中国の支配する南モンゴル(内モンゴル自治区)において、モンゴル人にとり母語であるモンゴル語が学校教育で国語を始め中国語に取って代えられている。中国共産党政権下でのそうした状況から同じモンゴル民族である北のモンゴル国でも重大な懸念を打ち出し国際社会に働きかけている。そうした中で11月19日午後、東京・永田町の衆議院第一会館で「モンゴル母語保護運動国際会議」が関係者や報道機関などを集め開催された。
前日の18日には、国会議員関係ではウイグル議連の再発足が発表されたばかり。米国を中心に自由と民主主義を求め、思想信条の自由を守るチベット・ウイグル民族の自由を求める運動を支援する動きが高まっているが、その一環で民族固有の文化が抑圧され「子供たちの母語教育」が奪われつつある状況を変えたいと関係者が立ち上がった(主催=在日モンゴル人母語を守る実行委員会)。
同会議では特に、モンゴル国からウェブ会議システムで参加した日本とも関わりが深いエルベグドルジ前大統領は「モンゴル語とモンゴル文字はモンゴル人の作った財産。他国や他民族から一方的に禁止されることはあってはならない。モンゴル語教育を禁止することはそこに暮らす子供たちの人権の否定だ」と中国共産党の「民族浄化政策」に対して牽制した。
そして国会議員として運営に関わった上野宏史衆院議員が米ハーバード大留学時代に同級生だったエルベグドルジ氏が互いに紹介しつつ意見交換を行った。
また上野氏は「モンゴルの文化や言語が奪われることは許されない。中国への先入観ではなく、まず事実を把握すべき。モンゴル人と日本人は同じ蒙古斑を持つ民族で、他人事ではない」と協力を訴えた。
このほか、同会議には原田義昭、宮澤博行、長尾敬、杉田水脈の各議員らが出席し、それぞれ「中国政府のモンゴル語教育の禁止に対する危惧」についての思いを述べた。
モンゴル出身関係者として、ジャルガル氏は「内モンゴルとモンゴル国のこれまでの概略」として、モンゴル民族がモンゴル国と中国の「内モンゴル自治区」と二つに分かれている歴史的経緯について、チンギスハンの時代から遡ってプレゼンを行った。
さらに、政治学者のボヤント氏は、「中国教育部は内モンゴル自治区における普通話(中国語)普及プロジェクトに5・52億人民元(約87億円)を歳出した」と指摘した。日本への要望として、南モンゴル(内モンゴル自治区)地域へのODA(政府開発援助)の実態を調査すべきと訴えた。
解説として評論家の三浦小太郎氏が「南モンゴルを《内モンゴル》と呼ばないで欲しい。それは中国共産党から見て内か外かという言い方だからだ。モンゴルは南と北で同じ民族だから、少なくとも南モンゴルと言うべきだ。また、チベット・ウイグル・モンゴルの問題、そして台湾や香港もそうなのだが、この問題を単に人権問題でもなく、言語の弾圧だけの問題でもない。植民地支配の問題なのだ。本来独立していたはずの民族が植民地にされ、言葉や言語を奪われ、時には命さえ奪われる。こうした問題の根本的な解決は、中国共産党による植民地支配が打破される以外にない」と強調した。
思想新聞【連載・活動面】 モンゴル母語保護運動国際会議 中共の文化破壊策を許すな 12月1日号より(掲載のニュースは本紙にて)
12月1日号 TPP参加意欲を表明した習氏 日米を牽制、主導権狙う中国 / モンゴル母語保護運動国際会議 中共の文化破壊策を許すな /【主張】核・原子力で平和と未来を切り開け