谷口論文と鈴木エイト氏のある「疑惑」

「思想新聞」8月1日号から連載【共産主義「定点観測」】の記事を紹介します。

 長らく安倍晋三元総理のスピーチライターを務めた谷口智彦・筑波大学教授は、月刊『Hanada』8月号に寄稿した「安倍元総理・大和西大寺・韓鶴子」と題する論文で、安倍氏銃撃事件の現場で現行犯逮捕された山上徹也被告の、「山上は警察情報によれば、旧統一教会関連団体(UPF)が開いた集会の動画を見た。そこに安倍元総理が登場し、韓鶴子(文鮮明教祖の妻)氏を称えるのに接し、元総理への殺意をもったという」と山上供述から安倍元総理のビデオメッセージの精査を試みている。

山上の主張は徹頭徹尾言いがかり

 谷口氏は「トランプ大統領が話すのだから自分も出たと明快に示唆した箇所は、動画を与えた経緯について雄弁だ」と元総理の出演理由を読み取っている。

その上でこう述べる。
「しかし、内容以前に最も肝心なことは、安倍元総理が旧統一教会を不自然に称揚した言葉など、およそどこにもなかったという一事だ。由来、テロリストに大義はない。しかも山上が言及した動画において、安倍元総理は韓鶴子氏に儀礼的挨拶を送ったほか、もっぱら時事問題に関し自説を開陳していった。すなわち山上の主張は徹頭徹尾言いがかりだったことが、一見直ちに明瞭だ。

同時に、いかなる宗教といえども反社会的行為に及ばぬ限り、信者たちが持つ信仰の自由が課されてはならないことも明らかだ。旧統一教会信者たちにもこのことは妥当する」

谷口氏の論稿は何も旧統一教会を擁護しているわけではない。論稿の初めの方で谷口氏はこうも述べる。

「(安倍元総理暗殺の)衝撃さめやらぬうち、マスコミは旧統一教会と元総理の関係に関心を移した。政治の力学と世論の暴力は元総理を叩き、もみくちゃにした。この過程に深く憤りを覚えた筆者には、今も嘆きより怒りが先に立つ。非業の死を遂げた一代の宰相にその没後辱めが及ぶにあたって、岸田文雄総理における不作為は、あずかって小さくない役割を果たした」

「われわれが知っているのは、野党とマスコミが安倍叩き一辺倒となるのをただ黙って見過ごしたことであり、旧統一教会に何度も資料を出させ、一種のガス抜きをさせたということだけである」

政治的意図があるのは明らかな鈴木エイト氏

  1周忌に際しても安倍元総理は歴史に名を残す政治家としてその業績が数え上げられるべきを、マスコミは安倍叩きをやめようとしなかった。その「一端」として注目されたのが、「旧統一教会追及のジャーナリスト」として「メディアの寵児」となった鈴木エイト氏の新刊『自民党の統一教会汚染2 山上徹也からの伝言』(小学館)だ。

鈴木エイト氏の著書『自民党の統一教会汚染2 山上徹也からの伝言』

同書最大の「ウリ」が、鈴木エイト氏自身が「山上から事件前にツイッターでダイレクトメッセージをもらっていた!」とするもので、各所で営業トーク。そもそも、銃撃事件後「鈴木エイトを出せ!」と自らハッシュタグで発信しメディア各社に売り込みをかけたと裏話を披露している。

以来メディアに出ずっぱりとなったエイト氏は、旧統一教会と自民党の政治家といかにズブズブの関係かの「語り部」として登場した。しかし関係があるとしてどこに違法性があるか、については言及しないのが「お約束」だった。ではなぜ米共和党との「ズブズブの関係」には触れないのか。

そうしてエイト氏は「安倍氏もズブズブの関係」と憶測を中心に論理展開。同書では山上被告が彼の「本職」サイト「やや日刊カルト新聞」の熱心な読者で感想を投稿していたことを公表した。とすれば、日常的に彼の言説の影響を受けていたことになる。その「責任の一端」めいたものを、エイト氏は同書等の言説で認めるが、憎悪を増幅させ殺意に至る「教唆」にあたるのではないのか。そして、山上被告の「殺害犯」より「被害者」「変革者」の側面を強調し、安倍元総理の業績を異様なまでに矮小化させることに成功したのだ。

エイト氏は「党派性」を否定するが、山上被告が手紙を送ったジャーナリストの米本和広氏が以前から、「(信者の)監禁派のパシリ」と評しており、明確な政治的意図があるのは明らかだ。米本氏によれば、全国弁連の弁護士と連携し、信者の「実家」を戸別訪問し、「脱会の営業」を行っていたという「前科」もある。  

【思想新聞月8月1日号】NATO首脳会議 FOIP重視を鮮明に

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