英イーム村の教訓と新型コロナ禍

  
 中国・武漢発の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的蔓延)の影響は、もはや近年のコロナウイルス、SARS(重症呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)を遥かに超えるケタ違いの被害をもたらし現在も進行中である。

 

 感染拡大を封じ込めるにはどうすべきか。その一つの教訓を示す歴史的事例を引用し、さらに防大校長時代に新型インフルエンザに罹患した防大生を隔離した防大校長時代のエピソードを披露したのが、2月25日のBSフジ「プライムニュース」に出演した元防衛大学校長の五百旗頭真・兵庫県立大理事長だった。

 

 その歴史的事例とは、英国・中部地方の「ペストの村」として知られるイーム村での出来事だった(ブログ「Peak and Pottery Tours」など参照)。17世紀の英国は、ピューリタン革命と名誉革命という2つの市民革命が起こった激動の時期で、1665~66年に首都ロンドンを中心に「黒死病」と呼ばれたペストのパンデミックが起こった。

 

感染を専門に治療する「ペスト医」 の服装。クチバシ状マスクの先に香辛料を入れ「防護」したという。

 

 当時人口350人のイーム村で仕立屋の助手だった「ジョージ」が65年9月に、ロンドンから届いた小包を開けると、悪臭を放ち異様に湿った布の束だった。布地を広げ暖炉で乾かしていると1週間で急死。布地に潜んでいたノミが原因と見られる。仕立屋の子供たちをはじめ彼に接触した人々が次々に死んでいった。

 

 事の顛末を聞いた村の世話役でもあった地域の牧師モンペッソンとピューリタン司祭のスタンリーという2人の聖職者が、事態の深刻さを理解し、翌年6月からペストによる犠牲者を増やさないために「非情」とも思える3つの「取り決め」を講じ、実践した。

 

 その取り決めとは、

 ①家族が病死した者は自分達で埋葬すること

 ②教会でなく野原で礼拝を開き、葬儀はしない 

 ③「村からは誰も出さず、誰も入れない」自発的隔離ーというものだ。

 

 ①は残酷に聞こえるが、他人がペストに感染した死体に接触する機会を減らすため。

 ②は感染者との接触を避けるため。

 ③は自分達が助かる確率が少なくなっても、近隣の村への感染を抑えるのが目的で、最大の決断だった。

 

 「取り決め」実施前に、他の村人の埋葬を助けて感染したハンコック一家では、夫と6人の子供たちを喪ったエリザベス未亡人は一人で全員を埋葬したという。また、モンペッソン牧師のキャサリン夫人も村人たちの世話をしているうちに感染して死去。

 

 こうした自発的な「村封鎖」という「取り決め」が功を奏し、66年11月にペストがほぼ収束したが、14カ月の間に260人が犠牲となり、生き残ったのはわずか80人だった。

 

 こうしたイーム村の真にキリスト教的な自己犠牲の精神からなる英断で、周囲の村への感染は免れた。

 村の英断を近隣の村もサポートし、食べ物や薬等の必要な物は近隣の村人や貴族などが届けた。救援物資は無料ではなく、大きな石に穴を穿ち村はずれに置き、コインをその穴に注いだ酢に漬けて「消毒」して置いたという。

 

 現在では村の人口は千人を超えるが、「ペスト村」としての悲劇を教訓として博物館も作られ、感染症を封じ込めた物語が今も語り継がれている。

 

イーム村の教会。死者の記録などが保存されていた。

 

 自分の身を犠牲にして夫と共に村人たちを支えた牧師夫人キャサリンを讃え、現在でも8月の最後の日曜はイーム村の彼女の墓に花を捧げる「ペストの日曜日」という行事に村人が参列するという。

 

 今般の「武漢発」コロナウイルス感染症では、武漢市当局が発生時に隠蔽を続け、「封鎖」までに都市人口が半減するほど流出させたという異様な状況が、いかにイーム村の出来事とは対照的であるかが窺える。

 

 

 思想新聞【文化共産主義の脅威】英イーム村の教訓と新型コロナ禍 4月1日号より(掲載のニュースは本紙にて)

4月1日号 【新型コロナウイルス】「発生源」めぐる米中対立が激化 イタリアの惨状、背景は親中路線 / 梶栗正義会長が熊本で講演 / 主張 「改憲・緊急事態条項で感染症を鎮めよ」

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