救国救世の志で令和の国づくりを(2020年1月執筆)
広い視野と高い志をもった国民世論で、議員の政治活動に善き緊張感をもたらしましょう。

国際勝共連合会長 梶栗正義

会員の皆様、あけましておめでとうございます。令和初の正月を迎え、謹んでご挨拶申し上げます。

昨年は令和の世が明け、新しい時代を迎えた喜びと興奮で日本列島はお祝いのムードに包まれました。思えば上皇陛下が数年前に生前退位の御意向を示された事を受け、その間、国会において皇室典範特例法を成立させるなど、内外の環境を整えた上で、約二百年ぶりとなる生前退位によるお御代替わりが実現致しました。

昨年の「今年の漢字」には「令」が選ばれたようですが、この国の最高権威でありながら権力を伴わないという、立憲君主制における象徴天皇というお立場ゆえ、日本国憲法と皇室典範特例法の定める法律に則って退位、及び、即位における一連の国事が執り行われる様子に触れるにつけ、皇室の歴史と伝統に対する畏敬と感謝の念と共に、立法府の持つ重みを実感するなど、国民主権について改めて深く考えさせられる機会にもなりました。

司法・立法・行政による三権分立と言いますが、司法と行政が定められた法律を執行する立場であるのに対し、立法府は法律そのものを成立させる事でこの国のかたちを決定していく機関であり、国民主権の原則に則り選挙を通し、民意を背景に選ばれた代議士が議会を構成します。議会制民主主義の至極当たり前の構造ですが、上皇陛下のお気持ちに私達国民の民意が応える形でお御代替わりが実現したこの度のプロセスを思うと、令和の国づくりにおいて、その主役は国民一人ひとりなのだという事を改めて実感いたします。

また、天皇陛下の「即位礼正殿の儀」「饗宴の儀」には世界195の国と地域、そして国際機関からの祝賀客を迎えるなど、世界中が日本に注目し、各国が日本の皇室に祝意と敬意を示す様子に、日本国民としての誇らしさと共に、国際社会において日本が担うべき役割と歴史的な使命の大きさについても考えさせられる機会になりました。

台湾総統選挙は米中「新冷戦」の天王山の戦い

さて、世界に目を向ければ、2019年は既存の国際秩序と国際通念を根幹から揺るがそうとする事象が世界各地で展開した年でありました。世界はまるで新しい時代を迎える為の混乱と混沌の渦中にあるように思えてなりません。

昨年本格化した米中貿易戦争は、もはや両国間の貿易摩擦に留まらず、金融など経済全般、そして、安全保障面にまで至り、次第にその本質が世界の覇権を掛けた米中「新冷戦」であるという事が露見してまいりました。日本と米国を除く主要国を含む世界100の国と地域が中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加するなど、中国はこの間、国際社会における指導力と影響力を着実に増大させてきました。もはや覇権国家としての存在感を示す事を躊躇せず、国際ルールを軽視する中国の「力の論理」による膨張主義的な姿勢は、これまでの国際秩序を抜本的に変えてしまう脅威に他なりません。

資本主義経済と国家介入による社会主義的統制経済が混在するいびつなシステムにより、貿易や金融、為替など経済全般における世界的覇権を追求すると同時に、知財窃取を伴う技術覇権、「バランス・オブ・パワー」や公海を公共財とする考えを受け入れず、「力の論理」で南シナ海・東シナ海に進出し、最終的には西太平洋にまで至る海洋覇権を実現しようとする野心的姿勢は、世界が多くの犠牲を払って歴史をかけて確立してきた自由民主主義、法の支配、市場経済などの人類共通の価値観に対する挑戦に他なりません。逃亡犯条例改正案に端を発した香港デモの様相に触れ、世界は中国の言う「一国二制度」の欺瞞ぎまんを目の当たりにしました。11月、オーストラリアに亡命した中国共産党の元スパイ王立強氏は、亡命先のオーストラリアで中国共産党による対香港・台湾のスパイ活動について証言しており、香港学生運動への浸透工作や自身も関わった台湾国政選挙における世論誘導等スパイ工作の実態も明らかにしたようです。現在の香港情勢を目の当たりにすると、独立自治が実現し、自由中国とも言われる台湾の意義と価値について改めて強く思い知らされます。

ところが、冷戦時代、反共の雄であった台湾も今や国内において中国寄りの国民党支持者と独立自治の姿勢を堅持する民進党支持者によって国論が二分されています。台湾情勢の専門家は、台湾に親中政権が成立し、両岸友好の証しとして徐々に軍事交流が行われるなどして、中国の潜水艦が台湾の軍港に寄港し始めるような事になれば、中国の軍事力による米本土への脅威が現実のものとなり、米国のプレゼンスはアジア太平洋圏から著しく後退せざるを得なくなるだろう、と予測しています。ある意味、台湾は米中「新冷戦」の最前線であり、この度の台湾総統選挙、並びに立法院選挙は米中「新冷戦」の天王山の戦いという事が出来ます。

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日本は国の在り方を深く考るべき時

かたや米国でも、下院におけるトランプ大統領弾劾決議にみられるように、国論を二分する内戦の国情を呈しております。韓国においても文在寅政権をめぐる国民の評価がきれいに分かれ、賛成派、反対派各々による大規模デモが続いているなど、こちらも内戦状態といえるかも知れません。2020年は、1月の台湾総統選に始まり、4月の韓国国政選挙、11月の米大統領選挙と日本を取り巻く主要各国にて極めて重要な選挙が控えており、その結果が今後、日本の周辺情勢を大きく左右するものと思われます。本年日本は、混迷を極める世界と向き合いつつ国の在り方について深く考えねばならない時を迎えていると言えるでしょう。去る11月、安倍晋三首相は在職日数が憲政史上最長の総理大臣となり、正に政治家として正念場を迎えました。混迷する国際情勢と少子高齢社会の到来を受け、内憂外患の国難を克服するためには、国家の大計、針路など骨太の国家戦略が提示されなければなりません。

また、憲法改正においては、国会審議のみならず一般国民が国際情勢と日本の国情を鑑みて当事者意識をもって日本国憲法について考え論議する環境を創り出す事が肝要であると言えましょう。揚げ足取りに終始するような国会論議で重大事案の検討が先送りされる事なく、緊張感ある議事進行が展開するには高い政治意識を持った国民世論の後押しが必要です。

広い視野と高い志をもった国民が、その代表として国会に送り出した議員の緊張感を伴った政治活動を後押しする相互関係が構築されなければなりません。救国救世の高い志で国民運動を力強く推進し、希望溢れる令和の国づくりに邁進してまいりたいと思います。

2020年1月吉日

国際勝共連合会長 梶栗正義