内外の危機超克へ国民は覚醒せよ

 2024年は元日から凄まじい衝撃が列島に走った。能登半島地震と羽田航空機事故である。辰年は荒れる年であろうか。外にあっては世界の行方を左右する米大統領選があり、内にあっては政治漂流が続く。危機到来の予兆を新年早々に感じ取った人は多かろう。危機にどう備えるか。戦後日本が放置してきた「有事」への対応が今ほど問われるときもない。日本列島が「大津波」に飲み込まれる前に我々は備えねばならない。

雨が降る以前に箱舟を作るべし

 ノアは「雨の降る前」に箱舟を造った─。こう述べて「内憂外患」に疎い政治の動きを嘆じたジャーナリストが何年か前におられた。産経新聞の佐々木類・論説副委員長だったと記憶する。2024年の年初めにこの言葉を想起したのは、内外から「大波」が押し寄せてくると予感させるからだ。

 旧約聖書によれば、ノアは神から大洪水が来ることを知らされ、120年間あらゆる罵倒と嘲笑を受けながら、神の言葉を信じて箱舟を作り上げた。雨が降り大洪水となったが、ノアの家族は箱舟に乗って生き残ったという逸話である。

 すなわちノアは神からの啓示を信じ、それを実践した。信じて実践する。それこそが生存の条件であった。雨が降ってきてから箱舟を作り始めていれば、手遅れである。「雨の降る前」に備えているか、佐々木氏は箱舟を譬えにわが国の無防備に警鐘を鳴らしていた。

 危機すなわち有事に備えよとの「天啓」は万物が創造されたときから発せられている。危機とは生命が脅かされ、そのものの存立・基盤が危うくされる恐れの感じられる、絶体絶命のことを言う。生命あるものは時に危機に瀕する。それで危機管理能力を身に付けている。ウサギが長い耳で自分を襲う動物が近づいてこないかを調べ、危機を察知すれば直ちに逃げるといった具合に、である。創造主は危機が到来することをあらかじめ想定されているのである。

 それゆえに我々人間の身体にも危機管理システムが備わっている。異物が鼻や口から入れば、クシャミや咳で出そうとし、細菌が侵入すればリンパ球が出動して細菌を粉砕し、血管に侵入すれば白血球が肉弾戦さながらに食らい付いて撃滅する。

 生物学者の利根川進氏は高等生物に備わっている免疫反応の謎を解明しノーベル生理学・医学賞を受賞した。抗体を作り出すBリンパ球が成熟する過程で遺伝子を次々と組み替えて100万種類を超えるBリンパ球を創り出し、体を守っているという。何という創造主の叡智であろうか。現行憲法は前文で「人類普遍の原理」をうたうが、この防御システムこそ人類普遍の原理であろう。

 「正当防衛」もこれに該当する。正当防衛とは「急迫不正の侵害に対して、自己または他人の権利を防衛するためやむを得ずする加害行為」(広辞苑)で、自己のみならず他人の防衛も含む。刑法には強盗に殺されそうになった隣人を助ける「他者のための正当防衛」という概念があるが、それが人としての道理すなわち人類普遍の原理だ。

 それで国連憲章は国家の正当防衛権(自衛権)を固有の権利と認め、その正文であるフランス語では固有を「集団的個別的正当防衛の自然権」と明記している。個別的自衛権を認めても集団的自衛権を認めないのは人類普遍の原理に反する。集団的自衛権行使を否定するのは人倫にもとる

 国家にとって危機管理とは「国家の直面する種々の危機、あるいは緊張状態を可能な限り、管理可能なレベルに制御するため、外交・経済・文化・政治・軍事すべての総合的諸活動の体系」を言う。種々の危機を想定し総力を挙げて回避・制御する。それが国民の生命を守ることを第一義とする国家の責任である。

 ひとつは大地震や津波、台風、豪雨などの天災、もうひとつは他国からの侵略、地下鉄サリン事件のようなテロ、恐慌・金融パニック、大規模事故など人災への対処である。

 第1は危機の予知・予測を早期に行う。第2は発生を可能な限り未然に防止し回避する。第3は被害を最小限にとどめる。第4は収拾後に再発生を防ぐ。この4点の構築が危機管理の要諦である。

 とすれば、わが国の欠陥が浮き彫りになる。第1に危機を予知する本格的な情報機関が存在しない。第2に危機を未然に防ぐ抑止力が足りない。第3に被害を食い止める防衛力も体制(緊急事態条項による諸準備)も欠落している。第4に再発生を防ぐ手立てを誰も考えていない。これでは人類普遍の原理に反し、人倫にもとる無能国家の烙印を避けられない

能登半島地震の被災地

憲法の改正こそ国を守る一里塚

 このことを自覚すれば、何をなすべきか、おのずと知れよう。確固たる情報機関を創設し、個別的自衛権のみならず集団的自衛権を有することを宣言し(解釈変更で可能だ)、抑止力向上へ日米のみならず自由主義国との同盟関係を固め、敵基地攻撃能力を保有し、核シェルターを全土に創設する(天災にも対応できる)。むろん人類普遍の原理に背く現行憲法の改正は危機超克の一里塚である。

 心ある国民はノアのごとき信念を持って激動の年に立ち向かおう。

【思想新聞月1月15日号】金正恩総書記 南北統一政策の方針転換を明言/真・日本共産党実録/新連載・文化共産主義の群像/朝鮮半島コンフィデンシャル

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