南青山児童相談所 反対運動の黒幕は「不動産会社」だった

反対運動が起こった「南青山児童相談所」の建設予定地(写真はTwitterより)

 

セレブの街 青山に児童相談所ができることの是非が話題になったが・・・

 

  高級ブランドのブティックや高級マンションが建ち並ぶ「セレブの街」。

    東京都心部でも屈指の「一等地」と目される港区南青山に、区が児童相談所建設を予定しているが、12月半ばに開かれた住民説明会で「反対」の声が続出し、ワイドショーなどでその模様が報じられた。

   反対住民の意見とは、「この土地の物価と学業レベルは高い。児童相談所の子はギャップを感じ、辛い思いをするのではないか」「青山のブランドイメージや土地の価値を下げないでほしい」「なぜ青山につくる必要がある?  田町もあるはず」などといった声だ。

 

   「児相」がいかにも「NIMBY施設」(Not In MyBack -Yardの頭文字から取られた「施設の必要性は認めるが自分の裏庭=居住地に建てるのは反対」の意味で、「迷惑施設」「嫌悪施設」とも)との理屈だが、ここには住民エゴもそうだが、児童相談所への誤解や偏見があると見るべきだ。数年前に「子供の声がうるさいから保育園建設に反対」という社会問題もあった。

 

   児童相談所と言えば、昨年の東京・目黒区で5歳の船戸結愛ちゃんが涙を誘う「反省文」の末虐待死した事件も発覚した。

   このように、虐待など家族が機能不全で子供の成育に十分な環境ではない「かわいそうな家庭」に通報などで「介入」する「クレーム処理機関」のように思われがちだ。そこから「不良など触法少年がたむろする街になるのでは」という危惧も住民から出てくるのだろう。

 

ワイドショーが取り上げた反対運動は地元不動産会社の「やらせ」

   

   だが、近隣に児相があると本当に「不動産価値」は下落するのか。

   住宅評論家の櫻井幸雄氏によると、南青山で以前葬儀場建設に住民が猛反対したが不動産相場に影響は出なかった(「ヤフーニュース」12月19日付)。そして「地価の高い南青山に?」という問いは、国有地売却によるもので、公共施設のため市場価格の半額程度の72億円で港区が購入したが、3200㎡もの広大な土地を他に求めれば民間なら同程度の額という(同氏)。

   だから高額物件をわざわざ買ったのではなく国が売りに出したのに手を挙げただけなのだ。

 

   実は「青山の街を守る会」なる会を立ち上げ、署名など積極的に反対活動したのは、当地に事務所のある不動産業「グリーンシード」と判明。不動産会社による利権がらみの反対運動ではないかと指摘されている。地元住民は本当に反対しているのか。作家の川奈まり子氏はツイッターで、「都営住宅や子育て支援施設を受け容れ済みで先進的な学童保育を実践している子育て世帯が多い地域。反対する理由などない」と発信している。

 

子ども家庭支援センターとの複合施設であり、地元父兄は歓迎だ

 

   そしてほとんど指摘されない重要なことは、港区が児相専用施設ではなく、児相の他に「子ども家庭支援センター」機能をもつ複合施設として建設を予定しているということだ。

   児相はこれまで長らく都道府県管轄の行政機関で、都道府県及び政令指定都市への設置が義務づけられ、中核市と政令指定都市特別区に設置できる施設である。ところが2004年の児童福祉法の改正で、市町村が児童家庭相談に応じることを業務とし、従来から児相はより専門的になり難しい案件に対応するという「棲み分け」が法的に定められた。

   このため市町村に身近な相談窓口として設置されたのが「子ども家庭支援センター」である。つまり、児相職員はよりプロ志向で市町村の「子ども家庭支援センター」の支援を行うという位置づけだ。

 

   児童虐待による「通報」は児相が受け持っている。介護福祉業界で常識とされているのは、1件の重大な事故に至るには29件の軽微な事故があり、その背景に300もの「ヒヤリ・ハット」する事案がある(「ハインリヒの法則」)という。このハインリヒの法則に従えば、1件通報される背後に約30のやや軽い問題が横たわり、300のシグナルがあるとの見立てになる。

    だから重大事案になる前に、市町村の「子ども家庭支援センター」が対応することで家庭や育児に関するキメ細かな悩み相談に応じられれば、痛ましい児童虐待を予防もできる。むしろ、共働きの家庭であれば、保育施設ばかりでなく「子ども家庭支援センター」が力強い味方になる。川奈氏でなくとも子育て世代は歓迎するはずなのである。

 

思想新聞「文化共産主義に警戒を」1月15日号より掲載のニュースは本紙にて)

1月15日号 亥年選挙、自民は鬼門突破を / 八王子で安保セミナー / 主張「改憲で安寧な新時代を拓こう」 etc

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