ドナルド・トランプ前米大統領が7月11日、テキサス州ダラスで開かれた全米保守派最大の集会「CPAC」で講演した。この中でトランプ氏は、「批判的人種理論(Critical Race Theory)」が全米を二つに分断していると訴えた。
批判的人種理論は昨年、「BLM」(黒人生命尊重)運動が全米を席巻した際に激論されるようになった。
この理論は1980年台に「批判的法学研究」から派生した法学上の新しい運動で、リチャード・デルガドらハーバード大学の法学者が唱え始めた。その内容は、米国社会が今でもなお、黒人が差別され続け、白人優位であるのは、社会が構造的に白人優位であるからだ、という理論だ。
リンカーン大統領による奴隷制廃止やキング牧師の公民権運動にもかかわらず、未だ米国社会は白人優位のまま。そもそも米国の法律自体が白人優遇とは書かれていないが構造的に人種差別的だからだ、とする理論だ。これに左翼が同調し、米国文化をぶち壊す「キャンセル・カルチャー」運動とつながっている。
これに対し、保守派では「人種差別を理論的に裏付けているように見せているが、要は共産主義と同じだ」として批判。
義務教育で「米国は人種差別の国」と教え込もうと画策する共産主義勢力
この両者が激論している最大の問題は「この理論を義務教育で教えていいのか」だ。
米国の児童生徒の保護者らが、自分の子供たちが学校でこれを教えられるのは是か非かで大激論になっている(及川幸久チャンネル、大紀元時報参照)。
当然、フロリダ、サウスダコタ、ニューハンプシャーなど共和党知事の州ではこの教育を禁止しているが、「日教組」にあたる教職者ユニオン(労組)は、「米国は人種差別の国」として義務教育で教えようとしているが、フロリダ、サウスダコタといった共和党の強い州では同教育を禁止している。
ユーチューバーの及川幸久氏や「大紀元」で指摘するのは、この強靱な左翼勢力が、米国内に存在する共産主義者らによる「米国共産化の戦略」だ。米国内の筋金入りの共産主義者らが、長い年月をかけ米国を共産主義社会に変える戦略を粛々とやってきているが、さらにそれを進めようとしている批判的人種理論だ。
トランプ演説の要旨は、米国の民主党は本来、左翼(ラディカル・レフト)ではなくリベラルだが、このラディカルレフトこそが共産主義者であり、今や米国の裁判官や弁護士などの法曹界、大学教育、そして義務教育、ハリウッド、ビッグテック(GAFAなどの大手IT企業)、さらには大手銀行に至るまでラディカルレフトが侵入し、ひいては米国の中枢をコントロールし支配さえしてしまっているのだ。だから今、我々が戦うべきはバイデンではなく、そのバックにいるラディカルレフトだ。まさに彼らが推し進めているのは米国の教育支配だ。だが日本でも全く同じことが起こっている、と及川氏は不気味な指摘をしている。
人種や民族で米国を分断する「批判的人種理論」、根底にマルクス主義の影響
批判的人種理論の「批判的~理論」という名称は、マルクス主義の一潮流で文化共産主義の担い手であるフランクフルト学派の「批判的理論」がベースとなっているのは明らかだ。
G・ルカーチの『歴史と階級意識』に基づき、本来は「上部構造」として捉えられてきたあらゆる文化現象に関して、搾取と被搾取の「階級史観」を持ち込む。その理論の目的は「平等」ではなく、実は「転覆」にある。だからこそ、革命によって王侯貴族(さらに反プロレタリアート階級)は断罪・処刑・粛清されたのである。
そのため、批判的人種理論においては、西欧社会の制度は白人優位のものとして断罪され、白人であることに永遠に「原罪」を背負わせるのである。
これと全く相似的な立場が、これまでも指摘されてきた「ポストコロニアリズム」や「カルチュラル・スタディーズ」である。特に前者では、あらゆる西欧文化・芸術は、植民地を支配した帝国主義的観念が表現されていると非難・断罪されるべき対象とする思潮で、中心人物のE・サイード、コロンビア大学時代にB・オバマ元大統領が師事し影響を受けているのである。
思想新聞【オピニオン・文化共産主義】「批判的人種理論」という共産主義思潮 8月1日号より(掲載のニュースは本紙にて)
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