
10月31日未明、沖縄を象徴する建造物の「首里城」が真っ赤な炎に包まれた。
沖縄のシンボルとも言える首里城正殿の焼失はフランスのノートルダム大聖堂焼失を想起させた。
煙感知器が作動したが全焼まで鎮火できなかったのは、県の防火対策不備ではないか。
奇しくも同じ世界遺産の合掌造りで知られる白川郷でも火災が起き、懸命な消火活動で2棟全焼の他は他家屋への延焼を防いだ。
世界遺産には保守管理に厳格な基準が設けられ、建築物にはスプリンクラー設置が義務という。
ところが首里城ではスプリンクラーすら設置されていなかった。
首里城は数奇な運命を辿った。
戦前は国宝だったが沖縄戦で消失、本土復帰後1980年代から足掛け30年で73億円をかけ再建された。世界遺産は首里城を含む「旧琉球王国の遺構」。建物自体は歴史的価値がないためスプリンクラーは設置しなかったという。それにしても、消火活動で自衛隊にも出動協力要請はなかった。消防だけにもかかわらず、ある消防職員が消火作業そっちのけで動画を撮影していた。
玉城デニー沖縄県知事は国に首里城再建の財政支援を要請し、募金も数億円をすぐに超える勢いだ。
だが、スプリンクラー一つ設置しない管理者たる沖縄県の不作為は問われないのだろうか。
一方では首里城とは離れた場所に建てられた巨大な「龍柱」は、故翁長雄志前知事が那覇市長時代に建設を決め3億円超を費やした。国の沖縄振興予算が3千億円を超える中、文化財の保守点検整備と災害対策は十分だったのか、さらに精査が必要ではないか。
思想新聞【風声】11月15日号より(掲載のニュースは本紙にて)
11月15日号 【特別寄稿】2020年次期大統領選に向けたアメリカ情勢(中) / 神奈川県安保フォーラム 織田元空将がアジア情勢解説 / 主張「シーレーン防衛に総力を挙げよ」