【憲法改正】中曽根会長を偲び、新しい憲法を制定する推進大会開催

 

憲法改正について考える超党派の政治家・議員経験者らが結集する「新憲法議員同盟」による主催で6月10日、「令和3年度 中曽根康弘会長を偲び、新しい憲法を制定する推進大会」が都内で開催された。新憲法議員同盟の会長を永年務めた中曽根康弘元首相が一昨年に101歳で逝去。追悼の意味を込めた昨年の大会は中国・武漢発新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言で中止となった。よって2年ぶりとなる今回の大会は、改めて中曽根会長を追悼する大会として無観客でインターネットによるライブ配信での開催となった。

無観客・インターネットによるライブ中継で行われた憲法大会

 

 大会は2部構成で、第1部ではヴァイオリンとギターのデュオによりシューベルトの「菩提樹」など中曽根元首相のお気に入りだった3曲が演奏された。引き続きゲスト講演者2人による記念講演が行われた。 

 記念講演で田久保忠衛・杏林大客員教授は、「問題を絞れば緊急な改正ポイントは三つ。一つは新型コロナの世界的パンデミックにどう対応すべきか。二つ目は大規模自然災害。今後首都直下型地震が起こるかもしれず、これに備えるべき緊急事態条項が憲法にない。三つ目は国土で、尖閣諸島など領土問題。外交と防衛は車の両輪というのが国際政治の基本原則だから憲法改正が必要」とした。

 その上で28年前にPKO 活動を主導したガリ国連事務総長が来日時に「真に平和を愛するなら憲法改正しPKO参加すべき」と語ったことをめぐり、NYタイムズが「憲法改正は認められない。日本国憲法は我々が授け日本が書き写した。日本の右翼政治家が庶民の尻を叩き改憲させようとしている」との社説を掲げたエピソードを披露した。

 「河合栄治郎門下の自由主義者で民社党憲法調査会会長だった関嘉彦先生(参院議員)が『右翼政治家が庶民を煽る問題ではない。日本を異常にしたのは憲法。右翼云々は憲法を改めてからの問題だ』と反論。まだ占領軍意識の時代。『軍国主義者』が復讐するのでは、との恐怖心が米国リベラルの間にあった。だが現在はそれもなく明治憲法復活も非現実で、中国覇権主義への危機感が大問題になり、米国が相対的に衰退し始めた。EUでも英国が離脱、アジアに目を向け始めた。実態なき日本の軍国主義者どころではない。これだけ世界の局面が一変しても憲法審査会が不動なのは問題だ」と締めた。

 熊坂隆光産経新聞前会長は、「中曽根政治の究極の目標は憲法改正だった。昭和50年代、高崎線沿線に『首相と恋人は自分で選びましょう』という看板が掲げられていた。首相公選論を唱えた中曽根先生らしい宣伝文句で、『憲法改正の気運を高めたい、世論喚起のためのコピーだ』とのこと。先生の最も印象的な言葉は『憲法を改正しない限り日本は沈没してしまう。日本が世界から消えてしまう。これは君、残念なことだろう。何としても日本という国を将来に残したいんだ』と語り、この耳で聞いたことだ」と述べた。

 

 第2部では愛知和男・議員同盟幹事長が「昭和51年初当選の時、池田行彦君と共に先生からお祝いしていただいた。強く印象に残る言葉は『政治家として一番大事なのは憲法問題だ。憲法を一生懸命勉強し政治課題として取り組んでもらいたい』」と開会挨拶。

 また菅義偉首相が自民党総裁として「(現憲法の)時代にそぐわない部分、不足している部分を改正していくことは当然。憲法改正の機運が確実に高まっている今だからこそ、皆さんと共に実現に向け進んでいきたい」としたビデオメッセージを寄せた。

自民党総裁として憲法改正への思いを込めた菅義偉首相のビデオメッセージ

 

 次に、議員同盟の名誉顧問を務める安倍晋三前首相は、来賓挨拶で幹事長時代に当時の小泉純一郎総裁の指示で中曽根氏を衆院選比例名簿に登載しない旨を伝えた(引退勧告)エピソードを披露。「(小選挙区制を導入した)橋本龍太郎総裁時代の《(比例)終身1位を約束する》旨の書類を見せ『これを反故にする理由を教え、私を納得させてくれ』と迫られても、ただ頭を下げるしかなかった私に、中曽根先生は『君は(引退勧告の)貧乏クジを引いたね。だが君は幹事長で選挙に勝つことが仕事。君はまだ若いし、憲法改正に取り組みたまえ』と背中を押してくれた」と語った。

 さらに安倍氏は9条2項を残し自衛隊を明記する案に対する学生へのアンケートで、10分間の説明で賛成が54%から85%に増えた経験から、(改憲案を)しっかりと説明していくことが大事と強調した。

中曾根康弘元首相とのエピソードを披露する安倍晋三前首相

 

 自民党憲法改正推進本部の衛藤征士郎本部長は「よく総理官邸で酒を飲ませてもらい、酔うと必ず『ローレライ』を歌った」と中曽根元首相を偲びつつ「国会議員の責務は速やかに憲法改正原案を整え、それを審査し発議し、国民の審判を仰ぐべきだ」と述べた。

 このほか、公明党の北側一雄憲法調査会長、日本維新の会の足立康史幹事長代理、国民民主党の山尾志桜里憲法調査会長らが憲法改正への思いを語った。

 また大会では「わが国の歴史や文化を内包し、時代の変化に適合し、かつ国家の理想の姿を示す憲法の制定を今こそ強く求める」とする内容の決議文を採択。

 

 閉会の辞を議員同盟幹事長代理の中曽根弘文参院議員が述べ、司会を務めた柳本卓治前参院議員が「戦後政治の総決算は憲法改正にあり」との中曽根元首相の言葉を引用し、印象深く大会を締めくくった。

 

 

 思想新聞【連載・活動】「新憲法制定議員同盟」中曾根会長を偲び2年ぶりの大会開催  7月1日号より(掲載のニュースは本紙にて)

7月1日号 霞む「中国の夢」焦りの独裁強化策 / 新憲法制定議員同盟 中曽根会長を偲び2年ぶりの大会開催 /【主張】G7中国非難を軽視する日本の国会

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