米中情報戦に米国が圧勝した理由

 

 トランプ米大統領が4月末、「新型コロナウイルスの起源は武漢にあるウイルス研究所と確信している」と述べた。「(根拠は)言えない。それを言うことは許されていない」とも述べた。「確信」という強い言葉を使うのだから、よほどの根拠があるのだろう。

 

 さて、トランプ氏はコロナウイルスを「中国ウイルス」と呼び、ポンペオ米国務長官は「武漢ウイルス」と呼んでいる。

 差別との批判もあるが、ウイルスを発生地で名づけることは差別ではない。日本でも三重県四日市市で発生した四日市ぜんそく、熊本県水俣市で発病した水俣病という呼称がある。しかし日本ではこの呼称は使われない。

 強いて言えば、櫻井よしこ氏が日曜朝の報道番組で、「武漢ウイル…、ごめんなさい、コロナウイルス」と(わざと?)間違えたぐらいである。この原因が、日本のメディアが中国の意向を「忖度」しているからなのか、中国の情報工作の影響なのか、今のところよくわからない。

 

 話を戻すと、中国では3月、外務省の趙立堅副報道局長がウイルスの米軍持ち込み説をツイートした。

 そしてこのツイートは英語でなされた。そもそも中国では一般人がツイッターを使うことが禁止されている。だから趙氏のツイートは見られない。趙氏のツイートが、政府による情報戦の一環だったことは間違いない。

 まずは趙氏の個人的なツイートとして発表し、国際社会の反応が悪くなければ国をあげて拡散しようとしたのである。もちろん最大の狙いは、初期対応の失態の隠蔽(いんぺい)である。

 

 中国当局がツイッターを情報工作に使うのは珍しくない。

 ツイッター社は昨年、香港の抗議活動に際して5千以上のアカウントを閉鎖した。中国の情報工作に利用されていると判断したからだ。コロナウイルスに関係なく、中国政府があらゆる手段で情報工作を行っていることを、日本人は強く認識する必要がある。

 

黙して語らずは通用しない

 

 そして米国は、趙氏のツイートに強く反発した。まずは米国務省が崔天凱駐米大使を呼びつけて厳重に抗議した。そしてポンペオ氏がウイルスの「武漢研究所発生説」を声高に叫び始めた。

 中国当局が「趙氏個人の発言で政府と無関係」と弁明し、趙氏はツイッター上で発言を撤回したが、もはや後の祭りである。今やトランプ大統領自ら「武漢研究所発生説」を唱えている。情報戦は米国の圧勝である。

 中国側は「証拠があるなら見せてほしい」と反論しているが、いよいよ「武漢研究所発生説」の証拠が出れば、研究所ごと爆破して証拠隠滅を図るのではないか。

 

 ここで考えてもらいたいのは、米国が情報戦に圧勝したのは、趙氏の「米軍陰謀説」が稚拙だったからではないということだ。中国はいかに稚拙な情報でも、それを定説にする力がある

 たとえば「南京では30万人が虐殺された」という情報がある。荒唐無稽な話だが、日本国内にも一定数の信奉者がいる。他にも、「尖閣諸島は中国固有の領土であり、帝国主義日本が略奪した」とか、「靖国参拝は軍国主義の象徴である」といった主張などがある。「米軍陰謀説」にしても、米国が本気にならなければ定説となったおそれがある。

 そうなればしめたもので、あとは「中国人民をウイルスから守ったのは習近平国家主席だ」などと、都合のいいように書き変えられていくのである。

今月11日に中国で発売された、科型コロナの克服を記念した切手。

 

 米国が情報戦に圧勝したのは虚偽の情報を「深刻な脅威」と捉え、断固とした態度を示したからだ。

 

 このことは、多くの日本人が考える以上に重要である。日本では「黙して語らず」が美徳とされるが、その美徳は国際社会には通用しない

 

 誤った情報は断固として否定する。

 そして積極的に正しい情報を発信する。それが国際社会の正義なのである。

 

 中国は自らの失態を反省するような国ではない。コロナの混乱の中にあって、フィリピン海軍の艦船にレーダー照射をしたりもしている。日本は現状では国内の対応で精一杯かもしれないが、こうした情報戦に備えておく必要がある。

 

 

 思想新聞【体制共産主義の脅威】 米中情報戦に米国が圧勝した理由 5月15日号より(掲載のニュースは本紙にて)

5月15日号 露呈した現行法の限界 憲法に緊急事態宣言を / 新しい憲法を作る国民大会・紙上講演 / 主張 脆弱な「危機管理」態勢を再構築せよ

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