自由の抑圧こそ「社会主義」の本質

「思想新聞」2月1日号から【特別寄稿】の記事を紹介します。

 日本共産党では「自由な社会主義」を主張している。党員数減少と党員の高齢化に歯止めがかからず、「社会主義・共産主義」に対する魅力低下と党員の動揺があるのが背景だ。民青同盟員は1970年の20分の1にまで減少した(季刊「フラタニティ」23年12月号)。

 若い民青同盟員や党員は、「旧ソ連・中国には自由がなく、社会主義日本でも自由がなくなるのでは」との不安や恐れを持っているのだ。背景に、現在の日本には共産党も認めるように、自由・民主主義・人権が制度的に保障されており、若い民青同盟員や党員を含む若者はこれらの自由を十分に享受しているからである。言論の自由がない旧ソ連や中国で公然とスターリンや習近平国家主席を批判すれば警察に逮捕されるが、言論の自由がある日本で岸田首相を批判しても警察に逮捕されはしない。多くの日本国民が、共産党が目指す「社会主義・共産主義」の日本が旧ソ連や中国のように、自由のない社会になることを恐れ不安に思うのは当然と言えよう。共産党は、党員を含むこの国民の不安や動揺を抑えるのに懸命なのだ。

「意見の多様性」を尊重しない共産党

 さらに、20年以上にも及ぶ党首在任に対し「党首公選制」を主張した著名党員を、共産党は党規約3条の民主集中制に基づく「党規律違反」を理由に問答無用で除名した件も左翼マスコミはじめ国民には衝撃だった。だがこの問題は、「党規律違反」以前に、そもそも民主主義の基本である「意見の多様性」や「少数意見」を十分に認め尊重する政党かどうかが厳しく問われた。これらを認めず尊重しない政党が政権をとれば、「独裁」を否定できないからだ。

 共産党は、旧ソ連や中国に自由がないのは、革命当時これらの国には実質的な民主主義がなかったからと弁明する。

 ところが、革命当時にはそのような側面があったとしても、それだけでは革命後長年月を経過しても自由がない理由を説明できない。共産党が主張する「人間の自由」こそが社会主義・共産主義の特質であるというならば、革命後長年月が経過すれば、当然「人間の自由」も充実し拡大するはずだ。しかし、これらの国ではそうはならなかった。それどころか、中国では、共産党によるチベット、ウイグル、香港を含め、人権侵害や自由の抑圧、監視体制が厳しくなるばかりである。

 だとすれば、これらの国がいずれも「科学的社会主義(マルクス・レーニン主義)」に立脚したことこそ、自由を認めない最大の理由、と考えるのが合理的である。なぜなら周知のとおり、「科学的社会主義」の核心は「暴力革命」(敵の出方論:不破哲三著「人民的議会主義」244頁、新日本出版社)と「プロレタリアート独裁」(社会主義を目指す権力:党綱領五、不破前掲書241頁)であり、プロレタリアート独裁とは資本主義と共産主義の過渡期の権力であり、資本家などの反革命分子の反抗を法律に基づかず暴力で抑圧する労働者階級の革命的権力であって、暴力と独裁のあるところに自由も民主主義も存在しないのは当然とされるからである(マルクス「ゴーダ綱領批判」世界思想教養全集11巻139頁。レーニン「国家と革命」全集25巻499頁。同「プロレタリア革命と背教者カウツキー」全集28巻249頁、大月書店)。

新疆ウイグル自治区の強制収容所

「自由な社会主義」は論理矛盾

 かつてソ連崩壊などの影響で、イタリア共産党やフランス共産党は、科学的社会主義(マルクス・レーニン主義)の核心である暴力革命・プロレタリアート独裁・民主集中制を放棄し、社会民主主義政党に脱皮し、イタリア共産党は左翼民主党となり1996年中道左派政権に参加し、フランス共産党は97年社会党政権に参加したが、日本共産党は今も党規約2条で「科学的社会主義」を党の理論的基礎とし今も堅持する。

 すなわち、共産党は科学的社会主義の核心である「暴力革命」(敵の出方論)と「プロレタリアート独裁」(社会主義を目指す権力)を放棄していないのだ。このように、今も科学的社会主義に立脚し、これを放棄しない日本共産党が「自由な社会主義」を主張しても論理矛盾である。理論的にも歴史的にも国民の自由を抑圧するのが「社会主義」であるのは明らかだ。
(外交評論家・加藤成一)

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