き渡らせて威嚇したというのだ。米軍事専門誌である「エアフォース・タイムズ」は、このときのパイロットの証言として、「私にとって最も記憶に残る任務は北朝鮮の領空をかき回したことだ」という内容を掲載している。もしこれが事実であれば、北はかなりの国家予算を軍事費につぎ込みながらも、平壌上空に飛来する一機の戦闘機すら撃ち落とせなかったということになる。この「秘密訓練」をスクープした軍事専門家の恵谷治氏は、「(このとき)金総書記は本当の恐怖というものを体験したはずだ」と語っている。
今回の演習でF22は、3月31日に参加し、4月3日には帰還した。恵谷氏は、F22が韓国にいた4日間に、「平壌に侵入しただろう」と言っている。平壌では4月1日、最高人民会議が開かれていた。米国が北に対して心理戦を仕掛けるには絶好の機会だったのだ。
さらにF22の到着3日前には、同じくステルス戦闘機であるB2が演習に参加した。B2は核爆弾を16個搭載可能であり、「核には核を」という米国の強い姿勢を見せつけたのだ。
当然北は、これを非常に恐れた。その恐怖心が、強硬発言となって帰ってくる。金正恩は、首都ワシントンを含む「戦略軍米国本土攻撃計画」を発表した。また、ミサイル部隊に「待機命令」が発せられた。そして、朝鮮戦争の「休戦状態」を自ら破棄する「南北は戦時状態」との特別声明が出されることになったのだった。
合同軍事演習がいよいよ終わり、金正恩はさぞかし安心しているに違いない。韓国メディアは一斉に、「朝鮮半島の緊張が和らぐとの期待感が強まる」と伝えている。
しかしここで、問題が一つ残されている。韓国が北への対話に前のめりになりつつあるのだ。
韓国では朴新政権になり、長引く経済の低迷の打開を期待されている。しかし北が強硬路線を続けたことにより、貿易を中心とする韓国経済は冷や水を浴びせられた。
米ゼネラル・モーターズ(GM)は韓国に5か所の生産拠点をもっているが、ダニエル・アカーソン会長は4月4日、「朝鮮半島での緊張が高まれば、生産拠点の移転を検討することがあり得る」と発言した。さらに開城工業団地の閉鎖である。韓国経済への打撃は深刻になり、ついに4月11日、韓国は北への対話を呼びかけた。事実上韓国政府は、北に「根負け」したのだった。
米国と日本は、北との対話には当然「核の放棄」を大前提にしている。しかしこの大前提も、韓国が対話に前のめりになってしまえば効果が薄らいでしまう。弱みを握られた韓国は、「核の放棄」に言及せずに事態を打開しようとするだろう。北は「韓国に対しては脅迫が通じる」と思い、ますます調子に乗ることになる。そうなれば、日本がどれだけ制裁を行い、毅然とした態度を示しても、意味をなさなくなってしまうのだ。
韓国が北との対話を成功させ、一時的に経済問題を解決しても、北が核保有国になってしまえば東アジアの安全保障は重大な危機にさらされることになる。だから日本は、米韓両国と緊密な連携をとらなければならない。特に韓国に対しては、両国の安全保障という共通目的のために、高い壁を乗り越えて、積極的な関係の構築を目指すべきである。
中国国防白書─習近平の「強軍路線」に備えよ
2013年5月1日
思想新聞5月1日号に掲載されている主張を紹介する。
危険過ぎる習政権の強軍路線─、一般紙である読売新聞(4月22日付)ですら社説にこんなタイトルを掲げざるを得なかった。中国政府はさきほど、「中国武装力の多様化運用」と題する国防白書を発表したが、その中身たるや軍国主義・覇権主義を露わにするもので、世界中を驚かせた。しかも矛先は日本に向けられている。わが国は領土・領海を守る万全の備えをしなければならない。
中国国防白書は2年ぶり8回目の発行で、中心主題を「海洋強国化」に置いたのが最大の特徴である。習近平政権が「強軍路線」を推進していく姿勢を改めて強調したとメディアは指摘している。
