米国中西部ミネソタ州のミネアポリスで5月25日、黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官に押さえつけられ死亡する事件に端を発した抗議デモが全米に拡大中だ。無抵抗の人間の首を圧迫し死に至らしめるのは、人種を問わず許されない。それを前提の上で言えばトランプ政権批判と大統領選挙に最大限に利用されようとしている。
非難されるべきは警官の行為であり、それが黒人対の単なる抗議デモを超えて略奪・暴動にエスカレートし、一般市民や店舗に夥しい損害を及ぼしたことにある。治安上の不安や市民の生命を守るため、トランプ大統領は軍を投入することを示唆したりもした。
こうした暴徒化した一部の有力な勢力として注目を集めたのが、「反ファシズム」や「人種差別や性差別反対」を掲げる、マスクに黒装束の「ANTIFA(アンティファ)」だ。
アンティファは「平和的・非暴力」をうたう市民運動とは明らかに一線を画した暴力集団であることを、「反トランプ運動」が全米で展開されていた時に露呈した。つまり突然SNSから湧いてきた群衆のような集団ではない。「右翼の結集を潰す」という明確な意図で動いているのだ。
トランプ米大統領は6月1日、アンティファについて自身のツイッターでデモ暴徒化の原因だとして「米国はテロリスト組織として指定する」と発信した。
アンティファは以前、2017年1月のトランプ大統領就任時は、アンティファらの集団が首都ワシントンで抗議を行い、窓を壊したり車を燃やした。同年8月にはバージニア州シャーロッツビルで南北戦争のリー将軍像撤去に反対する白人至上主義者らと衝突、3人の死者を出した。
米国の大手メディアは「政治的公正」により、アンティファに寛容だ。だが、考え方の違うトランプ支持者の集会に乱入し一方的に暴行を加える映像が拡散されるなど、擁護派だった民主党のペロシ下院議長なども「暴力行為を断固咎める」との声明を出したほどだ。
アンティファ米国の資金源は投資家のジョージ・ソロス氏とも言われるが、組織の実態は、SNSにより衆参を繰り返すなど勝手連的で、あまりよく分かっていない。欧州でも日本でもアンティファを名乗る集団が存在し、「在特会」などを攻撃対象とする「しばき隊」改めCRACとほぼ同じ主張で、立憲民主党などの集会にも旗を翻えらせている。
このアンティファのような活動はファシズムに対する闘争より、伝統的な価値観を持つ人々や団体を力で屈服させる思想の強要となりかねないことに注意しなければならない。
共産主義勢力による米国の破壊 背景に中国
さらに今、注目されているのが、「中国の影」である。
連邦議会では超党派で対中国に対する強硬策、例えば台北法や香港民主化法、ウイグル人権法など、中国が「内政干渉」と反発する法律が次々と成立。だからトランプ政権と民主党勢力との「分断」には「格好の政治ネタ」なのだ。中国の「千人計画」の野望が非公然化された今、「国防動員法」で在外中国人を総動員して工作が可能となっている。
米国内の様々なシンクタンク関係者も「中国の影」を指摘する。
ハドソン研究所のロバート・スポルディング上級研究員は「米国の破壊を目的とした共産主義勢力による組織的な活動」と断言する(大紀元時報)。
時事評論家の張林氏は暴動の背後に中国共産党がおり、「超限戦の一部分で、米国内部から米国を転覆させるのが目的だ。(暴動が)迅速に反応するのは、組織的であり、この組織の経費はほとんど中共から来ている」と断言する(同)。
そもそも、反ファッショを標榜するなら反全体主義のはずであり、中国共産党こそ今や最大の全体主義なのに、アンティファはウイグルやチベットの人権、北朝鮮の拉致などおくびにも出さない。
ましてや共産主義体制下で犠牲になった人間は1億数千万人で、ナチスで殺された数の何十倍だ。
この欺瞞をメディアは不思議と指摘しない。
これこそが「アンティファ=共産主義者」という図式が成り立つゆえんなのだ。
思想新聞【文化共産主義の脅威】 中共全体主義に沈黙するANTIFAの欺瞞 6月15日号より(掲載のニュースは本紙にて)
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