スパイ防止の概念なき日本社会

 

「ITベンチャー会社が知的財産権保護の為に中国人不採用」は人種差別なのか

 AI(人工知能)開発を行っているITベンチャー「Daisy」の代表を務める大澤昇平・東京大学大学院特任准教授が「弊社では中国人は採用しない」と昨年11月にツイッター上で発言したとして、懲戒解雇処分を受けたことが分かった。

 大澤氏は大学院の情報学環・学際情報学府で教えていたが、ネット上では「人種差別」などといった批判で炎上。東大では公式サイトで情報学環長・学際情報学府長名で、大澤発言に遺憾の意を表明し謝罪したが、1月15日に懲戒解雇処分にしたと発表。

 当の大澤氏は同日ツイッターで「処分は不当だ。日本のAI技術の発展を軽んじ、アジア諸国の多様性を重んじた東大の対応は明らかに間違っている」と発信。

 大澤氏の講座に出資していたスポンサー企業は下りたと言うが、これを単なる「レイシスト・デベロッパーの妄言」などと片付けてはいけない。全くの筋違いなことだからである。

 

知的財産・技術保護に関わる海外勤務者・研究者を呼び戻す中国政府

 中国では2008年から「千人計画」というものを打ち出し、海外の企業と大学に勤務する若い研究者、技術者、知的財産と技術保護に携わる中国人を、高待遇で中国に呼び戻すというプロジェクトだ。さらに、2011年からは、ハイレベルな外国人専門家を招聘する「外専千人計画」も開始され、アメリカ、ドイツ、日本から破格の待遇で大量に引き抜かれている。

 中国は2015年に「中国製造2025」を策定し、次世代情報技術(半導体、5G・AI)やロボット・宇宙などを重点10分野に定め、単なる「世界の工場」だけではなく、製造業における「覇権」を握る戦略を打ち出した。うち最も重要なのは半導体製造技術で、米国を凌駕する世界一の軍事大国となるため必須の条件になのだ。

 それに加え、5GとAIは「インターネットプラス(互聯網+)」、つまりビッグデータやIoT、クラウドコンピューティング等のIT技術と他の産業を融合させることで、新たな産業の創出する国家戦略にも直結している。そもそもAIは大規模で高速なインターネットインフラと蓄積されたビッグデータがなければ成り立たない。

 米国の国防権限法によってカナダで孟晩舟・ファーウェイ(華為技術)副会長が逮捕・起訴されたが、次世代通信技術5Gの基地局で最大手とされたファーウェイについて、スティーブン・バノン元米大統領首席戦略官は来日時に、「人民解放軍の背景をもった企業ではなく、軍そのもの」であり「ハッキング他、様々な方法で最先端技術を盗むか、脅したり騙したりして奪うか」という手口を語っている(河添恵子『世界は「習近平の中国」の崩壊を望んでいる』)。

 中国は「中国製造2025」実現のため「千人計画」で人材確保を加速させている。しかも単に「人材の流出」ではない。FBI(米連邦捜査局)では「中国にリクルートされた個人は、海外で獲得した研究成果まで中国に渡すため、情報や研究財産の盗用など米国法に基づいた違法性」により千人計画が「産業スパイリスト」として捜査対象になっている。さらに米連邦議会の国家情報委員会(NIC)でも千人計画が「国家安全保障に対する長期的な脅威」とされ、米国防省も「千人計画の目的は、米国の知的財産を獲得すること」と下院軍事委員会公聴会で警告している。

スパイ防止法なき日本。「農産物改良品種」等の知的財産保護は喫緊の課題だ

 もはやMIT(マサチューセッツ工科大)の合格発表に中国出身者がいない、と報じられているという。それは「人種差別」ではなく、全米大学の外国人留学生の3分の1を占めてきたという中国人の入学を、「産業スパイ予備軍を水際でストップする」ためだ。

 日本は冒頭のように、スパイ防止法もなく、国家機密の漏洩も三菱電機事件のように、情報が漏洩しても責任が問われない社会になっている。東大では「軍事研究禁止」の方針だったが、軍民両用の「デュアルユース」で研究開発することを2015年に解禁したことが話題となった。「学問の自由」を守るため軍事研究を拒否するのが日本学術会議の方針となってきた。だが学問の自由を言うなら、農産物の改良品種が海外に盗まれることも含め、そうした「知的財産」を保護することに傾ける努力も喫緊に必要である。

 思想新聞 文化共産主義 スパイ防止の概念なき日本社会 2月1日号より(掲載のニュースは本紙にて)

2月1日号 第28回日本共産党大会 野党連合政権実現を明言  / 「チュチェ思想」の闇に迫る 篠原常一郎氏が講演 / 主張 「日米安保60年、改憲で真の同盟築け」 etc

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