わが国では2017年に刑法性犯罪が大幅に改正され、「性犯罪の厳罰化」が実施されたとされる。例えば、強姦罪の名称が「強制性交等罪」に変わり親告でなくとも罪にできるようになり、法定刑の下限が3年から5年に引き上げられ、男性が被害者となるケースも踏まえ「性の中立化」を規定したことなどだ。
この強制性交等罪(177条)や強制わいせつ罪(176条)で規定される「13歳」という年齢を「性交同意年齢」と呼んでいる。この年齢に達しない子供との性行為が禁止されており、これを破った場合は、同意の有無を問わず刑事罰の対象となる。だが、刑法では明治以降に制定されたまま変更されていない。
このことが子供を性犯罪から守るという児童福祉の観点から、国際的に比較した見地からも、この性交同意年齢を引き上げるべきだとの議論が、保守・リベラル問わず高まっている。
そうした中で、立憲民主党がこの性交同意年齢を、義務教育修了年齢にまで引き上げる刑法の改正について議論するために立ち上げた「性犯罪刑法改正に関するワーキングチーム(WT)」で、出席議員が成人と中学生の性行為を肯定する発言を繰り返していたことがわかり、同WTは6月7日、中学生以下との性行為の禁止を求める報告書をまとめる予定だったというが、見送ることになった。
立憲・本多平直議員の発言は「子供への性的虐待の正当化」につながる
一部報道の見出しに「性交同意年齢引き上げに慎重意見」もあったが、この「議員発言」はまさに問題発言だ。
5月10日に開かれたWT会議で本多平直衆院議員が「例えば50歳近くの自分が14歳の子と性交したらたとえ同意があっても捕まることになる。それはおかしい」と発言。
同月下旬のWT会議でも「12歳と20歳代でも真剣な恋愛がある」「日本の『性交同意年齢』は他国と比べて低くない」との趣旨の意見を述べたというのだ。
「性交同意年齢」は、「性行為の同意能力がある年齢の下限」とされるが、現行刑法の13歳は、国際的にもその低さが問題と指摘されている。折しもスマートフォンやSNSの普及で未成年者の性被害も深刻化しており、立憲は禁止年齢を「16歳未満」へ引き上げることを目指し議論を続けていた。
本多発言があった5月のWT会議に出席した大阪大大学院の島岡まな教授(刑法)は、「発言を聞いて絶句。(中学生との性行為は)性的搾取にあたり、犯罪となり得ると示すことが大事」と語る(朝日新聞)。
立憲の福山哲郎幹事長は6月7日、「(本多氏を)厳重に口頭注意した」とコメント。
本多議員本人も発言したことを認め、「性犯罪に関する刑法改正に関し、中学生と成人の間に対等性はなく性搾取となっている実態を踏まえ、低年齢当事者を保護するために成人を処罰対象とする必要性は認識。刑事処罰の議論で、特異な例外事例など緻密な検討が必要だと考えたが、発言は例外事例としても不適切。お詫びし撤回したい」と謝罪した。
ダンマリで「身内に甘すぎ」と批判殺到、子どもの福祉の尊重を!
それでも、同党内にはツイッターで「本多代議士を擁護する」と公言している津村啓介衆院議員のような政治家もおり、「厳重注意だけで済むのか。立憲はやはり身内に甘い」というネット世論が、SNSを中心に広がっている。
確かに、杉田水脈議員や丸川珠代大臣には凄い剣幕で「議員辞職」を迫っていたのは他でもない立憲民主党や日本共産党だった。
共産党の小池晃書記局長は「ノーコメント」。先般の「me too」の女性の性被害を声高に叫んでいた政治家たちダンマリを決め込んでいる。
米社会でも問題となっていた子供への性的虐待や人身売買をめぐる犯罪だが、今回の本多発言も受け取りようによっては「子供への性的虐待」を「恋愛だから」と「小児性愛」を正当化する言葉になりかねない。
お隣の韓国も日本と同じく性交同意年齢は13歳であったが、昨年5月に16歳に引き上げられた。その契機となったのはチャットルームから女児が性的搾取と脅迫という犯罪に巻き込まれた「n番部屋事件」とされる。
児童の権利と福祉を第一に考え、家族をセーフティネットとして育成する社会にこそ、わが国の健全な未来を開くと考え、政治家も襟を正すべきである。
思想新聞【オピニオン】児童の性犯罪保護に疎い立憲の不見識 6月15日号より(掲載のニュースは本紙にて)
6月15日号 枝野代表「保守」論は左翼リベラル 共産の「市民・野党」結集戦略を見抜け/ 五輪中止の偏向報道に警戒を 愛知県連合会で安保セミナー /【主張】東京五輪を大成功に―それが天命だ