「新型軍国主義」非難は抑止力の証左

「思想新聞」9月1日号から【特別寄稿】の記事を紹介します。

中国の「新型軍国主義」非難

 2025年11月のいわゆる「高市発言」以来、中国の日本に対する非難攻撃はすさまじい。対日旅行禁止、レアアース禁輸措置、自衛隊機に対するレーダー照射、パンダ回収、日本の排他的経済水域における射撃訓練、核搭載可能長射程弾道ミサイル発射など、枚挙にいとまがない。

 そして、中国による最大の非難攻撃は、日本に対する「新型軍国主義非難」である。これは、高市内閣の「安保3文書」改定による反撃能力としての射程1600キロないし2500キロの米国製巡航ミサイル「トマホーク」をはじめとする長射程ミサイルの保有などの防衛力の本格的強化に対する非難である。

 その根底には、日本は永久に「軍事的に弱い日本」であらねばならぬ、という中国の強固な意思がある。なぜなら、中華民族の偉大な復興を唱える中国習近平政権にとっては、台湾統一を成し遂げ、台湾の一部であり核心的利益と主張する尖閣諸島を奪取し、アジアと西太平洋を軍事的に支配しなければならないのであり、それによってはじめて中国は米国と対等になると考えているからである。しかし、「軍事的に強い日本」はこれらの障害となることは明らかである。

 このような、中国による日本に対する「新型軍国主義非難」にとって極めて好都合なのは、日本国内の反戦・平和・護憲・左翼勢力の存在である。その反対運動は日本政府による防衛力強化を阻止し、妨害するからである。

「新型軍国主義」恐れる中国

 中国は日本の軍事大国化を恐れている。上記の通り、日本の軍事大国化は台湾武力統一の障害であり、尖閣諸島奪取の障害だからである。台湾武力統一については、米国が「台湾関係法」に基づき参戦すれば、日本も集団的自衛権を行使し参戦する可能性が高い。この事態は台湾武力統一を困難にする。その場合、日本が軍事大国化しておれば、ますます困難になる。

 日本は核兵器を保有していないが、通常戦力ではその実力は世界有数である。とりわけ、航空自衛隊の練度が中国空軍に勝ることは軍事専門家が指摘している(今年5月11日兵庫県芦屋市「芦屋ルナ・ホール」での織田邦男元空将講演)。海上自衛隊においても、原子力潜水艦は保有していないが、世界最高水準の通常型潜水艦、高性能イージス護衛艦「かが」「ひゅうが」型空母を保有している。

 さらに、日本はパトリオットミサイルなどの「ミサイル防衛」に加え、「反撃能力」として、北京・上海・広州など中国の政治・経済・軍事の中枢都市を射程に収める長射程ミサイルを保有し配備を進めている。

 そのうえ、中国には日中戦争で中国大陸への旧日本軍の大規模侵攻を許したトラウマがある。また、日本には国のためには命を恐れぬ「神風特攻隊」のイメージがあり、さらに、1941年当時世界最強の米国に対する旧日本帝国海軍による「ハワイ真珠湾奇襲攻撃」(先制攻撃)の歴史がある。

 また、歴史をさかのぼれば、日本は鎌倉時代の2度にわたる「モンゴル襲来」を撃退し、幕末には西洋列強の植民地化を実力で拒絶した。「切腹」に代表される、日本の「文」よりも「武」を貴ぶ精神は中国や朝鮮にはなかったのである。

 中国における数々の政府宣伝の過激な「反日映画」や「反日ドラマ」を見ても、中国にとっては、今も以上のような日本のイメージがあり、真珠湾奇襲攻撃と同様に、「日本は追い詰めれば何をするかわからない」恐怖がある。そのうえ、日本が本格的な防衛力強化を行い、「軍事大国」になれば、それこそ中国の手に負えない存在となる。

 最近の中国による日本に対する執拗な「新型軍国主義非難」は、まさに中国が日本の「軍事大国化」を恐れ、これを阻止し妨害するためであり、中国が恐れる「日本の軍事大国化」すなわち、強力な反撃能力を含む防衛力の本格的強化こそ、日本の中国に対する最大の「抑止力」に他ならないのである。(外交評論家・元弁護士 加藤成一)

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