報道によると、白書は「海洋強国の建設は国家の重要な発展戦略であり、国家洋権益の保護は人民解放軍の重要な職責だ」と明記。また「一部の隣国が中国の領土主権、海洋権益に及ぶ問題を複雑化、拡大化する行動を取り、日本は釣魚島(日本名・尖閣諸島)問題で騒ぎを起こしている」と、わが国を名指しで非難。「一部の国々が地域の緊張をつくり出している」と米国も暗に批判し、日米両国への敵愾心をみなぎらせている。
さらに白書は海軍の任務として「海上取り締まりや漁業、石油・天然ガス開発などに安全保障を提供する」とし、「国家海洋局や農業省漁政部門と連携し、軍と警察、民間が一体となって防衛する仕組みや管轄海域内の航行の安全を保障する体系を構築する」と強調している。
白書では中国の陸軍機動作戦部隊の現有兵力は85万人、海軍は23万5000人、空軍は39万8000人。武装力運用の基本原則として①国家主権、安全、領土の保護②情報作戦能力の向上と軍事闘争準備の深化③災害救援やテロなどに対する安全保障警戒任務④国連平和維持活動(PKO)など国際協力と義務の履行─など5項目を列挙している。
中国当局は今回の白書について陸海空軍など兵員数の内訳を公開したと自賛しているが、「公開」は一部にすぎず、額面どおり受け取るわけにはいかな
い。専門家は、実勢は公表分の2倍以上と見ている。
とりわけ核戦力を担う第2砲兵(戦略ミサイル部隊)や武装警察部隊の規模などは一切明らかにせず、兵員生活費や装備費など国防費の内訳に関する記述もなくなった。戦略ミサイル部隊は「最も透明性が低い組織」(米議会「米中経済・安全保障再検討委員会」報告書)で、隠すのはやましい意図があるからに違いない。
しかも白書には核兵器を相手より先に使用しないとする「先制不使用」政策が明記されていなかった。これまで中国は5大核保有国の中で率先して核先制不使用を採っているとしていたが、政策変更を示唆しているとすれば看過できない。
中国の国防費は天安門事件があった1989年以来、実績比で25年連続の2ケタ増。わが国の防衛費の2.3倍、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国の総軍事費の約4倍にのぼる。過去5年間で2倍、過去24年間で30倍も増強、習近平新体制は超軍拡路線に拍車を掛ける姿勢を露わにしている。
習近平総書記は昨年11月、第18回党大会後に開いた中央軍事委拡大会議で「各種の軍事闘争任務を断固として完成させ、国家主権と安全を最優先しなければならない」と述べ、12月には広東省深圳市で軍人や共産党関係者を集めて「重要演説」を行い、党独裁強化を宣言した。
こうした方針を受けて軍総参謀部は1月、全軍に「2013年の軍事訓練に関する指示」を出し、その中で「戦争準備をしっかりと行い、実戦に対応できるよう部隊の訓練の困難度を高め、厳しく行うこと」と、戦争準備まで命じた(解放軍報1月14日付)。
さらに習近平総書記は2月、甘粛省・蘭州軍区を視察し、「部隊は『招集されれば直ちに駆け付け、駆け付ければ戦争できる状態にし、戦えば必ず勝利する』よう確保しろ」と指示(解放軍報2月7日付)。一方、呉勝利・海軍司令官は2月、上海で行われた先端装備を搭載する最新鋭艦「052型」の就役式で「海洋権益を守る戦いで、『常勝』部隊となれ」と述べた。
新たに建造した空母「遼寧」には次世代ステルス戦闘機「J(繊)31」を搭載予定で訓練飛行を開始、これとは別の空母建造にも着手。20年をめどとする原子力空母の建造も計画中だ。ロシアから新世代潜水艦「ラーダ級(輸出版名・アムール級)」を4隻購入し、最新鋭戦闘機スホイ35、も24機購入する。
こうした中国の海洋膨張策が日本をターゲットにしようとしていることを想起しておかねばならない。防衛態勢の構築を急
ぐべきだ。















