金委員長の電撃訪中、国際的包囲網を崩す狙いか

写真:金委員長の電撃訪中の報道

 北朝鮮の金正恩委員長が3月25日~28日まで、中国を訪れました。金委員長の外国訪問は2011年に最高指導者となって以来、初めてのことでした。

 北朝鮮は中国と事実上の同盟関係を結んでいますが、実際には「千年の宿敵」と表現されるほどの厳しい対立関係にあります。

 特に2013年に金委員長の叔父でもある親中派の張成沢氏が処刑されたことで、中朝関係はこれまでになく冷え込んだ状態にありました。

 ところが今回の訪中で、金委員長は中国との友好関係を繰り返し強調しました。習近平国家主席との会談では、「初の外国訪問が中国の首都となったのは当然で、(訪中は)朝中親善を引き継ぐ私の崇高な義務だ」とも述べました。また、中国の新華社通信によると、金委員長は朝鮮半島の非核化に対する強い決意を表明したといいます。

 しかしこれらの発言を文字通りに捉えるのは時期尚早であるといえるでしょう。金委員長は4月に韓国の文在寅大統領と、5月にはトランプ米大統領と会談する予定です。今回の訪中はこれらの会談を前に、北朝鮮の立場を優位に立たせるためのものと考えるべきです。

 また中国は、北朝鮮の貿易額の90%を占める貿易相手国でした。中国との関係改善により、厳しい経済制裁包囲網を崩す狙いもあるでしょう。

 日本としては極めて難しい立場に立たされているといえます。各国が北朝鮮の完全な非核化に向けた取り組みを進めているのなら良いのですが、必ずしもそうとはいえないからです。仮に国際社会の足並みが崩され、日本以外の各国が妥協的な態度を示せば、日本だけが核ミサイル兵器の脅威の対象となることもありえます。また北朝鮮の真の狙いが時間稼ぎであれば、核ミサイル兵器の完成によって事態はさらに複雑化することになるでしょう。

 ただしこうした情勢の急激な変化は、北朝鮮が追い詰められている証拠でもあります。日本はアメリカ、韓国と緊密な連携をとり、朝鮮半島の完全な非核化に向けて強い態度で取り組むべきです。

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