【日本学術会議問題】戦後の悪しき「慣習」に大ナタ振るえ

 

 

 「日本学術会議」を金科玉条とする戦後の悪しき「慣習」を今こそ打破すべき秋である。

 

 同会議の新会員が10月1日発表されたが、菅義偉首相は同会議が推薦した候補105人のうち6人の任命を見送った。いずれも安倍政権が取り組んだ安保法制や改正組織犯罪法などに反対していた学者で野党や左派メディアは一斉に「学問の自由の侵害」と猛反発している。

 

 だが、学術会議は内閣府所管の特別機関で、会員の任命権者は首相である。

 人事を通じて監督権を行使するのは当然のことだ。学術会議の会員にならなくても学問は自由に研究できる

 暴挙や介入は左翼勢力お得意のレッテル貼りにすぎない。菅内閣は人事のみならず学術会議そのものに大ナタを振るうべきである。

 

日本学術会議に暗躍する共産党

 

 今回の今回の任命見送りの第一報を伝えたのは一般新聞でなく日本共産党機関紙「しんぶん赤旗」(10月1日付)だったことが、この問題の本質を浮き彫りにしている。一般紙は同会議が見送りを公表した翌日の2日付で赤旗より丸1日遅かった。なぜ赤旗が出し抜けたのか。

 赤旗によれば、同会議から新会員として推薦されていた立命館大学の松宮孝明教授に9月29日夕方に事務局長から「(首相の)任命名簿に名前がない」と連絡があったとしている。つまり赤旗に垂れ込んだのは松宮氏である。一般紙に知らせていたかは不明だが、少なくとも松宮氏は共産党にいち早く通報していた。

 

 松宮氏は2017年に国会の参考人質疑で改正組織犯罪法について「戦後最悪の治安立法」などと赤旗張りの主張をしていたから、共産党と気脈を通じていても何ら不思議でない。他の5人も安保法制に反対する会の呼びかけ人(宇野重規・東大教授)や、その反対署名を集めたり(小沢隆一・東京慈恵会医科大教授)、辺野古反対声明を出したり(岡田正則・早稲田大学教授)といった具合にいずれも左翼「活動家」と断じてよい。

 

 いったい何を基準に同会議は会員に推薦したのか、菅首相の任命拒否よりも、こっちの推薦過程のほうがよほど怪しいと言わねばならない。

 

 日本学術会議はわが国に主権がなかった終戦直後の1949年に連合国軍総司令部(GHQ)の後押しによって創設されたもので、科学者が戦争に協力したり動員されたりした「反省」のうえに政府から「独立」した立場で政策提言や海外の学術団体との連携などに取り組むとされた。GHQの「日本弱体化」政策の一環で、「戦争放棄」の憲法9条の学者版である。

 

 それで日本学術会議法は冒頭で「わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献」を使命に挙げ、9条同様に安全保障、自衛力の整備を「戦争の準備」と捻じ曲げ、拒否的態度をとってきた。

 

 1950年と1967年には戦争を目的とする科学研究を行わないとする声明を出し、2015年に防衛省が防衛装備品に応用できる先端研究を大学などに委託する公募研究資金制度を発足させると、「政府の研究への介入が著しい」と懸念を表明、研究の適切さを審査する制度を各大学などに設けるよう求めた。

 

 元通産官僚で評論家の八幡和郎氏は「国公立を含む日本の大学は、防衛のための研究に協力することを拒否し、自衛隊員の大学や大学院への入学まで排除・制限するという暴挙を平気で行っている。一方で、外国の軍事研究への協力には無警戒である」と指摘している。

 

 中国が世界から技術を盗み出そうとして米国で大スキャンダルになっている「千人計画」に学術会議が積極的に協力しているばかりか、北朝鮮の核開発にも日本の大学の研究者が貢献した疑いがあるとの指摘もある。

 

 また政府は原発から生じる高レベル放射性廃棄物を全て再処理して利用する核燃料サイクル政策を進めているが、学術会議は2015年にその方針に反する地層処分の導入を提言している。

 

 想起すべきは日本共産党が長年に渡って「学術会議浸透工作」を手掛けてきたことである。その一翼を担ってきたのは「日本科学者会議」(日科)という旧ソ連の工作機関「世界科学者連盟」と連携する団体で、1965年の創立発起人総会には共産党の野中参三議長(当時)が来賓として出席し、「全面的支援」を表明している(『アカハタ』同年12月5日付)。

 

「白い巨塔」ばり不透明な会員推薦

 

 日科は第2回全国大会(67年)で日本学術会議への浸透方針を決定。当時、会員は選挙制で第8期会員選挙(68年)では60名を推薦し47名を当選させ、第9期選挙(71年)では75名を推薦し57名を当選させた。その結果、学術会議会員に占める日科(共産党系)の推薦者比率は27・1%に及んだ(思想運動研究所編『左翼100集団』)。

 

 日本学術会議の会員は210人で任期は6年。現在は選挙制でなく推薦制で3年ごとに半数を入れ替えるが、誰がどんな方法で推薦するのか、「白い巨塔」ばりの暗闘や「赤い巨塔」に陥っていないか、不透明きわまりない。

 

 いずれにしても共産党の徘徊(はいかい)を許す悪しき戦後体制に大ナタを振るうべきである。

 菅内閣は今回の人事問題をテコに徹底改革に乗り出すべきだ。

 

 

思想新聞【主張】戦後の悪しき「慣習」に大ナタ振るえ 10月15日号より(掲載のニュースは本紙にて)

10月15日号 信念貫け玉木・国民民主党・国民乖離の道の立憲民主党 共産党との共闘は国民の支持失う / よど号事件と過激派 半世紀の総括 / 戦後の悪しき「慣習」に大ナタ振るえ

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