国権脅かす武蔵野市の住民投票条例案は容認できぬ

 

 またぞろ住民投票を巡る騒動が起こっている。

「またぞろ」と言うのは10年前の民主党政権時代に問題化し、国家解体を目論む文化共産主義の手段として批判され、鳴りを潜めていたからだ。

 菅直人元首相の愛弟子、いわゆる菅直人チルドレンの松下玲子・東京都武蔵野市長は同市議会12月定例会に住民投票条例案を提出し、左翼勢力の喝采を受けている。

松下玲子市長は「多様性を力に変えて、多文化共生社会を実現していくという思いで、重要な課題について意見を表明する機会は、国籍にかかわらず制度として設けていく」と述べている。

 

 同条例案は常設型住民投票制、それも市内に3カ月以上住んでいる外国人にも投票を認めるもので、「常設型」「外国人参加」という二重のわざわいを抱えおり、とうてい容認できない

 

 武蔵野市は菅直人元首相のお膝元(衆院・東京18区)で、松下氏は菅直人氏の支援を受けて民主党の都議会議員を経た後、2017年に同市長に当選。今年10月の市長選で立憲民主党や共産党などの野党共闘(いわゆる立憲共産党)で再選を果たした。すると、いよいよ菅直人チルドレンの〝本性〟を露わにし、条例案を持ち出してきた

 

文化共産主義者が国家解体を画策

 

 菅直人氏は民主党政権で何をめざそうとしたのか、そのことを想起したい。それは2010年6月の菅首相の所信表明演説で、自らの政治の師としてあげた松下圭一氏(法政大学名誉教授)の思想である。松下氏は『市民自治の憲法理論』(岩波新書)の中で、「市民自治」を基礎とする国家の再構築(構造改革)を強調している。

 

 この構造改革論はイタリア共産党の指導者アントニオ・グラムシ(1891~1937年)の「ヘゲモニー論」やパルミーロ・トリアッティ(1893~1964年)の「構造改革論」の影響を強く受けたものだ。

 その底流にはマルクスが主張した最も根源的な疎外の克服=宗教と家庭の廃止=という原点に回帰すべきであるというルカーチ・ジュルジュ(ハンガリー1885~1971)の考えがある。

 

 グラムシは労働者階級の主要な任務を自らのブルジョア的・教会的文化からの解放と位置付け、それを「市民社会」で体現すれば、「国家の消滅」というマルクス主義の目標が達成できるとした。その方法をトリアッティが提示した。「民主憲法」の憲法解釈を重視し、議会を通じて社会主義実現にとって有利な状況を作り上げるとし、州自治制の導入を唱えたのである(「社会主義へのイタリアの道」1956年12月第8回共産党大会に向けての草稿)。

 

 

 要するに松下圭一理論は伊共産党路線を日本に持ち込もうというシロモノである。その松下氏を師と仰ぐ菅直人内閣は、鳥取県知事時代に悪名高い人権擁護条例を作ったことで知られる片山善博氏を民間人から総務相に登用した。

 

 総務省は総務庁、郵政省、自治省を統合して創設された巨大省庁で、国家の基本的システムを所管し、民主政治の基盤や地域自治、地域社会の形成に深く関わる。そこを松下流の市民自治(すなわち社会主義への道)の推進機関に変貌させようとしたのだ。

 

 その手始めとして片山総務相が真っ先に挙げたのが住民投票法制度の導入である。すべての地方自治体に人口に応じた一定の有権者の署名によって住民投票の実施を自治体に義務付け、それに法的拘束力を持たせようというのである。

 こんな法律に大喜びするのは、反米・反自衛隊運動家や辺野古反対闘争屋、反原発主義者たちだろう。左派メディアが住民を煽ってその気にさせれば、いつでも国の政策をひっくり返せる。まさに国家を死滅に追いやる「市民自治」というわけである。

 

 だが、現行憲法制度では地方自治は首長と議会の二元代表制が採られ、住民投票で施策を決する仕組みはない。だから憲法の「地方自治の本旨」を踏みにじると批判され、民主党政権下でも成立しなかった。

 それを自治体レベルで目論んでいるのが、武蔵野市の「常設型プラス外国人」の住民投票条例案なのである。

 

 

 すなわち、「市政の重要事項」について投票資格者の4分の1以上の署名があれば、投票の実施が可能で、留学生や技能実習生といった在留資格を持つ外国人も対象になる。投票テーマの除外規定として「市の権限に属さない事項」を挙げているが、「ただし、住民全体の意思として表示しようとする場合は、この限りでない」としている。

 

 これでは国の専権事項の安保もエネルギーも何でも「住民全体の意思」を表示しようと投票できる

 

 おまけに市長と議会に「住民投票の結果を尊重する」と事実上の拘束力を持たせているのである。

 

事実上の外国人参政権、中共の標的になりえる

 

 「政策形成過程に参加する」ことを参政権というが、憲法は参政権を日本国民固有の権利と明記しており、外国人に参政権は付与していない。それにも関わらず武蔵野市は外国人参政権の道を開こうとしている

これに対し、自民党の佐藤正久参議院議員も懸念を示した。中共の工作は海外でも事例があるので油断してはならない。

 

 菅直人氏はかつて北朝鮮による日本人拉致実行犯の辛光洙(韓国で死刑確定)の釈放嘆願の署名を行って北朝鮮への逃亡を手助けしたり、拉致犯親族の関わる政治団体に6250万円の巨額の政治献金をしたりした。その踏襲の疑念がある

 

 武蔵野市住民投票条例案は断じて認められない。 

 

 

思想新聞【オピニオン・主張】国権脅かす住民投票条例は容認できぬ  12月15日号より(掲載のニュースは本紙にて)

12月15日号 追い詰められたのは共産党 マルクス思想で惨敗正当化 / 国際勝共連合遊説隊 渋谷暴動事件から50年、共産主義一掃を! /【主張】国権脅かす住民投票条例は容認できぬ

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