誇れる「道義国家」の新地平を拓け

 

 安倍晋三首相が辞意を表明した。第二次安倍内閣は7年8カ月で幕を閉じることになる。だが、安倍首相が提示し続けてきた「憲法改正」は決して色褪せていない

 

 それを単なる標語に終わらせるわけにはいかない。誰が政権を引き継いでも実現せねばならない課題である。

 

 東西冷戦、ポスト冷戦時代を経て世界が大きく揺らいでいる。その激動の中で日本の未来を切り開くには「戦後レジーム」から脱却せねばならない。その一里塚となるのが憲法改正である。安倍晋三氏は戦後体制で立ち行かなくなっている日本の位相を冷静かつ客観的に捉え、そこから憲法改正を宿願とした。

 現下の内外情勢は、外にあっては敗戦以来わが国を縛ってきた「贖罪外交」が通用せず、従来の米国依存の「日米同盟」では祖国を守れないことが浮き彫りになってきた。

 

 内にあっては国民の精神基盤が溶解し、個人至上主義が闊歩(かっぽ)するようになり、それによって家族が崩壊、1人暮らし世帯が多数を占め、祖父母・父母・子からなる伝統的3世代家族が激減し、少子高齢社会に陥り、ついには人口減少社会に突入したのである。

 

 まさに亡国の危機に瀕しているのが、わが国の実相である。こういう状況をもたらしてきたのは現行憲法による「戦後体制」にほかならない。

 

 だから憲法を刷新しなければならないのである。

 

9条改正は日本生存の必須条件

 

 第1に、憲法第2章「戦争の放棄」すなわち9条をもってしては、もはや国際社会で生き残ることが不可能である。

 

 9条は国家として常識である国防軍の存在と国防義務を明示せず、国際法(国連憲章条約51条)が認める集団的自衛権行使を違憲とするような根拠を残し(実際、政府解釈はそうする)、それが足枷になって国際貢献や日米同盟に齟齬(そご)をきたしている。

 これでは厳しい国際を切り拓くことはできない。

 

 そういう中にあって安倍首相は、

①外交・安全保障の司令塔を首相官邸に設け、内外の情報を集約して迅速な意思決定を行う国家安全保障会議(日本版NSC)を創設。

②防衛・外交機密を守る特定秘密保護法、安保孤立主義の武器輸出三原則を放棄した「防衛装備移転三原則」

③安全保障環境の悪化に備えるため憲法解釈を見直し、集団的自衛権の限定行使を容認する安全保障関連法を制定。

④国際テロから国民を守る「テロ等準備罪」を柱とする改正組織犯罪処罰法を成立させた。

 

 また日米同盟をより強固にするだけでなく、日米豪印の連携を強化して太平洋、インド洋の自由国家連合の形成を目指し、「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を推進し、世界中を駆け回り、日本の存在感を示した。

 

 いずれも戦後日本の課題とされながら、共産党をはじめとする売国野党や左翼メディアに邪魔され、放置されてきたものばかりである。その意味で一連の安保・外交政策の推進は安倍政権の大いなる成果である。

 

 だが、共産中国の覇権野望が露わになった今日、自由と民主主義を共有する「自由陣営」の再構築が一層、急がれるのである。

 

 その点、安倍政権には中国の習近平国家主席を国賓として招こうとするなど不明瞭な態度が見受けられた。自民党内の親中グループを闊歩させている側面もある。こうした無分別が日本の進路を危うくさせ、自由国家連合の構築をおぼつかなくさせる。これが自民党の弱点であり、次期政権の課題となる。

 

 さらに憲法には自衛隊が明記されておらず、スタンダードな集団的自衛権行使にも足枷がはめられている。

 

 これでは普通の国とは言えない。こういう中途半端な体制では中国や北朝鮮の軍事脅威から国民を守ることができない

 

 9条改正は焦眉の急なのである。

 

伝統的な家族を軽んじ少子招く

 

 また現行憲法の第2章「国民権利及び義務」は権利ばかりをうたい、しかも「すべて国民は、個人として尊重される」(13条)と、ことさら個人を強調し、悪しき個人的利己主義を煽ってきた。

 これとは対照的に家族条項を設けず、わが国の伝統的家族主義の抹殺を図らんとしてきた。

 

 それが少子化の最大原因だと知るべきである。

 

 その結果、「人権栄えて道徳滅ぶ」(故・勝田吉太郎氏)といった恐るべき人権至上社会を呈するようになり、互譲の精神や他人に対する思いやりや為に生きる、愛の心を失わせてきた。このことを今や誰も言わなくなった。これこそ亡国の音おんと思うべきである。

 

 自民党の先人たちは、現行憲法による「戦後体制」がこうした国家的危機を招来させることを予見していたことを想起すべきである。

 

 すなわち1955(昭和30)年の保守合同による自民党結成に当たって立党の原点を明示した。自主憲法を制定して日本らしい国柄を取り戻し、独立国家に相応しい国家体制を構築すること、そして国民道義を確立して内外に誇れる国を創ることを誓ったのである。

 

 自民党総裁選に当たってはこの立党の原点を誰が継承しているのかを見定め、「道義国家」の新地平を拓かねばならない。

 

 

 

 こちらも併せてご覧下さい。

①改憲で「令和」の時代を切り拓こう

②9条改正こそ平和を守る方策だ

 

 

 

思想新聞【主張】誇れる「道義国家」の新地平を拓け 9月15日号より(掲載のニュースは本紙にて)

9月15日号 中、印・南シナ海で軍事行動 広がる米国・EU・台湾の連携 / 佐世保安保フォーラム開催 渡辺顧問が内外情勢を解説/ 主張 誇れる「道義国家」の新地平を拓け  機関紙「思想新聞」へのお問い合わせ・購読はこちらへ

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