「男性器付き母」「妊娠する父」の出現も

「思想新聞」11月15日号から連載【共産主義「定点観測」・文化共産主義】の記事を紹介します。

  出生時の性別と異なる性別に適合させるため「性同一性障害者」が、戸籍上の性別を変更する際に、生殖機能をなくした上で外観上も性別適合させる手術などを要件とした「性同一性障害特例法」(2004年施行)規定について10月25日、最高裁大法廷は、生殖機能をなくす手術は「意思に反して体を傷つけられない自由を制約しており、手術を受けるか、戸籍上の性別変更を断念するかという過酷な二者択一を迫る」もので憲法に違反し無効、と判事15人全員が一致して判断。

  同特例法では、戸籍上性別変更ができる要件として、性同一性障害を診断できる2人以上の医師の診断が一致した上で、①18歳以上②現在婚姻していない③子がいない④生殖腺がない、又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態⑤他の性別に係る身体の性器に係る部分に近い外観を備える―がすべて該当することとなっている。

  このうち④は事実上、生殖腺除去手術(⑤の「外観形成」とも併せたのが、いわゆる「性別適合手術」)を求めているとされ、今回の判断は、④の生殖機能除去の要件のみが「違憲」とされ、変更後の性別に似た性器の外観という⑤の要件に「審理を尽くしていない」として、高裁で審理をやり直すよう差し戻しを命じた判断となったのである。

  なお、4年前の2019年に原告は異なるが最高裁小法廷で「現時点で合憲」との判断が示されていた。

最高裁判断に愕然とする性転換当事者

ネット番組「言論TV」で最高裁の判断を批判する櫻井よしこ氏

 今回の最高裁判断の報道を受け、「未施術のトランスジェンダーと称する外見は男性の人物が女性スペースに現れる」という類の投稿がSNSで見られ、厳密には「性自認」を完全に認めたわけではないと「注釈」を受ける投稿が見られた。だがLGBT権利推進派は「違憲」判断を歓迎するが、原告の立場から、④だけでは権利が認められたといかず、⑤も違憲まで争う。

  だがそもそも、性同一性障害特例法とは、出生時の性別に違和を感じた人が違う性別になりたいと、性別適合手術を受け、社会的にも新しい性別にしたい、戸籍上で性別変更を認めてとのニーズから制定された。生物学的外見ではなく「性自認」(自分が思う性別)を周囲や社会がそれと認めよの趣旨ではない。

  だから、医師の診断を受け性別適合手術を受けた性同一性障害の当事者には、現行特例法の要件規定に「合憲」判断を期待する人も少なくない。

  男性から女性になる性別適合手術を受け、戸籍上も女性になった「性同一性障害特例法を守る会」の代表を務める美山みどり氏は、櫻井よしこ氏のネット番組「言論TV」に出演。これまで「特例法」施行以来1万3千人が法的にも性転換した当事者として、「私たちは自分たちの持っている男性の性器に強い嫌悪感を持っています。ですからそれを取ることは、男性性からの解放で、自分の体に納得するための大事な事業なのです。戸籍の変更はおまけにすぎません」と語り、また「性転換の手術要件を違憲とした判断に愕然としています。私たちは男性器を取ることで周囲の人々、とりわけ女性たちに受け入れてもらったと思っています」と女性スペースに包摂される側から女性に配慮する努力を述べる一方、「男性器を持った女性の存在に普通の女性たちが抱く強い
不安感を、最高裁が全く理解せず、女性たちの不安を軽視している」とも断じた。

  そして問題は、「要件⑤」の外見はどうあれ、④の違憲判断で「特例法」が「改悪」されれば、戸籍上でも「男性器つきママ」「妊娠するパパ」が登場し社会に大混乱が生まれる可能性だ。

司法へのチェック機能強化を

 以前も問題提起したが、最高裁裁判官は総選挙と同時に国民審査に掛けられるが、裁判官の情報が国民に知らされず、形式的な承認儀礼になりさがった。

 これについて櫻井よしこ氏は「女性を守る議連」会合で、今回の最高裁の判断を「わが国の人間の在り方、暮らし方、さらには家族の在り方まで、根本から変えてしまうような要因を作った」と語り、「司法へのチェック機能を強化し、最高裁裁判官を国会承認人事にした方がいいが憲法改正が必要。本当にその人物が真に最高裁裁判官に相応しいのか、公開の場で十分な時間をかけて審査することが大事だ」と訴えた(産経)。

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