※本記事(思想新聞3月1日号)掲載時は、「習近平主席の来日延期なし」との政治状況でしたが、3月2日時点で「来日延期」が明らかになりました。情勢変化を踏まえてお読み頂ければ、「なぜ、私たちが一貫して国賓来日に反対しているのか」ご理解頂けると思います。
習近平主席の訪日延期へ 今週中に安倍首相が公表 (ニューズウイーク 3/2付)
中国の習近平国家主席の国賓来日は新型ウイルス問題で延期される―
一時はそんな予測が飛び交ったが、どうやら来日は予定通り行われそうだ。茂木敏充外相が2月17日の衆院予算委員会で、「(来日は)予定通り行いたい」と述べたのだ。
なお、「日本の尊厳と国益を護る会」(代表幹事:青山繁晴参院議員)はその3日前、首相官邸を訪れ、来日に反対する声明文を手渡している。その内容は、「(習氏に)予定通りに来られると、(新型ウイルスの)間違った収束宣言などにつながりかねず、日本政府や場合によっては天皇陛下が政治利用されることになりかねない」というものだ。至極全うな意見である。茂木氏の発言は、この意見を完全に無視したことを意味する。
安倍晋三首相は昨年12月、習氏の来日の意義を次のように語っている。
「日中両国はアジアや世界の平和、安定、繁栄に大きな責任を有している。習主席の国賓訪問を、その責任を果たす意志を明確に内外に示す機会としたい」
つまり安倍首相は来日の目的は、中国に国際社会の責任を自覚させ、その役割を果たさせるところにあるというのである。
しかし考えてもらいたい。
中国が一度の来日で相応の責任を自覚することなどありえない。仮に中国が米国との対立で追い詰められ、さらに新型ウイルス問題で大打撃を受け、日本に頼らざるを得ない状況にあったとしても、である。
振り返れば今から約30年前、中国は天安門事件(1989年)で世界から完全に孤立した。
武器を持たぬ若者らに対し、政府が武力弾圧を指示し、多数の死傷者を生んだ事件である。弾圧の様子が世界中で報道され、西側諸国の政府は次々と非難声明を発表した。そして対中首脳会議を中止し、経済援助を停止させ、世界銀行による融資の停止も決定した。中国に進出する海外企業も多くが撤退し、中国の共産党一党独裁体制は壊滅するかにも思われた。
中国の国際社会復帰への手助けした日本
この流れを変えたのは日本だった。
宇野宗佑首相(当時)が「中国の孤立はさせない」と主張し、他の西側諸国と距離を置いた。
海部俊樹首相(当時)が西側の現職政府首脳として事件後初めて訪中した。また、中国の要請を受け、宮沢内閣が「天皇皇后両陛下の中国御訪問」を閣議決定し、天皇皇后両陛下のご訪中が実現した。西側諸国は中国の巨大市場が日本に独占されるとおそれ、関係改善へと路線をシフトした。中国の国際社会への復帰は、ここから本格的に始まったのである。
その後の中国の発展は周知の通りだ。そしてその発展は、事件への反省の上に築かれたものではない。
また、国際協調路線をとったものでもない。
昨年、ポンペオ米国務長官が事件を批判した際には、ポンペオ氏を「バカな人間のゴミ山の戯言」(中国外務省報道官)と強烈に批判し、
「中国は発展した。政府の当時の行動(=軍事弾圧)は完全に正しかった」(同)と弾圧を正当化したのである。
再び過去の過ちを犯さぬように、改めて中国の本質の正しい認識を
中国の本質は何も変わっていない。
むしろ独裁政権を正当化するため、徹底した反日政策を国内外で展開し、尖閣諸島周辺には連日のように公船を送り込んでいる。
日本に対する恩義など全く感じられない。
やはり中国に正常化を期待するなど、土台無理な話なのだ。
中国は今、米国との対立の真只中にある。トランプ米政権は中国に抜本的改革を迫っているが、中国側が受け入れれば独裁政権が崩壊しかねない。だから中国は、米国の要求を受け入れることができない。
そしてその結果、米国の関税引き上げが継続し、中国の経済低迷が深刻化している。
新型ウイルス問題は、独裁政権にとってとどめの一撃となりかねない。
仮にこの中国を日本が助ける形になれば、日本は天安門事件以来の過ちを犯すことになるのではないか。
習氏の来日に際しては、日中平和友好条約などに続く「第5の政治文書」がまとめられる可能性があるという。そもそも資本主義の打倒を目指す共産主義国家と平和の約束などできるはずもないが、いずれにせよ中国は、この機会を最大限に利用するつもりである。
安易な政治文書で、共産主義を助長させるなどという愚は絶対に避けてもらいたい。
思想新聞【体制共産主義】習近平国賓来日に反対する 3月1日号より(掲載のニュースは本紙にて)
3月1日号 【中国】 独裁で感染拡大は防げない 責任回避に走る習近平政権 / 日本の建国を祝う会 建国2680年を寿ぐ日 / 主張「日本を滅ぼすスパイを放置するな」